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百貨店の新たな可能性を感じさせる神戸大丸「M BASE」

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。



百貨店の新たな可能性を感じさせる神戸大丸「M BASE」


販売員の為のメディアである「Topseller.Style」の執筆メンバー勢揃いのイベントが神戸大丸で開催されるという事で行ってきました。

メインコンテンツはTopsellerの主宰である四元氏とファッションジャーナリストの南氏による対談…と思いきや、

このショップを企画した神戸大丸のサブマネージャーのショップへの思いと企画内容が素晴らしかったので、今回は神戸大丸集合売り場である「M BASE」についてご紹介したいと思います。


○売り場にちゃんとストーリーがある!

まずこの「M BASE」という名前の由来なんですが、Mr.M(ミスターエム)さんという架空の人物の「秘密基地」というコンセプトで展開されています。そしてこのMさん、40代独身で、輸入業を営んでいた祖父から倉庫を受け継ぎ、それを秘密基地にしたという細かい設定まであります。神戸という港町ならではの設定ですね。

確かに至るところに倉庫らしさが散りばめられています。併設されているカフェには本物の工具がディスプレイされていたりと、ここまでちゃんと内装を作り込んでいるのは百貨店では珍しいです。


ショップのロゴも、倉庫をイメージしたからこその形状です。台形は海外の倉庫街をイメージしたもので、書体は1920年代のドイツの工業社会を映し出した「ジオメトリック」という書体。こういった細かな設定も企画者の思いが込められていると言えます。


○ストーリーに合わせた品揃えや内装を展開している!

このストーリーがベースとなり、それが品揃えにも反映されています。倉庫で秘密基地を作ったMr.M氏はもちろん、そこに数々の友人を呼ぶようになり、その友人がおすすめするブランドが売り場に展開されているといったストーリーも。

・遊び人の友人がおすすめするのは…

神戸発祥のセレクトショップである「乱痴気」。神戸だからこそのセレクトですし、30〜40代の地元民には馴染み深いでしょう。地元のショップと連携するのは今までの百貨店にはあまり無かった要素ですが、ローカルだからこそできる施策なんではないでしょうか。


・真面目に物作りをする人のおすすめは…

機能性、デザイン性共に優れたブランド「ミノトール」が。


・輸入業を営んでいる友人のおすすめは…

ベタですがニューバランスが展開。


そして、それらの友人たちがどんどんと新しい物を見つけてきた物でポップアップを展開する…、という位置付けですね。

四元氏のクライアントであるKUBERA9981もその位置付けで展開されていました。レザーにネオンカラーを施すのは高い技術が必要なんですが、コーディネートのワンポイントに意外と使いやすのでおすすめな一品。

KUBERA9981について詳しくは上記をご覧ください。


ポップアップはファッションアイテムだけでなく、レコードや自転車などまで網羅されています。男性が好きそうなホビー関連を置く事で集客にもつながっています。兵庫県の放送局である「Kiss FM」と組んで、アーティストを呼んだイベントも開催したり。

こういったイベントですね。結構な有名アーティストも来ていたようです。


品揃えだけでなく、内装にも神戸ならではの物が使われていて、

フィティングルームの扉には、三菱銀行神戸支店(旧ファミリアホール)で使われていた扉を使用したり、


床には神戸港の船大工という「マルナカ工作所」で保管されていた足場を使用。などなど。こんな細かい部分にもその土地ならではの要素を盛り込んでいます。


○今までの百貨店には無かった要素が

消化仕入れという古くからある商習慣のせいか、百貨店はただのテナントになってしまっていた印象が強くあります。在庫リスクが無く、ただただ有名なブランドのハコが立ち並ぶ施設…、というのが我々世代から見た過去の百貨店の姿でした。

「M BASE」はそんな過去の百貨店の姿から脱却し、その土地だからこそ、そしてその百貨店だからこその付加価値を感じさせてくれます。何より、ギンザシックスを初めとした所謂「テナント屋」の手法に舵を切ったと思われたJフロントリテイリングから、このようなショップが出て来た事が個人的には衝撃的でした。「M BASE」は文字通りこれからの時代の「自主編集売り場」の姿であり、本来の百貨店の使命を果たすショップになり得るのではないでしょうか。



雑誌の動画コンテンツはEC売上に効果的か?

メンズ雑誌「ウオモ」がEC連動型オリジナルドラマ 滝藤賢一の着用アイテムを即購入

集英社が発行するメンズ雑誌「ウオモ(UOMO)」のウェブサイト「ウェブ ウオモ」は、ECと連動した連続ドラマ「メゾンタキトウ」の配信を開始した。俳優の滝藤賢一が主演を務め、滝藤が劇中で着用したアイテムを自社ECサイト「ミラベラ(mirabella)」などで販売する。着用アイテムは「ウェブ ウオモ」に掲載する特設ページで確認できる。

ECサイトやブランドが動画を活用して販促をするケースがどんどん増えていますね。最近では話題になったのが、

北欧、暮らしの道具店の「青葉家のテーブル」や、


ヘザーの縦型動画の「デートまで」という動画コンテンツ。

ヘザーに関しては新規流入が大量に増えたという実績が報じられており、一部では効果も実証済みのようです。ヘザーの方は、ユーザーの購買動機にも沿っていそうで、効果があるのもうなづけます。しかし、過去、動画コンテンツがいつも効果を実証してきたかと言えば、そんなこともなく。


○撤退した事例

撤退事例で一番代表的なのはやはりAmazonでしょうか。

Amazonのテレビショッピング番組は2016年に開始していますが、1年程度で撤退しています。リーチではAmazonに勝てるプラットフォームは無いでしょうけど、それでも撤退。余程、反響なかったんでしょうな。。

日本で動画活用に早い時点で参入していたのは、意外にも伊勢丹百貨店ですかね。

こちらはドラマ仕立ての通販番組。もちろんEC売上アップを狙ったものになりますが、継続はされていません。50話までやっていたようなので、こちらも約1年程度で終了しています。


○求められるのはコンテンツ力?

では一方で、一般的なドラマで効果があった事例を見てみましょう。わかりやすい事例は下記でしょうか。

視聴率が30%を超える時もあった人気ドラマである「逃げ恥」。恋ダンスと呼ばれる星野源さんの主題歌の振り付けをドラマの演者が踊る動画がソーシャル上でもたくさん拡散されていました。こういったメディア戦略が功を奏したこともあり、ドラマは非常に人気だった印象があります。そのせいか、上記記事のように星野源さん着用のコートが即完売。ノーリーズが人気が無いとは言いませんが、知名度が高いとも思えないブランドがすぐ完売するくらいの影響力があったということです。

この事例からもわかるように、コンテンツに注力した方がはっきりと売上につながっています。ドラマ自体のストーリーが面白い。キャラクターが魅力的。などなど。そういった要素があって初めて売上につながるようですね。


○UOMOのコンテンツは?

そういった視点で今回の短編ドラマを見てみました。5分程度の短編なのでストーリーにはまるという事はまずありません。キャラクターが魅力的かどうかもまだはっきりわからず、これで主演の方の着用している服が欲しくなるかはちょっと微妙な気がします。上記でもご紹介しました「青葉家のテーブル」は登場する人物のキャラもストーリーも面白く、続きがつい見たくなるような内容ですが、これはまだそういった要素を感じませんので、今後のストーリーの展開に期待…、という感じでしょうかね。

漫画でもゲームでも音楽でも、最近は何でもファッションと紐づけられていますが、全て共通する事はそれぞれが提供する「体験価値」が高いものが売れやすいという事です。動画コンテンツも同様、高い体験価値を提供できなければECの購買に至る事はないのでしょうね。



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