芸能人発のファッションブランドは売れているのか?


こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・芸能人発のファッションブランドは売れているのか?
・国内主要SCの売上比較
・メンズとレディースのショーを統合したブランドをまとめてみた
・三陽商会のECが伸びてるって聞いたので検証してみた
・Amazonファッションは今どれくらい売上げてるのか?


芸能人発のファッションブランドは売れいるのか?

ヨンアが手掛ける「コエル」がデビュー、本人来店の期間限定イベントが2都市で開催

モデル ヨンアがクリエイティブディレクターを務める新ブランド「コエル(COEL)」が、7月6日に立ち上がる。 コエルというブランド名は、ラテン語で「幸せ」を意味する「Coelum」に由来。トレンドを取り入れつつ、着心地やシルエットを重視した長く愛されるベーシックアイテムを提案する。

まだまだ増える芸能人ブランド。既に一定数のファンがいれば初速の売上は担保できますから始めたくなる気持ちもわからなくないです。当の本人がブランド運営のノウハウがあるかないかは消費者には関係が無いのですが、そこに憧れて「ファッションプロデューサーになりたい!」という学生さんなんが後を絶ちません。その際にいつも言うのですが、

「継続してブランドビジネスが出来ている人がどれくらいいると思う?」

という事。頻繁に言ってるものの、最近ブランドが増えすぎてよくわからなくなってきたのでちょっとまとめてみる事にしました。

※Instagram上のインフルエンサーを含めるときりがないので、ある程度知名度高いところに絞りました。(最近増えてきているAKB関連の方々のブランドも抜いてます。)

上記のヨンアさんのブランドはオンラインのみの展開で、今後各地でポップアップショップなどのイベントを開催していくようです。最近よくある形態ですね。常設店作るよりコスト安いですし、初速で顧客リストを一定数獲得できれば継続して売上を確保できるかもしれませんし。

ティザーサイトは結構ちゃんとした作りですね。コンセプトメイクはややざっくりで刺さりにくい印象です。

運営会社はアパレル企業ではないようです。得意とするところはデザイン関連でしょうか。過去の事例を見ていてもアパレルのノウハウが無いと継続してブランドビジネスやっていくのは厳しいんですが、、今後の経過を見守りましょう。

○水原希子さん「OK」

とにかく第一印象は「安くてポップ」。どこにでもあるようなキャップやパーカー、Tシャツに本人がデザインしたロゴの刺繍やプリントを施しただけのような気も…。まぁ安いからいいんでしょうけど。サイトはshopifyを使って超簡易に作られてますね。使われてる写真も画質が最低でめっちゃ見にくいんですが、ファンが多数いるとこのクオリティでも十分売れるんでしょうね。価格安いし。商品は売り切ればかりですが、ちゃんと更新されてるの?という印象も。。ちなみに検索すると「ダサい」といった声が多数。オンラインショップのみの展開であとはイベント開催のようです。特定商取引法やプライバシーポリシーなどの項目も無く、運営はご自身でほとんどされているのかと推測。まぁこの型数と金額なら在庫が残る事もそうそう無いでしょうし継続は可能なんでしょうけど、売上が微々たるものだと思いますので継続するモチベーションが保てるのか心配ではあります。

○ダレノガレ明美さん「CAROME(カロミー)」

こちらはワードプレスを使ってサイト構築しているようで、構築から運用まで水原さんと違って頑張ってる印象ありますね。写真も綺麗に撮ってますし、アイテムの展開数も増えています。まさかのメンズの展開までありますね。Instagramの画像を利用したギャラリーページもあり、ソーシャルへの導線もしっかり引いてます。運営会社は自身で設立した株式会社CARO。

コンセプトメイクの内容と言い、本気度が伝わってきます。個人的には好きなコンセプトなんで頑張ってほしいですね。常設店はまだ無いようです。

○鈴木えみさん「Lautashi(ラウタシー)」

上記2ブランドと比較すると相当お値段がお高いようで。この方のファンってそんな高いブランド買う人いるの?と勘ぐってしまいますが。。。

ABOUT

コンセプトは自身のモデルの経歴から来るものでストーリー性はありますがもっと強調すべきかと。

stockist

メインの得意先は伊勢丹とミッドウエストあたりでしょうか。2シーズン目なのでまだ卸先のアカウントはそこまで増えていません。

collection

コレクションルックに外国人モデルを起用するなど、自身がモデルをやる訳でも無くこちらも世界観構築の本気度が伝わってきます。(水原さんがやる気が無いとは言っておりません。)運営会社も自身が設立したようですし、アパレル企業がバックにつかなくてもブランド始める人が多くなってきた印象があります。

○佐々木希さん「intimite(アンティミテ)」

「そのまま外に出ていけるような部屋着」という発想のブランド。オンラインショップはGMOさんのmake shopで構築されています。オンラインショップのみの展開で卸先も今のところは無いようです。まだ2シーズンの展開なので型数が少ないですね。ちなみに佐々木希さんって以前もブランド運営してたんですが休止していますね。

佐々木希のファッションブランドが休止へ 芸能活動との両立が難しく…

芸能活動との両立が難しく…と書かれてますが、売れなかったのではないかと推測されています。

上記のブランドとは違う点はこちらは運営会社が自前ではありません。

インフルエンサー発ブランドを支える影の立役者を直撃

こちらの記事にも掲載されていますが、株式会社ANTHEMICKという企業が運営しているようです。創業者は元ストライプインターナショナル出身で、その当時のコネクションを利用してインフルエンサー系のブランドばかりを手がけているようです。

上記以外にもモデルの田中美保さんのブランド運営もやっているようですね。web業界のマークスタイラーみたいだ。。

○井川遥さん「ヘルト(Herato)」「ロワン(loin.)」

こちらはまさかのいきなり2ブランド展開。井川遥さんは旦那さんが「ato」のデザイナーですし、ブランド運営のノウハウなどの情報は旦那さんからも聞けそう。

2017AWに始まったばかりのブランドなのに、Instagramのフォロワーの増え方も他のブランドと違い既に17万フォロワー。。

井川遥さんがディレクションする2つのブランド、『Heraro(ヘルト)』と『loin.(ロワン)』。

【独占インタビュー】 女優 井川 遥 新ブランドに込めた想い

集英社のLEEやミモレなどのwebメディアでも掲載があり、メディアの露出が他のブランドと比になりません。VERYの表紙を飾り続けただけあってファッションアイコンとしての存在感が別格のようです。しかもファン層はロイヤルカスタマーも多いんではないかと。。鈴木えみさんと同様、値段が少しお高いのでまずはリアルでの売上中心になるかと思いますが。

リアルでの展開は三越伊勢丹系列のお店のみ。

コセンプトメイクはややざっくりしている印象ですが…。

運営会社はweb系ですね。インフルエンサー系のブランドってECから始めるパターンが多いから、web系の会社が運営するケースがちょこちょこ見られますね。(五反田電子商事さんとか…。※くみっきー、土屋アンナさんのブランド取り扱ってます。)

○マリエさん「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカル マリエ デマレ)」

アメリカのパーソンズ美術大学でデザインを勉強し、ブランド立ち上げまでに至るという芸能人では過去最高に本気度を見せたマリエさんの新ブランド。こちらは他のブランドと大きく違う点が、主要販路が地方セレクトという事です。ECでの販売も一部はありますが型数がかなり限られています。(ていうか服はTシャツしか買えない。。)できたら卸先店舗一覧あった方が…。どこで買えるのか謎すぎます。

マリエさんと言えば、以前ジャパンイマジネーションと組んでブランドやってたはず。

ジャパンイマジネーションの大人向け新ブランド「sophila(ソフィラ)」パルコと共同開発

もうキュレーターはやってないんでしょうけど7店舗展開とブランドは存続しているようです。

○山中美智子さん「ALEXIA STAM(アリシアスタン)

実はテラスハウスを見た事が無いのでそんなに知らない人なんですが、たまたまお仕事一緒になった方がこちらのブランドのPRをしていて知りました。スイムウェアのブランドですが、めちゃくちゃ売れるらしいです。運営会社は山中さん自身が運営する株式会社

EXJ。昨今のインフルエンサー事情に詳しいWE GOの丸本貴司さんによると、簡単に影響力つける為の一つの手段としてテラスハウスのような恋愛リアリティショーに出るのが一番良いそうで。そんな年代でも無い僕には知り得ない情報なんですが、確かに自分が教えている学生さんたちはよくこういった話をしている…。まだまだ情報収集の範囲が狭いと反省するばかりです。


ここまでは割と最近の事例をピックアップしてきましたが、こちら以外に大手アパレルがバックについて運営しているブランドもちらほらあります。

<マークスタイラー>
○今井華さん「FLOVE」

山中美智子さんと同様、テラスハウス出身の今井華さんのブランド。直営1店舗、セレクトショップが5店舗とそれほど拡大している様子はなさそう。大阪にいると存在自体忘れてしまいそうになります。公式サイト、オンラインショップを見ると流石に上記の芸能人ブランドと違い型数が多い。大手アパレルがバックにつくと運営に差がついてしまうんですかね。

マークスタイラー自体がモデルをプロデューサーに据えて、その影響力を利用して販売する急先鋒なのでこういった売り方は珍しくもないんですが、最近は低迷しているという噂も。セクシー系ブランドの凋落からイメージをモードに刷新しようとしているブランドもちらほらあるんですが、リブランディングが上手くいってる印象がありません。初速はモデルの力でも、ブランドが長く継続できるかは運営会社の手腕次第ですね。

○益若つばささん「EATME」

ブランド公式サイトが無く、マークスタイラーのECモール「ランウェイチャンネル」のみで情報を発信している模様。ショップは相変わらず東京の原宿に1店舗のみの展開で、売上は厳しいと噂ではよく聞くのですが真相がどうなのかは不明。路面店にしていると売上が漏れないから、売れるかどうかわからない初期段階は路面の方がブランディングはしやすいですね。百貨店やSCなら、周辺店舗から売上聞かれたりしてアパレル企業関係者には売上ばれたりしますから。

有名ブランドのヴィンテージバッグを利用する手法はアパレル業界ではよく使われておりますが、こちらも例に漏れずやっていたはず。元々セレクトっていう名目だからそれでもいいんでしょうけど。

<パル>
○YOUさん「PEELSLOWLY(ピールスローリー)」

僕が20代そこそこの時から若い世代にも圧倒的な人気があり、ファッションアイコンとして確立されていたYOUさんがディレクションするブランド。ブランド名はそれほど浸透しているイメージは無いのですが、

stockists

主要販路を見てみると、大手百貨店以外に自社のセレクトである「Drawing Numbers」(3店舗)「GALLARDA GALANTE」(33店舗)「Loungedress」(14店舗)での取り扱い。これだけで結構な流通量になりますね。オンラインでも自前のパルクローゼとの他に集英社のFLAG SHOPでも展開。それなのに問題なのは、

Instagramのフォロワーが2000人もいかない。。やる気あるんかい…。これってブランド認知全然無いのでは。

<ベイクルーズ >
○辺見えみりさん「Plage(プラージュ)」

辺見えみり「Plage」コンセプター退任を発表

2013年と実はかなり早い段階で芸能人ブランドとして運営されていたプラージュですが、ごく最近辺見えみりさんがコンセプターを退任。そもそもご本人を全面的にプッシュしてないような印象で芸能人ブランドという見え方もしていなかったような。

店舗もいつの間にか7店舗まで増えています。ウェブサイトもコンセプトもベイクルーズの他のブランドと比較するとやや手抜き感があるような気がしないでもないですが、店舗増やしているところを見ると好調なんではないかと推測します。

<ジュン>
○梨花さん「Maison de Reefur(メゾンドリーファー)」

ジュンに入社したがる学生さんの多くが「ここに行きたい!」というくらい女の子にとって憧れのブランド。テレビにも久しく出なくなった梨花さんですが、その方がご自身のブランディング的にも良かったような気がします。実店舗は2店舗と、かなり慎重で無闇に拡大しないあたりブランドビジネスの上手さを感じます。大阪にも出店の噂は絶えず出てくるのですが、ポップアップの展開のみにとどめていますね。オリジナルブランドの「LI HUÀ(リーファー)」やキッズラインの展開など、着実にブランドを拡張はしていますが、オリジナルの評判はいまいちな印象。とはいえ芸能人ブランドでは一番の成功事例と言えるのではないでしょうか。

思いつくあたりをピックアップしてきましたが、有名モデルのやっているブランドはまだまだ数多くあります。マークスタイラー系のブランドなんて大体そういう人が運営していますし。最近始まったブランドはどうなのかよくわかりませんが、長く続いているブランドってやはりバックにアパレル企業がついています。ブランドの運営って、単にファッションセンスが良かったり、売れる物を引っ張ってきたりするだけでは継続できません。アイテム構成比を決めて、店頭の展開計画を立てたり、その計画に沿ったプロモーション計画を組んだり、それ以前にどの生地使ってどれくらいのロットで製造するのか、、、などなど、一人でできない事だらけな上に専門的なノウハウも必要です。そういった人材を一から集めてくるより、既に揃っている企業と組むのが手っ取り早い事はみなさんもお分りの事だとは思います。近年始まった芸能人ブランドは自前でやっている方々もいらっしゃいますので、これがどのくらい継続するのかしばらく注目したいと思います。


国内主要SCの売上比較

売上高日本一のSC「成田空港」 数年後1500億円規模に

成田空港の商業施設の2018年3月期の売上高は、前期比14.8%増の1246億円に達した。アジアを中心とした訪日客の増加によって、国際線の外国人旅客数は同11.5%増の1594万人。追い風を生かすべく、ラグジュアリーブランドの免税店を拡充するなどの積極策を打ったことが奏功した。運営する成田国際空港(NAA)は中期目標として1500億円を掲げており、実現すれば百貨店の三越日本橋本店(18年3月期1553億円)とほぼ肩を並べる。

成田国際空港の売上が高いというのは以前からも知られていましたが、とうとう大手百貨店を超えそうな規模にまで成長しています。2015年にWWDで発表された資料では下記の通り。

1位 成田国際空港ビル        972億円
2位 ラゾーナ川崎          767億円
3位 御殿場プレミアムアウトレット  761億円
4位 ららぽーとTOKYO-BAY     724億円
5位 イオンレイクタウン      580億円
6位 阪急西宮ガーデンズ      542億円
7位 テラスモール湘南        526億円
8位 玉川高島屋SC           503億円
9位 モゾワンダーシティ       491億円
10位 ららぽーと横浜         481億円

各SCの店舗面積一覧はこちら。

成田国際空港は現在1246億円。2014年度の売上で972億円なのでそこから250億円以上伸びています。(店舗面積 19,800m2)ではその他の商業施設は直近でどの程度伸びているのか?

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