しまむらの決算書を見ながら「ユニクロvsしまむら」を10年振りにやってみた

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・しまむら決算書を見ながら「ユニクロvsしまむら」を10年振りにやってみる
・ファッション関連アカウントのYouTube活用事例を考察してみた
・ローリーズファームのリブランディングの方向性がよくわからない
・ブランドがソーシャル上で拡散される条件とは?
・ファーフェッチの現状を確認


しまむらの決算書を見ながら「ユニクロvsしまむら」を10年振りにやってみた

しまむら、2019年2月期 第2四半期 連結決算 天候不順などが影響し店頭売りが苦戦、減収・減益に

しまむらの2019年2月期第2四半期(3-8月)の連結決算は、天候不順などの影響で店頭売りが苦戦し、減収・減益に至った。主力の「しまむら」業態の苦戦が影響した。一方、海外事業は好調に推移した。こうした外的要因を鑑みて、第2四半期及び通期の業績見通しを下方修正している。

しまむらの上期決算が発表され、減収大幅減益という結果に。一方、いつも比較対象になるユニクロですが、

ファーストリテイリング 2018年8月期 第3四半期決算サマリー

直近の決算では計画を大幅に上回る増収・増益。なぜ2社にここまで差がついてしまったのでしょうか。

12年前に上記のような本が出版されて、これを読んだ当時はその情報量の多さに感嘆したものです。2社はビジネスモデルも大きく違い、そもそも比較する事がおかしいというご意見もありましたが。そして12年の歳月が流れ、2社にあまりにも差がついたので改めて

ユニクロvsしまむら

を個人的にやってみて、その違いを検証してみようと思います。


○両社のビジネスモデルは?
全く違う2社のビジネスモデル、、、と言われても多くの方はピンときません。ですので、超ざっくり2社を比較してみる事にします。

・しまむら
【小ロット多品種で売り切れ御免】
たくさんの型数を売り切りやすい数だけ仕入れて販売するという手法です。しまむらは「5000世帯/15000人の小商圏に1店舗出店」という戦略で店舗出してるので、同じ商品ばかり仕入れをおこすと商圏内でかぶってしまう恐れがあります。それを回避する為にこのような手法を取っているのです。あと一般的に言われているのは、売り切る=売り場のフェイスが変わるので、売り場の鮮度が保たれてお客さんの来店頻度が上がるという風にも言われております。(「売り場の鮮度高い=来店頻度向上」に関しては佐藤マサさんがはっきりと否定はされておりますが。。)

しかし、昨今ここがやや崩れつつあります。

限界点に達しつつある、しまむらのビジネスモデル

南さんのブログにもあるように、「裏地あったかパンツ」を100万本販売。つまりこれは1型あたりの商品を大量に生産して販売するというユニクロと同じやり方になります。

【自前の物流網と郊外店舗でのローコストオペレーション】
しまむらは物流網が自前です。そのおかげで商品の店間移動がめっちゃ安い。(「ユニクロvsしまむら」では1点あたりの輸送コストは59.2円と記載があります。めちゃくちゃ安い。。)地域性によって売れるアイテムって違ったりするので、消化率上げるには売れない商品を他店で販売する事も求められてくるのですが、そのコストが安すぎるので移動させてもしっかりと利益が確保できる体制を整えています。

また店舗の多くは郊外ロードサイドに出店しているので大型店でも費用を抑える事ができます。セルフ販売方式なので店舗スタッフの数もそれほど必要じゃありません。(あとパート率めっちゃ高い)こういった「ローコストオペレーション」を徹底する事で、少ない粗利(粗利率が大体30%ちょっと)でも営業利益を確保しています。

販管費率はこの上期27.3%。一般的なアパレルと比較するとめっちゃ低い。でもいい時のしまむらはこれが24%台だったので、ローコストオペレーションにかげりが見えてきています。出店増えてるのに売上上がってないんですから当然の数字なんですが。

・ユニクロ

GUはユニクロを超える!

【型数抑えて在庫を縦に積み上げる】
小島先生の記事によるとユニクロの標準店舗の型数は550アイテム。比較するとしまむらは4〜5万アイテムと言われているのでその差は歴然です。なので1型あたりの在庫量はめっちゃ多い。2000年にフリースを2000万枚売ったというお話はあまりにも有名ですが、ヒット商品となるとそれくらいの在庫を用意しないといけない。ベーシックアイテム中心なんで、トレンドアイテムと比較すると販売期間を長くとれるし市場規模も大きいので、ユニクロにしかできない手法でしょう。ロットが増えると1点あたりのコストも下げる事が可能ですから、低価格でも品質良い商品が作れるという訳です。

【単品管理と「チラシ」活用で消化スピードを調整】
そんなユニクロの消化を支えるのがチラシです。単品管理で、各週ごとの商品の消化スピードを管理し、スピードが予定より遅いアイテムに関してはチラシで消化スピードを促進する。チラシはほとんど毎週刷られており、年間60回ほど撒かれております。最近だとアプリでもチラシを確認する事ができるようになっていますね。


○店舗数は?
そんな相反するビジネスモデルの2社ですが、店舗数の推移はどうなんでしょうか。

・しまむら

しまむら単体での店舗数は現在1420店舗。単体ブランドとしては日本最大の店舗数を誇ります。しかしこの店舗拡大が裏目に出る可能性があります。先先代の社長の際に、しまむらは商圏と上限の店舗数を設定しており、それが1000店舗だと「ユニクロvsしまむら」にも記載があります。それをはるかに超える店舗数を現在出店中であり、今後は都心にも出店強化していく方向性。国内需要に対して店舗増やしすぎじゃないか?と心配になります。

・ユニクロ

対するユニクロは、全体の店舗数こそ伸びていますがそれは海外でのお話メイン。国内店舗数は縮小傾向にあります。スクラップ&ビルドを繰り返し、店舗も大型化しているところもあるんでしょうけど、これで国内売上伸ばしてるんだから恐れ入ります。EC強化をぶち上げてますので、店舗縮小は正しい方向性かと。海外の事例ではオムニチャネルを強化したメイシーズが大幅に店舗減らしてますし急なECへの舵取りは危険ですが、徐々に店舗減らしながらも全体の売上を上げていってるあたり、ちゃんと計算されている印象があります。


○EC売上は?

・しまむら

今年の7月にZOZOに出店したしまむらですが、決算書にはECの内訳は無し。まだまだ記載するほどの売上では無いんでしょう。関係者からは「売れているとは言えない」という話を聞いたりします。(完売した商品はそもそも600点しか仕入れてないとか)

で、しまむらってLINE@の会員がめっちゃ多いんですが、ここにECのURL投稿するだけで結構な送客が見込めます。何故自社ECやらないのか疑問すぎる…。みんなここ増やすのに苦労してるのに。。実店舗が多いってめっちゃ強みがありますね。しかしEC強化すると今度は増えすぎた店舗が足枷になってくるので、今のうちに不採算店舗はどんどん閉めていくべきかとは思います。(ていうか既存店の昨対ほとんどの月で割ってる)

・ユニクロ

ユニクロのEC売上高は15%増の487億円、EC化率は6.0%[2017年8月期]

しまむらに対して早い段階からEC強化の方向性に動いていたユニクロ。見事にEC売上高が右肩上がりです。国内店舗数縮小しても全体の数字が伸びるのがよくわかります。500億近い数字ですが、ECだけでこんなに売られると他のブランドはたまりませんね。ベーシックアイテムでサイズ展開も豊富。大体の方は1度は着た事ある服でしょうし、店舗数も多いからサイズ感の確認も容易。ECでめっちゃ販売しやすい条件が揃ってます。


○海外展開は?

・しまむら
海外展開が健闘と、確かに数字の伸びは確認できますが分母が大きくありません。売上も全体の1%強なので好調に推移しても業績への影響は微々たるものです。ここがまだまだ手付かずですね。国内需要ばかりをあてにしてきたツケが回ってきていて、それを補填するところが無いという状況に陥っています。

・ユニクロ
一方で、海外の店舗数・売上共に国内を上回っているユニクロ。中国への出店数半端ないですね。。世界の主要都市にR&Dセンターまで作って、各地での商品開発までやってる徹底ぶり。海外の有名デザイナーとのコラボでブランディング・認知度アップの施策もばっちりでしょう。

元エルメスと元ボッテガヴェネタ、現ロエベのデザイナーとコラボしてるってえげつない。。

GUは元ルイ・ヴィトンで現ディオールのデザイナーであるキムジョーンズ。。

それ以外にもユニクロは有名テニスプレイヤーや有名ファッションエディターともコラボしています。海外展開は圧倒的な差がついてしまってます。

そもそもブランディングに関しては、

滝沢直己氏や佐藤可士和氏が担当。「LifeWear」ってめっちゃ秀逸。。。

ブランディングや海外展開、そしてECにてここまで差がついてしまっている状況です。しまむらは昨年までPL上では業績好調と言われていましたが結構なツケが溜まっており、それがここに来て顕在化したという事でしょうか。それでもまだ営業利益は5%以上ありますし、アパレルの世界ランキングでは10位です。しばらくは苦しい状況が続くでしょうけど、また再浮上して、強いしまむらに戻ってほしいですね。


ファッション関連アカウントのYouTube活用事例を考察してみた

コンテンツマーケはGoogleからYoutubeへ? データが示す動画の可能性

ここ最近、コンテンツマーケティングの前提であった「Google」というプラットフォームから、徐々に「YouTube」というプラットフォームにシフトする企業が出始めるのではないかと思っています。本記事では、このYouTubeシフトについて考察してみます。

海外のファッション系ブランドサイトを計測していますと、ソーシャルからの流入でいつも上位に上がってくるのがYouTube。商品の素材感やシルエットを確認するには動画が最適なんではないかと思っていますが、制作に手間がかかってしまう上に、動画編集などやや専門的な技術を要する為、外注に投げれば費用もかさむし、内製化はハードルが高いしで手をつけれていないブランドが多いんではないかと推測します。

そんな中、動画活用を推進しようとしている小規模事業者もちらほら見かけ、安定的な流入元として確立しているブランドもあったりで、実はお手本にできそうなところも存在します。本日はそんな数少ないファッションアカウントのYouTube事例をいくつかピックアップしたいと思います。


○げんじ(ユーチューバー)

ファッション関連キーワードで検索したらダントツ多く表示されますね。さすがファッションユーチューバー。チャンネル登録も43万人を超えています。コーディネートやアイテム探してたりしたらぶち当たりますし、ファンも多く抱えているでしょうから「げんじ」と検索する人も多そう。LIDNM(リドム)という自前のブランドもこちらで販売促進しています。素材に関しては評判悪いようですが、YouTubeでの拡散は強力な武器になりそうです。

他のソーシャルでも影響力が大きいので、そっちが入り口でYouTubeに来る人も多いでしょう。WEARのフォロワーが約56万人ってすごいですね…。

げんじさん以外にもファッション系ユーチューバーは何人か見かけます。プチプラアイテムのおすすめとかコーデ系が多い印象ですね。


○B.R.CHANNEL Fashion College(ファッションメディア・EC)

B.R.onlineというファッションECサイトのYouTubeチャンネル。チャンネル登録は約8万人。ファッションディレクターの干場義雅さんがメインで運営されているサイトなので、ある程度のファンにはすぐリーチできるかとは思います。こちらもファッション着こなし指南系ですが、どちらかと言うと「モテ」をかなり意識されたような内容です。サイトの購買層は普段、YouTubeを利用するユーザーではないと思いますので、わざわざ見に来ている人が多いんではないでしょうか。


○Dコレクション(ファッションメディア・EC)

以前ご紹介した「Dコレクション」のYouTubeチャンネル。チャンネル登録は22000人。こちらも上記同様、ファッション着こなし指南系です。ファッション関連キーワードが多く使われてるので、サイト内で検索した際に引っかかる確率が非常に高い。YouTubeを入り口に集客しようとすると大体がこの方向性になりますね。


○ハンドメイド・カンパニーCo.,Ltd(アパレルメーカー・EC)

上記はお知り合いに教えてもらったのですが、他と全く違ったジャンルでしたのでピックアップしました。パターンの起こし方や簡単な縫製の技術を教えてくれる動画を発信し、自社サイトへ誘導するというやり方。チャンネル登録は6000人と決して多くないんですが、メーカーがこのジャンルでこれだけファンを獲得できているのがすごいです。


ファッション関連キーワードで検索してみますと、コンテンツの方向性は「ファッションショー」「コーディネート指南」「スキル・雑学」に分類されます。有名ブランドであれば動画作り込んで各プラットフォームで流しておけば、フルバージョンが見たくてYouTubeに見にくるというユーザー動向も期待できますが、ほとんどのブランドがそうはいきません。YouTubeをサイト流入の入り口にしたいなら、キーワード検索で引っかかってくれるか、他のソーシャルで拡散してYouTubeに連れてくるかになるのでしょう。

課題解決とかHow toの方が検索されやすい印象なので、ブランドの属性によっては向いてないケースもあります。またYouTubeのユーザー属性も関係しますから、自社ブランドのターゲットや顧客を見直してからでないと手をつけるのは危険そうですね。


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