第1回まちだ文芸ナイト@TSUTAYA町田木曽店

TSUTAYA町田木曽店様のご協賛により、初めて本屋さん「公認」の読書会を開催することができました!!

これは、ブック・アクティビストとして大きな一歩になります。ご協力・ご参加してくださった皆さん、本当にありがとうございます!!

これからも、町田市でも読書会が文化になるように、色々と挑戦していきたいです。

★紹介された本&マイ帯

◆フジケイさんの紹介本→住野よる『よるのばけもの』双葉文庫

マイ帯【化け物って、本当はなんのことだ】

◇本音を言えない中学生が「ばけもの」に

昼に「ばけもの」扱いされている少女と、夜になると「ばけもの」に変わってしまう少年が、夜の学校で出会います。

本当は昼の学校で毎日顔を合わせているはずなのに、夜の少年(ばけもの)はまるで違う人物かのように少女と話し、「夜休み」という秘密の時間を過ごします。

しかし、昼間の教室では周囲に本音を明かせず、少女へのいじめを止めることもない。そんな少年の身に、次々と小さな「事件」が起きます。自分の帯は、葛藤する少年の心を表していて、作中にも登場する台詞です。

この物語の最後に、昼の少年はとある些細な、でも意味のある行動に出ます。その結果はとても「現実的」で、受け取り方は読み手によって分かれると思います。それでも、自分は彼の行動がめちゃくちゃ好きです。

複雑な結末ではありますが、本質的には非常に優しい物語です。文庫と単行本、それぞれ違うカバーイラストにも注目してください。

◆ヨシロさんの紹介本→原田マハ『風のマジム』講談社文庫

マイ帯【ラムレーズンの好きな方へ】

◇ラムって何から作るの?

これは、国産のラム酒作りに挑戦する人々の物語です。ラムレーズン入りのお菓子が好きな人は多いと思いますが、そもそも「ラム酒」とは何から作られるか知っていますか?

主人公の女性は、ラムの原料である「サトウキビ」の名産地、沖縄に目をつけます。サトウキビといえば沖縄なのに、ラム酒を作っているところが一つもない。

嘱託社員だった主人公は新事業を企画し、最終的には初の国産ラム酒の会社を沖縄に立ち上げます。夢のような話ですが実際にモデルとなった人物がいて、本の最後にはその紹介もあります。

主人公は周囲の反対や嫌がらせにも遭い、もちろん失敗もありますが、前向きな姿勢と、正社員にはない発想力で進んでいきます。

最初から最後まで一気に読めてしまうので、本当に原田さんは文章の上手い作家さんだなと思います。

◆ばくさんの紹介本→メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』(森下弓子:訳、創元推理文庫)

マイ帯【ツクラレタモノが怪物か それとも……】

◇読まないともったいないSFの古典

初刊行は1818年、つまり昨年がちょうど200周年だったという、怪物(人造人間)が登場するSF小説です。

<1>人は誰しも怪物になりうる

怪物は乱暴者のイメージがありますが、人間の書いた詩や小説に感動することができる。その知性ゆえに、自分の醜さや「友達がいない」という事実に苦しむことになります。人間らしくあろうと願うほどに、皮肉にも怪物へと近付いていきます。

怪物は、こんな見た目に作った研究者のビクターを恨みますが、ビクターは「新しい命」に興味があっただけで、後のことは全く考えていませんでした。

外見に絶望し、創造主以外の協力者を探そうとしなかった(破壊行動に走った)怪物と、それを放置していたビクター。両者とも「この道しかない」と信じこみ、思想的な怪物となってしまいました。

彼らが異常というよりは、人は誰しもそうなる可能性があるのだと思います。それは、どれだけ頭が良くても、共感能力があってもです。

<2>あらゆる娯楽作品の原点

これ以降、世界中の娯楽作品で「自分は何者なのか、何の為に生まれたのか」と悩むキャラクターが現れるようになります。

『ポケットモンスター』のミュウツー(人造ポケモン)などは、まさにそうですね。

<3>当時の時代背景

作中には、無謀な冒険の象徴として「北極点を目指す人物」が登場します。当時はまだ人類は北極点に到達しておらず、そういった時代背景も含めて読む面白さもあります。

◆めぐみさんの紹介本→南條範夫『からみ合い』(徳間文庫)

マイ帯【おそろし~~⤵️⤵️】

◇昭和を舞台に、骨肉の争い

一代で巨万の富を築いた、今で言う「楽天」の会長のような資産家が、がんで余命半年と告げられます。この小説は、その遺産を巡る相続争いのお話です。その額は、現在のお金に換算するとおよそ20億円。これを、彼自身は亡くなる前に分配したい。

資産家の結婚は2回、そのうち前妻との間に娘がひとり。更に、妾の子が3人いる「予定」ですが、計4人の行方がわからない。

そこで秘書や会計士に妾の子を探させるのですが、簡単にはいきません。なぜなら、その人たちが見つかれば遺族の分け前が減るわけで、特に本妻とすれば見つかってほしくない。でも、探している人にとっては、見つければ報償金がもらえるので、成功させたい。そんな骨肉の争いが描かれています。

特に、ある人物が遺産を奪うため、隠し持っていた「切り札」を出す瞬間が印象に残っています。このカードがあったか!と(笑)。

最終的には、誰かひとりの元に財産が全部行く!という展開になるのですが、それは読んでのお楽しみ。お金が絡むと人は変わってしまう、まさに「おそろし~~」です!

◆じゅんさんの紹介本→沢木耕太郎『深夜特急Ⅰ 香港・マカオ』(新潮文庫)

マイ帯【遅れてきた青春】

◇今も色褪せない、若者のバイブル

旅を描いたシリーズとして、根強い人気のある名作です。1990年代の本ですが、当時の若者のバイブルとして読まれただけでなく、今でも「旅にまつわる本」を検索すると上位にヒットするほどよく知られています。

まず、主人公はデリー(インド)からロンドン(イギリス)まで乗り合いバスだけで旅しようと思い立つのですが、スタートのデリーになかなか辿り着かない。そこまでにかなり時間を費やしています。

例えば、マカオに立ち寄れば賭博にハマってお金を使いまくり、香港では美味しい物を食べてばかりと、寄り道ばかり(笑)。でも、この序盤に面白さが集中しているようにも感じます。

西加奈子さんの『舞台』などもそうですが、旅の情景(アジアの安宿など)が浮かんでくる本が大好きなので、このシリーズは是非おすすめしたいです。

◆ふっかーの紹介本→柚木麻子『ランチのアッコちゃん』

マイ帯【ランチが人をつくる】

◇サプライズ連発の群像劇

表題作『ランチのアッコちゃん』は、冴えない派遣OLの三智子が、パワフルなキャリアウーマン上司「アッコちゃん」と、一週間のランチ交換をするところから始まります。

三智子はアッコちゃんにお弁当を作る代わりに、アッコちゃんから地図とお金を渡され、彼女行きつけのお店を食べ歩く、これがランチ交換です。そこで三智子は、今まで知らなかったお店、そして人との出会いを通じて元気を取り戻します。「ランチが人をつくる」お話です。

その後、会社が倒産した2人は一旦離ればなれになり、ある日再会します。アッコちゃんは「東京ポトフ」という移動販売のお店を立ち上げていました。三智子もキッチンカーを手伝いながら、次第に成長していきます。

また、最後の短編『ゆとりのビアガーデン』は、更に型破りです。

主人公が社長を務める会社の新人・怜美は、明るい性格だが仕事ができず、ありえないミスを連発。新卒で入った会社を1ヶ月で辞めてしまいます。社長は「これだからゆとり世代は…」と呆れ顔。

しかし一年後、その怜美が戻ってきます。というのも、会社のビルの屋上でビアガーデンをやると言うのです。彼女は型破りな宣伝を次々と仕掛け、次第に注目を浴び始めます。これには、冷ややかだった周囲の心も揺れ動き…。

怜美はドジですが、実は冷静に自己分析ができ、お客さんのニーズにも敏感です。その戦略は、必然なのか、天然なのか…。最後まで彼女を認めようとしない社長の動揺に注目です。

★まちだ文芸ナイト、今後の日程はまだ未定ですが、次回をお楽しみに!

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