見出し画像

2018年の主要な訪日インバウンドデータをグラフにまとめてみた(後編)

結.JAPAN(ユウドットジャパン)の府川です。

前編と後編にわけて、2018年の訪日インバウンドデータを整理してご紹介しています。前編をまだ読んでいない方はこちらからご一読ください。

前編では、訪日インバウンド市場の全体感を把握できる4つのデータについて解説しましたが、後編の今回では、訪日インバウンド対策をするにあたって必要な5つのデータをご紹介します。

◆データその5:訪日外国人の国別割合

訪日インバウンド対策とひとことで言っても、国によって言語・趣向・習慣が大きく異なってしまいます。そのため、訪日インバウンドがどの国から来ているのかを把握は重要です。結論から言うと、訪日インバウンド全体の約75%を中国・韓国・台湾・香港の上位4ヶ国が占めています。

言語ごとに見ると、
・中国語(簡体字)を使用する、中国本土が27%
・韓国語を使用する、韓国が24%
・中国語(繁体字)を使用する、台湾/香港が22%
と大きく3言語が占めています。

訪日インバウンドと聞いて、まず欧米の方を連想される方も多いのではないでしょうか。ですが事実は違います。

中国,韓国,台湾,香港の上位4ヶ国以外に加えて、タイやベトナムなどの「その他のアジア」の方々を含めた全アジア諸国の訪日外国人数が86%を占めており、欧米圏はわずか14%の一部に過ぎません。

◆データその6:国ごとのリピート回数

次に各国からの訪日外国人が何回来訪したことがあるのか(=リピート回数)の割合を見ていきましょう。

訪日外国人数は”広さ”を表す一方で、リピート回数は"深さ"を表すデータです。リピート回数の高い旅行者ほど、旅行支出額が高く、ローカルな地域まで訪れる傾向があることが分かっており、"深さ"もインバウンドでは重要なデータとなります。

今回は、一定の"広さ"がある主要4ヶ国(中国・韓国・台湾・香港)において、深さを見える化してみました。主要4カ国だけでもかなりはっきりと数値の違いが出ており、それぞれの傾向がみえます。

"広さ"を持つ、中国・韓国。それに対して"深さ"を持つ、台湾・香港といった感じでしょうか。(韓国は、一定の"深さ"も持ち合わせていますが、今回はざっくり"広さ"を持つ国とさせていただきました。)

◆データその7:全人口に対する1年間の訪日経験割合

各国の全人口に対する1年間の訪日経験の割合を見ても、香港と台湾の"深さ"は際立ちます。それぞれ計算をすると、香港の全人口の29.9%、台湾の全人口の20.1%がこの1年間で日本に来ているという結果になります。

つまり、香港は、毎年3人に1人は日本旅行をする国なのです。このデータは、これまでの訪日経験ではなく、2018年1年間の訪日経験に関して算出したデータです。それにも関わらず3人に1人というのはとてつもない数字です。

◆データその8:国ごとのニーズ(地域ごと)

最後は、訪日外国人のニーズについてです。観光庁の「訪日外国人消費動向調査 」には、調査項目として「訪日前に期待していたこと」という質問項目があり、それらを読み解くことで各国のニーズの違いが見えてきます。

ニーズの違いは、国ごとよりも地域ごとのほうが顕著にあらわれています。そのため、まずは各地域から最も訪日外国人数の多い国をピックアップして見ていきます。

どの地域でも、共通に期待しているのは「日本食を食べること」ですね。細かいデータを見ると、寿司・ラーメン・肉料理(すき焼きなどでしょうか)がどの地域の訪日外国人にも満足度が高く好評のようです。

次は、各地域ごとに見ていきましょう。北アメリカとヨーロッパは非常に似た傾向となっています。特徴は、「歴史・伝統文化体験」と「日本の日常生活体験」への期待が高いことでしょうか。欧米諸国は日本と文化の隔たりが大きく、日常生活を覗き込んでみたいというニーズが強いのかもしれません。

オセアニアは、スキー・スノーボードへの期待が非常に大きいことが特徴的です。人気の理由は、日本とオーストラリアで時差がほとんどないこと、南半球のオーストラリアとは冬の到来が真逆(オーストラリアの冬は8月)であることなどが挙げられます。

最後に、訪日外国人の70%以上を占めているアジアを見ていきます。アジアのインバウンドのニーズにおいて注目したいのは、「日本の歴史・伝統文化体験」が唯一ランク外である点です。歴史や文化はアジアの人から求められていないということがわかります。

この事実は普段の業務から訪日外国人と触れ合う私の感覚とも一致します。アジアの方々は「文化」ではなく「インスタ映え」を求めている傾向が強いです。*中国本土ではインスタグラムを使うことは出来ませんが、他のアジア諸国と同様に写真映えを求める傾向はあります。

京都の伏見稲荷大社が良い例でしょう。

訪日外国人が殺到しているけれども求めているのは、文化ではなく、鳥居に囲まれた景観です。着物レンタルをするのも、文化体験ではなく写真映えするかわいい衣装だからです。

◆データその9:主要4ヶ国でのニーズの差異

文化を求めない傾向は、アジア全体ではなく中国本土だけなのではないか?と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。インバウンド主要4カ国を比較してみると、非常に似たような傾向となっています。

台湾でランクインしている「四季の体感」以外は、順位は違えど項目はすべて同じです。こうしてデータを俯瞰すると、インバウンドの70%を占める主要インバウンド4ヶ国からなにが求められているかは明らかです。やはり、「日本食」「景勝地(インスタ映え)」といったコンテンツなのです。

もちろん歴史や文化は大切な資産です。伝えたいのは、歴史や文化をメインとしない訪日旅行をされる方が大多数であるという事実です。

◆まとめ

【前編のまとめ】
・訪日外国人は年々増えており、2018年は3000万人を超えた
・戦略的に取り組めばインバウンドは間違いなく成長する。
・現状から、プラス5万円を消費してもらうことが必要。

【後編のまとめ】
・中国・韓国・台湾・香港が約75%を占める。
・中国・韓国は”広さ”の国、台湾・香港は"深さ"の国。
・インバウンド主要国からは、歴史や文化は求められていない。

◆ぜひこの記事を周りの方にシェアしてください!

前編でもお伝えしましたが、今回なぜnoteを書こうと思ったかというと、もっとインバウンドのことを深く理解する人が増えてほしいという思いがあったからです。

私は仕事では、結.JAPAN(ユウドットジャパン)というスタートアップにてインバウンド向けの戦略設計に取り組んでいます。

▼インバウンド向けの戦略設計サービス「インバウンドフォース」
https://you-japan.co.jp/ibf/

インバウンド担当者の方が、共通して抱えているのが、「そもそもインバウンド対策になにから取り組めばいいかわからない」という悩みでした。

そこで、このnoteを読んだあなたにお願いです。あなたの周りでインバウンドに関係するお仕事をされている方がいましたら、ぜひこの記事をシェアしてください!

前編はこちらです。前編と後編を合わせて読めば、インバウンドについて基礎的なデータが身につくと思います。

今回のまとめが、東京オリンピックを控えるこれからの訪日インバウンドのためになれば幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?