ファッションテックが需要を生み出す訳ではない

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・ファッションテックが需要を生み出す訳ではない
・おまかせ定期便は採算が取れるサービスなのか?
・国境を越えたオムニチャネル!
・TOKYO BASEのライブコマースに思う事
・顧客のタッチポイントに沿ったコンテンツの作り込みが必要


ファッションテックが需要を生み出す訳ではない

「ZOZO超え」なるか “百貨店ファン”狙うストライプとソフトバンクの新ECサイト

ストライプインターナショナルとソフトバンクは2月15日、合弁会社「ストライプデパートメント」を設立し、EC(インターネット通販)サイト「STRIPE DEPARTMENT(ストライプデパートメント)」をスタートする。600ブランド6万点以上の商品をそろえ、「試着サービス」「パーソナルスタイリング」「AI(人工知能)チャットボットでの接客」の3つのサービスで新たな購買体験を提供するという。

ストライプインターナショナルとソフトバンクが合弁でECモールを設立。ECが課題のストライプが、まずは自前のECモールである「ストライプクラブ」のテコ入れなではなく、こういう形でのECの強化とは意外ではあります。インターネットは強者が総取りの世界なので、プラットフォーム側でなければ規模拡大が難しい。だからプラットフォーム側にいくという動きはわからなくはないのですが…。

◯F2層へのリーチは可能か?
まずはF2層(35〜49歳)がメインターゲットと謳っている点。ZOZOTOWNとはユーザーが被ってはいけない訳ですから、ここの差別化はうなづけます。しかしこの層ってEC利用の母数で言えばがくっと下がってきます。市場が無い訳ではないのですが、web上だとリーチしづらいのです。ストライプインターナショナルが保有するブランドでもF2層は一定数いるでしょうけど、ストライプデパートメントのコンセプトを見る限り「百貨店」を強く意識しているのでSC主体のストライプとはターゲットが異なります。自社ブランドも出品しておりませんし、自社でリーチしづらい層にどうやって認知を広げるかが疑問です。年齢層高いターゲットで成功しているECって元々はメディアを運営していたり、カタログ通販していたりと既に顧客にリーチできる手段があったところばかりですしね。

ここはdocomo×マガシークやau×マルイウェブチャンネルのように、キャリアのリーチを使う事が考えられます。まずはソフトバンクユーザーの取り込みから始まるかと思われますので、今後の認知拡大スピードがどの程度が注目したいところです。LINE公式アカウントを登録してみましたが2/18時点で友達登録が330程度。盛り上がっている感は今のところありません。

◯取り扱いブランドが被ってるけど…
ZOZOとの住み分けを強調していますが、ZOZOと取り扱いブランドが被っています。これは当然の事で、ZOZOがF1層に強いからと言って若いブランドばかりを取り扱っている訳ではありません。ZOZOは膨大なブランド数を既に取り扱っており、ここの完全な差別化は難しいでしょう。もちろんZOZOだけでなくAmazonやその他のモールでも売っているものも見受けられます。後発だから仕方ないですが、今のところ商品で差別化ができていません。であれば違う形で「ユーザーに買ってもらう理由」が必要になってきます。

◯ファッションテックはユーザーが買う理由になり得ない
冒頭の抜粋部分に記載がありますが、「試着サービス」「パーソナルスタイリング」「AI(人工知能)チャットボットでの接客」といったファッションテックを強調されています。もちろんこういった事によりサイト内の利便性やサービスレベルは向上しますが、これ自体が需要を生み出す事はありません。接客を受けるのも試着を希望するのも、サイトやブランドを認知して興味があるからです。需要を喚起するのはあくまで製品自体。欲しいと思う製品が無ければユーザーは買いにきません。

カルロ黒部のお洒落対談 vol.1 <前編>

上記のようなコンテンツマーケティングは商品の付加価値が上がり、買う理由につながりそうです。それでもやはり独自ブランドやここでしか買えない物が必要になってきます。元ビームスの浜中鮎子さんのブランド「Uhr」の取り扱いのようなケースですね。(そのあたりは後々出てくるのかもしれません。)

地方百貨店がどんどん縮小していき、今後取りこぼしていく需要をECで拾おうという考えだとは思いますが、そもそも百貨店アパレルの需要自体が縮小している状況です。出てくるキーワードも「EC」「ファッションテック」「F2層」「百貨店」で、そのどれもがストライプの得意とする分野ではないところもやや疑問です。これらの状況をひっくり返し、アパレルの国内需要を喚起していくか、これからの動向が非常に楽しみではありますね。


ここから先は

4,625字 / 4画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?