なぜ下町でスタートアップをやるのか2

LayerXは11/5を持って東日本橋のオフィスに移転しました。


今回はこのオフィス移転を通じて垣間見えるLayerXのスタンスや考え方、文化について話せればと思います。

ちなみになぜタイトルが2なのかというと

こちらの記事に触発されたものであります。

ベンチャーオフィス事情

高い。なんて言っても高いです。僕がベンチャーを始めた2012年は、(全然知らなかったのですが)オフィスマーケットで行くとどん底だったみたいです。フリーレントは当たり前、坪単価は今の半額くらい、拡大して移転したい場合も次の場所を困らず探せるくらいの感覚でした。

直近のオフィス事情(特に渋谷、六本木)は当時の倍くらいの単価です。また当時と違い、借りる側に交渉力がないのでフリーレントもつかないですし、移転したくてもなかなか場所が見つかりません。(当社は調達をしているわけではありませんのでこの例には当てはまらないのですが、)ここ数年で充実した未上場の調達環境のうち、事業成長を期待されて投下された資本にも関わらず、少なくないお金がオフィス代に消えているのではという感覚があります。特に小さいサイズの時はコストに占めるオフィス代の比率は大きいのでバカになりません。

我々が東日本橋という地を選んだのは、会社の属性上、クライアントが近いということもありますが、第一に考えたのは、ベンチャーというものは、成長に対して集中的に効率的に資本を投下する企業体であり、逆にそれ以外のものは諦めるという姿勢が重要だと思っているからです。

LayerXにとって今、資本を投下する対象は、オフィスではなく、人であり、事業であると考えてますので、渋谷や六本木という場所は諦め、コストシビアに選んだ結果がこの地なのであります。

見栄よりも実態。コストシビアであり続ける

よくオフィスに高いコストを払っても投資するのは、「採用」のためだというロジックがあります。

これは本当でしょうか?

僕自身の経験としては派手できらびやかなオフィスで採用できたかというと正直そんな感覚はなく、「会社のビジョンが魅力的か」「やっている事業が魅力的か」「社員のキャリアにとって魅力的な機会が提供できているか」「適切なインセンティブはあるか」「きちんと採用の手数を打てているか」の方がはるかに採用に効く変数だという実感があります。

我々はオフィスの場所というよりは根本的な事業の魅力で採用をしていくつもりなので、場所は極端に不便じゃなければどこでもいいよねという結論になりました。(N=1の私の経験だと、オフィスの単価と採用の成功率に関しては相関性はありませんでした)

また、よく従業員にとってアクセスしやすい場所がオフィスであるべきだ。ベンチャーにとっては従業員の時間こそが最も希少な資源だという主張もあります。

これはまさにその通りでしょう。では渋谷六本木が上記を満たす唯一の解なのでしょうか?

そもそも東京都内はインフラが充実し、アクセスにかかる総合的な時間を考えると、渋谷六本木だろうが、東日本橋だろうが対して変わりません。それどころかクライアントへの移動時間は減りますので、そこを考えるとむしろ時間という資源は増えます。当社でも、通勤にかかる総時間などを計算して、実は大して変わんないじゃん、今よりも距離は遠くなっても時間的には近くなるじゃんみたいなことがわかりました。

感情的には、僕自身も2度目の起業ですし、見栄という点で考えると渋谷や六本木のがかっこいいなと思う気持ちもあります。しかし、上記を顧みると、「見栄」というわけのわからないものに倍近い坪単価を払うのは1企業の経営者としては許容できないです。

また上記の考えを社員に共有した時も、どういう反応があるかな、やっぱり渋谷や六本木がいいって言われるかな、どう説得しようかなと思ったのですが、「いいね、俺たちスタートアップだし、コストシビアであるべきだよね」「そっちの方がスタートアップ感あって燃えるね」「東大生を採用しやすくするために本郷とか行くのもいいよね」「浮いた家賃でR&Dのエンジニアをガンガンとろうよ」みたいな意見が出てきました。非常に気持ちいい文化です。

LayerXの会社の文化というのは、見栄よりも実態、自分たちのビジョンを効率的に達成するために全ての意思決定があり、それ以外のものは切り捨てられる、そういった雰囲気を心底楽しめるメンバーが集まっています。

僕自身、会社の文化はそうありたいなと思っていたので、この時点で「下町でスタートアップ」するという決意は固まりました。と同時に、オフィス以外の全てのことに対して、コストシビアにあらゆる決定をしようという改めて基本的なLayerXの文化が強化されました。

ただしコストシビアというのはケチという話ではなく、ROIを考えて効率的に行動することです。優秀なエンジニア・優秀な人材は価値が高いのでしっかりお給料を出しインセンティブもだす。事業に関しても中途半端に投資するのではなく、本丸を作るようなものにがっつり投資する。その代わりそういった成長のコア以外のものに対しては非常にコストシビアになる、ROIにシビアになるということです。

「時間」リスクをとる

ここはari_kouさんの記事の引用です。

 唐突ではあるが、スタートアップ企業(に限った話ではないかもしれないが、自分の見えている景色がスタートアップ中心なので)には、それぞれに適正な「速度」というものがあるように思う。既存産業のしくみに新しい技術やメソッドを付け加えたり、ニッチな領域に特化して一点突破を試みる、といった「ハック型」のスタートアップには、素早さが求められる。現在東京におけるスタートアップシーンでは、この「ハック型」スタートアップがかなりの比率を占めているように感じる。ある産業における特定の領域に対する閃きや創意工夫次第で、スピーディに市場を開拓できるという点で、起業に対するハードルが低いことに起因しているのかもしれない。一方、大きな既存産業のあり方そのものを変革させようと試みたり、そもそも新しい産業を生み出そうとするような場合には、素早さよりも粘り強さが求められることが多い。その産業/市場についてマクロ・ミクロ両方の視点で深く理解し、じっくりと時間をかけて産業のしくみに影響を与えていくのである。ちなみに「◯◯型」と対にして呼びたかったが、思いつかなかったので諦めました。ごめんなさい。

(「なぜ下町でスタートアップをやるのか」より)

LayerXはここでいう「〇〇型」の会社です。(他に呼び方無いんかいw)

言い換えるとLayerXは時間リスクを取ろうという会社です。

ハック型のスタートアップだと取れる時間リスクは1-2年でしょう。通常のスタートアップで5年くらいでしょうか。

LayerXは既存産業にテクノロジーの力を入れていって生産性を上げていく。そのためには単に技術だけでなく、人々の認識や業務フローの再構築、法体系の再整理など、長く時間を待つことで大きく成長する可能性にかけています。ので必然的に「10-20年」のスパンで待てる会社の体制を作る必要があります。究極的には、見渡しのいい場所で、事業をしつつ10年間しっかり生き残れば成功する、そんな領域だと思っています。

そのためコストシビア、ROIシビアな文化、見栄よりも実態を重んじる文化、見てくれのオフィスよりも事業やビジョンに共感してもらって働ける文化づくりが何より大事だと思ってます。

またそうした長いスパンのリスクをとることで、他の会社が取れない大きなチャンスが狙えますので、そこで得た果実はとったリスクに対して分かち合えるような制度設計、夢とそろばんみたいな、そんな形の会社設計をしていっています。

まとめ

そんなわけでたかがオフィスの選定でと思われるかもしれませんが、オフィスの選定一つとっても会社のスタンス、考え方、文化が現れます。

そういった意思決定の積み重ねが会社の制度を作り、どんなリスクに耐えうるスタートアップかを確定させます。

これが私たちが「下町でスタートアップ」をやる理由です。

絶賛募集中

削れたオフィス代の部分はガンガン採用に使っていこうと思います。そこはしっかり投資していきますので興味がある方はどんどん応募してください。


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