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3びきのこぶた

むかしむかし、あるところに、三匹の子ブタがいました——。

知らない人はいないんじゃないかってくらい有名なおとぎ話。

大人になったみなさんは、どんな話だったか覚えているだろうか? 子ブタの3兄弟が、それぞれの家を建てるというお話である。

長男はワラを使って、適当にじゃじゃーん♪と作った家。

次男は木を使って、建築関係トントントン♪で作った、そこそこ頑丈な家。

三男はレンガをせっせせっせと積み上げて作った、とっても頑丈な家。

長男・次男の家は、オオカミによりあっさり破壊されてしまう。三男の家にもオオカミが襲いかかるが、煙突から侵入したところを煮えたぎる湯に落として撃退するというお話。
※これはハッピーエンドだけど、絵本によっては、食べられてしまうというバッドエンドパターンもある

昔から読んでいたこの絵本。私としては、「いや、一番しっかりしとるのは長子やろ。だからこれは違う。とんでもないゴミ絵本」(とても失礼)と思っていた。

私が建てた家は?

3人姉弟の長子である私は、学生時代は一番優秀だった。

私は姫路でも3本の指に入る進学校、長男はそこそこの進学校に通っていた。次男に関しては、小学生の頃から成績が悪く、工業高校に通っていた。

当時の私は「学歴が全て!」と思い込んでいたので、一番いい高校に通う自分が姉弟で最優秀だと思っていた。大学も、新設の公立大学で倍率10倍のところを突破したので、そこでも自分はやっぱり優秀なんだと思い込んでいた。

「レンガの家、建てたった!」と。

だけど結局、大学は辞めた。

この辺りから、「もしかして、ウチが建てたのはワラの家なんじゃね?」という疑惑が芽生え始める。

そこから、私は転職を何度もして、最終的には現場系(ガソリンスタンドとか車のコーティングとか)の仕事をすることになる。それは車が好きでやっていた仕事だけど、学生時代に自分が思い描いていた将来とは程遠いものだった。

一人暮らしを維持するのに精一杯の状態で、「これは完全にワラの家だわ」と自覚するのにそう時間はかからなかった。

一方、弟たちは…

長男は国立大学に行き、そのあと専門学校を卒業してパティシエに。だけど、最終的には普通のサラリーマンになった。昔から出来の悪かった次男はというと、私立のFラン工業大学を卒業し、製造系のそこそこ良い会社に入社した。今や幹部候補らしい。

次男は昔から年上に好かれる子で、私ともよくウマが合う。特におべんちゃらを述べる訳でもないし、計算高い訳でもないのに周りから愛される。

そんな子だ。

彼は、大学時代から付き合っていた彼女と20代前半で結婚し、すぐに家を建てた。その後長男が誕生し、つい先日は長女も誕生した。彼らなりの苦労もあるけれど、いわゆる順風満帆な家庭だ。彼も嫁も本当にしっかりしていて、フラフラ生きてきた私とは大違い。

レンガの家を建てたのは、やっぱり末っ子だったのだ。

けれど、それをうらやむでも僻むでもなく、私は純粋に嬉しく思っている。

バッドエンド版の子ブタ(長男)は、オオカミにがぶがぶ食べられながら、次男、三男の無事を考えただろう。ハッピーエンド版の子ブタ(長男)は、優秀な三男を誇らしく思っただろう。

私だって、そう。いや、今だからそう思えるのかもしれない。

みんなハッピーならそれでいいじゃない

私たちはそれぞれ、ハッピーに暮らしている。

長男は長年支えてくれた彼女と結婚して、木の家は耐震補強工事をしたも同然。

私にいたっては、ワラの家のまわりに強靱な塀ができて、セ○ムしてます状態だ。仮にオオカミが入ってきたとしても、セ○ムの屈強な警備員(旦那)が助けてくれる。

『3びきのこぶた』のエピソードになぞらえて、自分を過信していたことが、今さらになってとても恥ずかしい。

誰かの幸せを願い、その誰かが幸せなら、自分も幸せになれる。

そんな幸せのかたちがあってもいいんじゃないかなぁ。




サポートしていただいたお金で、旦那さんにごちそうするのが夢です。