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認知症ってさ…

『認知症ってさ、うざくね?』

この間、先輩と一緒に検査出しをした時に
こんなふうに言われた。
看護師になってまだ一ヶ月半の私は
反応に迷ってしまった。

この一言だけを聞くときっと世の中の人は『なんてひどい看護師だ』『看護師として失格だ』なんて思うのであろう。

『うざいってひどい言葉だなあ…』って思った心も少しはあったけれど、実は私もどこかで”うざい”と思っちゃったんだろうなと。”うざい”というよりは心が参ってしまったという感情の方が近いかもしれない。

私の病棟はほとんどの患者さんが認知症を患っている。だから常にナースステーションには見守りが必要な患者さんがいて、詰所内は常に慌ただしい。

見守りが必要な患者ということはほとんど診療の指示が通じないことが多い。だから病室内から床を這いずりながら出てきちゃったり、ベッドから転落して頭をぶつけちゃったり…。目を離すと患者さんの命に関わることに直結する場合も十分あり得るので詰所で見守っている。

ではなぜ慌ただしいのか…。

『私はトイレに行きます』と言って勝手に車椅子から立ち上がろうとしたり、『嫌だって言ってるの!!!!!!!!』と言って看護師を突き飛ばしたり叩いたり蹴ったり、一人の患者が急に立ち上がって止めに入ろうとしたら今度は別の患者2・3人が次々に立ち上がろうとしたり、ご飯は食べないのにその辺にあるものを口にしてみたり、ものとられ妄想だったり。
布団も投げられたしね。

ほんとに毎日同じやりとりをどんだけリピートすれば気が済むの!と言うくらい繰り返しているので、詰所内は常に戦争である。

このエピソード、まだ看護師になって一ヶ月半の私だけれど全部直面したんだから、先輩方はその慌ただしさや大変さをより強く実感していて、比べものにならないくらい疲弊しているに違いない。

新米看護師には驚きと衝撃で対応しきれなくって己の力不足も実感しながら目をうるうるさせて患者さんたちをみていた時もあった。

教科書で読んだことなんて、
看護学校で学んだことなんて
ほとんど役になんて立たないじゃん!!!!

そんなふうに思うのはあるあるなのか…。



でも、認知症の患者さんに対して日々新しい衝撃と向き合うたびにこんなふうに思うこともある。

『立っちゃだめ』『ご飯は食べないとだめ』『おしっこはおむつでしないとだめ』…って病院の看護って『だめだめの押し付けなんだな』と。

もちろん、立ったらいけない理由もご飯を食べなきゃいけない理由も、おむつ内排泄じゃなきゃいけない理由もきちんと”根拠”として存在することは分かっている。病院の役割も病棟の役割も新人なりに理解した上で…

病院には”患者の権利”なんていう綺麗事は存在するのだろうか。

とたまに思うのである。

そして大変な患者さんほど『やっと退院した…』と看護師は安堵するが
その後、家で見ていく家族はどんな思いでこの患者を見ていくのか…。

看護師は『仕事』として患者を見ているのにも関わらず『感情』が入るわけだから家族はその『感情』の部分がもっとゴチャゴチャになるのではなかろうか。


とまあ、
新人は新人なりに色々思う部分がありながらも

『○○さんね、立たないでくださいってさっきも言いましたやん!!』

な〜んて先輩看護師に混ざりながら言うしかできないのである。

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