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アパレル企業がトレンドに左右されず安定した業績を維持する方法

こちらのnoteではファッション業界の最新ニュースを1週間に5本程度解説し、その先に起こり得る事や豆知識を盛り込んでご提供いたします。
先週のピックアップニュースは下記の通りです。

・アパレル企業がトレンドに左右されず安定した業績を維持する方法
・ユニクロのデザイナーコラボを全部まとめてみた
・クラウドファンディング×アパレルの相性が良い理由
・エアクローゼットはレンタルサービスだけでは採算が取れない?
・アーバンリサーチがスタッフスタートを始めたので調査してみた


アパレル企業がトレンドに左右されず安定した業績を維持する方法

パルグループホールディングス、2019年2月期 第2四半期 店頭・ECが健闘、増収・増益に

パルグループホールディングスの2019年2月期第2四半期(3-8月)の連結決算は、店頭売りやECが健闘し、増収・増益を達成した。利益面は、ブランドの事業縮小や販管費の圧縮などで増益となった。Eコマース事業が順調に成長している。

アパレルで好調企業が少ない中、パルグループの上半期が増収増益。衣料品とECが好調との事で報道されていますがその中身を決算書を見ながら検証してみました。

○ECが爆増!
決算書にはEC販売が前年同期比137.5%と記載。めっちゃ伸びてますが、そうなると気になるが下記。

大手アパレルのEC売上におけるZOZO比率をまとめてみた

パルのZOZO依存度は半年前に調べた時は通期でZOZO比率65%。(勝手に名付けてますが、全体のEC売上に占めるZOZOの売上の割合です。)この上半期の依存度を調べてみましたが、

上半期EC全体売上が68億5400万円で、内訳が

ZOZO(46億5300万円:67.8%)
自社 (12億8000万円:18.6%)

って感じで微妙にZOZO比率が上がっております。ZOZOだけ見ると前年対比140.5%とまだまだ増加傾向。。余程、クーポンとセールを頑張ったんでしょうか…。ECだけの利益率が気になるところです。自社ECのPAL CLOSETも155.4%と相当な伸びを見せていますが、企業の規模考えるとまだまだ伸びしろがありそうです。

○主要ブランドは?
ブランド単体の業績が公開されているのは「カスタネ」「ルイス」「3coins」の3ブランド。ここ2年はこの3ブランドをピックアップして数字を公開しており、直近では右肩上がり。3coinsに関してはここ数年で劇的に店舗数も増えています。単価が安いからかEC販売をやっていませんので、店舗が増えても今のところ問題は無さそうです。

雑貨業態は「salut」の粗利が低下しているとの記載がありますが、それでも全体で営業利益7.6%。衣料品・雑貨含めた全体の推移も3年単位で見ると伸びています。粗利率、販管費率もここ数年は大きな変動もありません。全体の店舗数は3年で150店舗ほど増加しているのに安定していますね。


                           単位(百万円)

上記にここ数年の売上・利益の推移をまとめてみました。売上と粗利は伸び続けています。2015年の粗利率・営業利益率が高く、そこからやや減益したものの、そこからまた持ち直しつつあります。純利益が減少しているのがちょっと気になるところですが。


○パルマップが機能してる?

安定している理由はやはりこれでしょうか。

パルではトレンドを12年周期で設定しており、4象限上にまばらにブランドのポジションを設定しています。ファッション業界のトレンドは移ろいやすいので、今売れているブランドが数年後もヒットしているかは予測がつきにくい。それを担保すべく、パルではジャンルが様々なブランドを取り扱っています。チャオパニックやカスタネなどのカジュアルブランドもあれば、ガリャルダガランテやウィムガゼットのような中価格〜高価格帯ブランドまで網羅しています。3coinsは雑貨業態ですし、グループ会社には英インターナショナルというギャル系が得意な企業もあったりと、本当に多種多様です。

各ブランドの業績が細かく記載されている訳では無いので、ここが検証できないですが、ポジショニングが似たブランドばかりを展開するアダストリアが不振ですから、パルマップが機能してるのでは?と推測しています。

いや、ホントこんなマスな施策まで網羅しててすごいと思います。

ブランドがこれだけ多様だと中の人材も多様なんでしょう。ZOZO依存のみやや気になりますが、安定した業績をあげ続けている珍しい企業ではないでしょうか。


ユニクロのデザイナーコラボを全部まとめてみた

ユニクロの柳井社長が語るアレキサンダー・ワンとのコラボや後継者

2017年度の売上高が初めて2兆円を突破し、3兆円の売り上げを目指すファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長が、人気デザイナーのアレキサンダー・ワン(Alexander Wang)とのコラボレーションや、後継者の育成計画、アジアのアパレル企業人としての知見、テクノロジーの台頭とそれが人間の生活に及ぼす影響などについて米「WWD」に語った。

ユニクロのヒートテックがアレキサンダー・ワンとコラボという事でこの秋冬話題になっています。アレキサンダー・ワンはTシャツをメインとしたラインの「t by alexander wang」があるので、ヒートテックとのコラボは親和性が高いんではないかと思います。アレキサンダー・ワンとユニクロは以前にもコラボしていたんですが、その時はあんまり話題になっていなかったような。。グローバルSPAでコラボと言えば皆様H&Mの印象が強いんですが、最近になってユニクロもかなり注目を浴びてきたように思いますので、ここで過去のコラボを含めて振り返ってみたいと思います。


2006年 ユニクロの秋冬商品戦略スタート、デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト始動!

まずは2006年。この年、結構な数のデザイナーと一気にコラボ商品を出しています。上記プレスリリースより抜粋しますと、

<デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト商品群 販売概要>
■Felipe Oliveira Baptista (フェリープ・オリベイラ・バティスタ)
[ウィメンズ]
■10月6日~ Nicolas Andreas Taralis(ニコラス・アンドレアス・タラリス)
■11月10日~ Adam Jones(アダム・ジョーンズ)
■12月1日~ mintdesigns(ミントデザインズ)
[メンズ]
■9月15日~ シアタープロダクツ
■11月3日~ Scye(サイ)
■12月22日~ ILIAD(イリアド)

ミントデザインズやシアタープロダクツ、サイなど日本のブランドとの積極的なコラボが見てとれます。が、今のような圧倒的知名度のあるデザイナーはこの時まだ出てきません。


ユニクロ「デザイナーズ インビテーションプロジェクト」、気になる売れ行きは? - 東京

続いて2007年の記事。この時に発表されたブランドが下記になります。

「アリス・ロイ(Alice Roi)」、「3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)」、「サトルタナカ(SATORU TANAKA)」とのコラボレーション商品の販売が始まった。白、黒、グレーでミニマルなシルエットのアイテムを展開した「サトルタナカ」も好調だが、飛び抜けて人気なのは都内セレクトショップで人気の「スリーワン・フィリップ・リム」だ。

上記抜粋部分にもあるように、当時フィリップリムは超人気ブランドでしたので驚きのコラボ、、、のはずが市場に与えるインパクトはさほど無かったように記憶しています。


ユニクロ×デザイナーズ第3弾発表

「Alexander Wang(アレキサンダー・ワン)」、ブラジル発「Juliana Jabour(ジュリアナ・ジャボール)」、メンズではN.Y.デザイナー「Tim Hamilton(ティム・ハミルトン)」、N.Y.のクリエイティブ集団「ローデン・デイジャー」らが起用されている。

2008年、ユニクロとアレキサンダー・ワンが初めてコラボした時の記事になります。当時、ワンはちょうど人気に火がつき始めたところだったと記憶していますのでユニクロの目の付け所がいかに早かったかがわかりますね。しかし、フィリップリム同様、これもそこまで話題になっていなかったような。。やはりモード界で有名なデザイナーでも一般の知名度は知れてるんでしょうね。


ついにベールを脱いだ ユニクロ×ジルサンダーの新コレクション「+J」

2009年の記事ですが、皆様比較的記憶に新しいんではないかというジルサンダーとのコラボライン「+J」(プラスジェイ)。この時くらいから業界内でもコラボが話題になっていたように思います。当時僕が勤務していたのはラグジュアリー系ブランドを取り扱うアパレル商社だったのですが、周辺の営業マンから販売員まで多くの方が購入されていました。それでも一般的に「売れている」というレベルでは無かったんですが、コラボの認知度は高かったんではないでしょうか。


ユニクロ×アンダーカバー「UU」第1弾ヴィジュアルブック公開

2012年。これも忘れられがちなアンダーカバーとのコラボ。元々裏腹ブランドだったアンダーカバーはこの時期には既にパリコレに進出。過去、ユニクロがコラボしたドメスティックブランドとは一線を画する存在になっていましたが、それでもあまり話題になっていなかったような。。


ユニクロ× イネス・ド・ラ・フレサンジュの特別コラボが全世界で発売!

ユニクロとルメール(LEMAIRE)がコラボ 2015年秋冬発売

UNIQLO × J.W.Anderson 2017秋冬コラボコレクションが9/22から発売予定

ユニクロの新作コラボ!トーマス マイヤーと初のリゾートコレクションが超可愛い♡

モデルであり、デザイナーでもあるイネスとのコラボ。そして元エルメスのデザイナーであるルメールとのコラボに関しては現在「ユニクロU」という定番ラインにまで発展しています。JWアンダーソン(現ロエベ)やトーマスマイヤー(元ボッテガヴェネタ)のコラボはもう多くの方が現在店頭でお見かけしている事でしょう。このあたりからコラボの認知度もかなり上がってきたんではないかと。

上記、コラボをまとめてみましたが数えただけでも、

フェリープ・オリベイラ・バティスタ
ニコラス・アンドレアス・タラリス
アダム・ジョーンズ
ミントデザインズ
シアタープロダクツ
サイ 
イリアド
アリス・ロイ
3.1 フィリップ リム
サトルタナカ
アレキサンダー・ワン
ジュリアナ・ジャボール
ティム・ハミルトン
ローデン・デイジャー
ジルサンダー
アンダーカバー
イネス・ド・ラ・フレサンジュ
ルメール
J.W.アンダーソン
トーマスマイヤー

【追記】
ハンアンスン
ビューティフルピープル
ヘルムートラング
キミノリモリシタ
G.V.G.V.
バルコニー アンド ベッド

何と20名以上のデザイナーとコラボしています。これだけブランディングやプロモーションに力を入れてるんですから、ユニクロの今のポジションも頷けますね。今回のヒートテックのコラボ自体がどれほどのセールスになるかはわかりませんが、過去からの経緯を見てみますと中長期的にデザイナーとのコラボはユニクロのブランド価値をどんどん向上させているような印象を受けます。

※曖昧な記憶とweb検索で情報を拾いましたので、抜けがある場合はコメント頂けますと幸いです。

【追記】

2006年 株式会社HAN AHN SOON設立 その他、コラボ企画としてユニクロHANAHNSOONラインの展開、ハローキティーコラボ、釡山コレクションの招待デザイナーとして出展、ニューヨークの名門 F.I.T.(ファッション工科大学)大学美術館にての展示など、諸々のプロジェクトに参加する。この頃、海外セレブが着用し話題となる。

2006年にハンアンスンとコラボしていますね。しかし、全く情報ソースが出て来ず。。メディアでもあまり取り上げられなかったのでしょうか…。


上記は2007年の事例で、ビューティフルピープルとのコラボです。


2010年にキミノリモリシタとのコラボラインを発表。ミリタリーに特化したコレクションが販売されています。


旬のデザイナーとのコラボが話題の、ユニクロのデザイナーズ・インビテーション・プロジェクト。9月にはG.V.G.V.(ジーヴィージーヴィー)とバルコニー アンド ベッド(Balcony and Bed)が登場する。

2012年にはG.V.G.V.とバルコニー アンド ベッドとコラボ。この時期までドメスティックブランドとのコラボ多いですね。国内でのブランディングを目的としていたんでしょうか。


2014年春夏シーズンから、ユニクロのTシャツブランド『UT』初のクリエイティブディレクターに就任した、NIGO氏が手がける“グラフィックスウェット”をはじめ、ヘルムート・ラングのデザイナー、Alexandre Plokhov (アレクサンダー・プロコフ)がプロデュースした“URBAN SWEATS”(アーバン スウェット)など、これまでのスウェットイメージを覆す新商品も続々登場します。

2014年にヘルムートラングのデザイナーがプロデュースしたスウェットのラインが販売されています。


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