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プライマークが好調な理由を調査してみた!

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・プライマークが好調な理由を調査してみた!
・消化仕入れのままで「EC強化」は図れない
・ユナイテッドアローズ のグリーンレーベルはまだ成長するのか?
・AIによるコーディネート提案サービスは単体だとスケールしない
・マッシュHDが好調なので業績を追っかけてみた


プライマークが好調な理由を調査してみた!

英激安店「プライマーク」が快進撃 9月期決算は売上高1兆円超え

英国のアソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズ(ASSOCIATED BRITISH FOODS 以下、ABF)は、同社の低価格アパレル業態「プライマーク(PRIMARK)」の2018年9月期の売上高を発表した。同国の老舗百貨店ハウス・オブ・フレーザー(HOUSE OF FRASER)が破産し、中堅百貨店のデベンハムズ(DEBENHAMS)や大手小売りのマークス&スペンサー(MARKS & SPENCER)の店舗閉鎖が続く中、「プライマーク」は一人勝ちの様相だ。

グローバルSPAで快進撃を続けるプライマークの勢いが止まらない様子ですね。世界ランキングでもジリジリと順位を上げており、売上が1兆1000億円にまで到達。

2015年からの売上推移を見てみても常に二桁成長。世界ランキング5位のLブランズも射程圏内に入ってきたんではないでしょうか。プライマークは記事中にもあるように、「アソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズ」という企業傘下の衣料品ブランドですが、決算書にプライマークだけ切り取った情報が掲載されていましたので、ちょっと調査してみる事にしました。

○売上

上記の記事だとレートの関係もあって売上金額が一時下がっているようにも見えますが、前年対比で£400m伸びています。営業利益が£843mなんで、営業利益率は約11.3%程度。利益率は向上していますし、あんなに低価格なのにどうやってこの利益出してるのか生産背景が気になります。お店行ったら服がゴミのように床に散らばってる事もあり、店員さんがモップでかき集めてるのを見た事があります(笑)

○店舗数

アメリカに9店舗出店という報道がありましたが、それ以外はほとんどがヨーロッパ。ていうかオーストラリアとアメリカ以外全部ですね。そして売上の割りに店舗数がめっちゃ少ないんです。単純に1兆1000億円を360店舗で割ると1店舗あたり30億円。つまり月売り2億5000万円。ユニクロの都心の大型店舗並みの売上を平均で叩き出しています。これの理由が恐らく店舗数の横の数値なんではないかと。

別の資料から抜粋したのが上記ですが、これ店舗面積ですね。記事中にも「売り場面積の増加」が売上アップの原因と書かれていますが、やけに決算書にもこの文言が出てきます。ECをやらない同社ですから、売り場面積は売上の重要なKPIなんでしょう。確かにロンドン市街のプライマークはかなりの大型店ばかりだったように記憶しています。

○ECやってないけどソーシャルは力入れてる?

で、ECはやらないんだけどソーシャルはかなり力入れてるみたいですね。今年はソーシャル全体で300万フォロワーが増加したとの記載があります。ソーシャル運用の特徴なんですが、

なんかモデルがやけに太い。

おばあちゃんの動画や、

ヒジャブの女性。

ふくよかな女性と。。

年代・性別問わないイメージがとにかく強い。

顧客のリサーチをしっかり行い、インサイトを理解し、様々なバリエーションの女性を起用する…、的な事も記載がありますのでこれはその通りな運用方法。昨今、こういったリアルなイメージの発信を重視されているブランドもありますが、マスに訴求するブランドなら効果的な運用方法だと言えるでしょう。

インフルエンサーマーケティングも力を入れているようで、1000人のインフルエンサーのパートナーがいるようです。このあたりはどの国もやることは一緒ですね。

ざっくりと決算書見てみましたが、基本的には食品の会社なので小売事業についての解説はわずかではありました。出店がヨーロッパに偏っているにも関わらず1兆円を超える売上を叩き出すくらいなので、出店ペース次第では一気に売上を伸ばす可能性も孕んでいます。北米とは相性も良さそうなので、まずはそのエリアでの拡大に注目です。日本にもそのうち出店してくれると面白いですね!


消化仕入れのままで「EC強化」は図れない

三越伊勢丹がデジタルで描く未来図は? 「シェアリング事業は絶対外せない」

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は2019年3月期中期決算発表に合わせて、事業戦略を発表した。グループとして今後目指す姿を、“IT・店舗・人の力を活用した新時代のプラットフォーマーとしての百貨店”と定義し、引き続きデジタル分野を強化。ポイントは、社内に大規模な撮影スタジオを設けてのEC拡大、アプリを活用したオンラインとオフラインでの境のない接客の実施、収集した顧客のデジタルデータを基盤にした7つの新事業という3点だ。

社長の交代劇から施策が大幅に変わった三越伊勢丹ですが、販管費圧縮により決算がやや上向きの様子。さらに新しい事業戦略として、

・EC強化
・アプリを活用した接客
・顧客データを起用した新事業(パーソナルスタイリング、統合コスメ、定期宅配、カスタムオーダー、eギフト、オンラインSPA、シェアリング)

を掲げています。ツッコミどころはたくさんあるのですが、一番気になった「EC強化」についてピックアップしたいと思います。

○消化仕入れのままECを強化?
これ、何度も言ってますが改めて。百貨店は基本的にはブランド側との契約は消化仕入れという形態です。つまり売れた分だけを百貨店側が仕入れるという在庫リスクを取らない方式ですね。しかも販売員もブランド側の社員。つまりこの発表は、

「在庫リスクは取らないけど、EC強化するからその分の商品もちゃんとブランド側が担保してね」

ていう事です。これがまだZOZOやAmazonのように、自社がリーチできない顧客を持っていたり、売上がすぐ上がったり、代わりに集客してくれたりって内容なんであればそれもまだわかります。しかし、いつも言っておりますように国内の百貨店のECは商品はスカスカだしコンテンツも不十分。サイトに回遊しているのはほとんどが店頭情報を入手する目的のユーザーばかりでしょう。

○どのタイミングで撮影するの?
そして、店頭にある在庫をどう全て掲載するんでしょうか。もし仮に店頭にある在庫を全て撮影するなら、百貨店に入荷したタイミングで全て撮影してそれを店頭に引き渡すという流れでしょうか。ブランドによって入荷のタイミングがかぶったりした場合、店頭に商品を引き渡すタイミングが大幅に遅れると店頭からクレームきそうなものですが。店頭に商品が渡ったら、撮影の為に商品引かせてくれとお願いするんでしょうか。それこそ店頭スタッフが黙っていないでしょう。

それ以外にも在庫連携や客注対応などなど、クリアしないといけない問題は山ほどあります。そもそもブランド側がECを強化するのって自前の販路を確立して、プラットフォーマーに対する交渉力を担保する事にあります。店頭ならまだしも、力の無い百貨店のECというプラットフォーム(と呼んでいいのか?)に出店する合理性が全く無いのです。まずは自前の在庫である自主編集売り場(それも委託商品多いんだろうけど…)から手をつけ、売上が伸びてきたらどんどん参加ブランドを増やすって方向性でいいのではないかと思うのですが…。


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