cis本、幻のあとがき

cis本のために書いた「あとがき」です。

当初は入る予定だったのですが、麻雀のことを書きすぎたこともあったのか、途中で方針が変わって没になりました。

他に使う予定のない文章なので、ここに載せておきます。

以下、本編↓↓↓


2ちゃんねるでの出会いを経て

 僕がcis(しす)さんと出会ったのは10年ほど前のことでした。

 出会ったといってもリアルの場ではなく、ネット掲示板・2ちゃんねるの麻雀板でのことです。まだ「死す」と名乗っていた気もします。「ゲームで俺と戦うやつはみんな死す」から来ているそうです。

 当時の麻雀板には、「2週間でネット麻雀の最上級卓まで到達する」などと豪語して実現しようとする新参者がときどき現れていました。
 そういう人たちはみなその公約を実現できず、すごすごと消えていくのが常で、そういう人たちが敗れ去っていく様子を見るほど癒されることはありません。cisさんはそんな精神安定剤として登場したのでした。

 ただ他の人たちと少し様子が違ったのは、公約が「3カ月以内に最上級卓に到達する」と期間を十分取ってあったこと。そして実際にはわずか2週間で達成してしまったこと。見事なものでした。

 その一方で、大口は他の新参者以上でした。
「cisって周りが雑魚だからかろうじて勝ってるだけ」という書き込みに対して、cisさんの返事は、「俺はいつもそういわれてます。歌舞伎町のフリー雀荘でも、麻雀プロとのセットでも、ネット麻雀でも、鳳凰卓だって周りが雑魚だから勝てると思うよ。要するに麻雀人口俺以外全員雑魚」などと、吹きまくっていました。

 最上級卓に上がってからも「ここだって養分の巣窟にすぎない。ここで勝つ方法、それは俺と同卓しないことだ」と豪語は止まらなかったのですが、実際に最上級卓で打ち始めてみるとまるで勝てず、電光石火の速さで最上級卓から陥落したのでした。

 そのころから大口を叩かなくなり、逆に「ぐげええええええええ、ダメだ、堕ちる。なぜ以前は勝てたんだ? 勝てる気がしねー」などと悲鳴ばかりになりました。
 大口を叩くか悲鳴を上げるか、その両極端であるのが、まさに2ちゃんねらーというか、ネット時代の作法です。

「まじやべえええええ。なぜこうなった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なぜこうなってしまったんだ。。。。。。」
「ぐげええええええええ。どうしてこうなった。。。。。。。。。。。。」
「完全終了・・・」
「ぎええええええええええええ。どうしてこうなった。。。。どうして・・・」

 そして最上級卓から降格してからも、悲鳴は止まりませんでした。

「連続ラス・・・」
「特上でも全然勝てなくなった。壊された」
「まったく勝てねえ・・・」
「特上って意外につよくね?」
「俺ひどいかな? 観戦すればわかると思うけど」
「つーか特上も意外につよくねーかこれ・・・なんで前はあんなに勝てたんだろうか」
「ご無礼。今回もラスです」

 心が洗われますね。人が転落していく様子は、多くの人に癒しを与えます。

 cisさんが他の新参者と違ったのは、こんな状態になってからも、このネット麻雀を止めなかったことでした。そして不調にめげず続けているうちに慣れてきて、その後は復活します。

 cisさんが集める麻雀の場に呼ばれたこともあります。リアルで会ったのはそのときが最初になります。麻雀は強かったですね。申し分ない強者でした。
 麻雀が強い人は実地で叩き上げて感覚を磨いてきた系の人が多いのですが、cisさんの場合は、最先端の戦術をいち早く取り入れてきた系の強者という感じがしました。

 その場は個人投資家の人が多くて、麻雀系の人たちとは違う雰囲気でした。なんか数字マニアなんですよね。
「この局面でこの牌の放銃率は12%くらい? 14%くらいあるかな?」などと、ビックリするくらい小さな数字の差に興味あるんだなというのがそのときの印象でした。

仮説思考の天才

 なんだか麻雀のことばかり書きすぎてしまいました。本職が麻雀ライターなもので、申し訳ありません。

 麻雀じゃない部分の話をしましょう。今回この本を作るためにcisさんの話をじっくり聞いてみて、その内容は衝撃的なものでした。すごすぎますね。この人は天才だな……の一言です。

 麻雀なら僕もcisさんと対等に勝負することができますけど、より大きなゲームである相場では、何回生まれ変わってもこの人にはかなわねー!というのが感想です。恐ろしいほどの観察力と、ビックリするような論理構築力により、次々と仮説を立てていき、好機が到来するやその仮説を実地で検証して、その何割かで大勝利を収める。

 たとえば、本書175-176ページに出ている、ビットコインのFXで強制ロスカットされてしまった現物を拾うために前もって安値で買いを入れておくという話、ヤバすぎませんか?

(以下175-176ページから引用)
<また仮想通貨のもうひとつの特徴としてサーバーが弱くて止まりやすいことがあった。
 ビットフライヤーでもコインチェックでもザイフでも、取引所のサーバーがビジーになって受け付けなくなることがある。そうなると値がいきすぎてしまう。円滑な取引の整備という観点からすると発展途上だといえた。だからこそつけこめるスキがあった。(中略)

 ではサーバーの弱さにどうつけこんだか。
 一時は200万円を超えていたビットコインの値なのに、2018年になってどんどん下がりだした。それで僕は150万円を割ったときにはロスカット売り(自動的に行われる強制決済による売り)がかなり発生するんじゃないかと予測した。レバレッジを利かせて勝負している人間は、ロスカット売りになる可能性があるからだ。ビットフライヤーはサーバーが弱くて、暴落したときには注文が入らなくなっていた。

 そこで、ロスカットされたビットコインを全部買いたいと思って、あらかじめ120万円から100ビットコインずつ段階的に買いを入れておいた。
 うまく現実化したらおいしいし、現実化しなかったら取り消せばいい。すると、10日くらい経つと本当にビットフライヤーには注文が入らなくなり、僕の買いがロスカットをどんどんキャッチした。注文が動いていたら拾っていくのは無理だけど、止まってしまっているため、前もって入れておいた買いが約定していく。

 このときは値が戻らないんじゃないかという不安はなかった。海外のビットコインは145万円くらいで推移していて、僕の買いが120万円くらいで約定したから、少なくとも海外の取引所並みには戻るだろうと踏んでいた。それまでは日本のほうが高いジャパンプレミアム状態だったから、海外取引所プラス5%くらいになったら徐々に売っていこうと思っていた。いざとなったら手数料はかかるけれど海外に送って売ってもいい。

 結果、半分くらい戻ったところで売って、1億5000万円ほど儲かった。
 こういったバグは世の中にいくつも転がっている。>

金よりロジックを重視するゲーマー

 ゲームの強者にはいくつかのパターンがあります。

 桁外れの意志の強さに特徴があるタイプ。これは格ゲーの梅原大吾氏などが当てはまるかと思います。対人的な間合いの取り方にセンスがあるタイプ。これは格闘技が得意だった人などが多く、麻雀の前原雄大プロや佐々木寿人プロなどが当てはまると思います。

 そして一番多いのは、あらゆるゲームが得意なタイプ。昔は将棋や囲碁などのボードゲームやカジノなどのギャンブルゲームが多く、それが今はネットゲームに移っています。cisさんはここに入るかと思います。

 その中でも、将棋の天才高校生・藤井七段のように、ものすごく負けず嫌いで、勝ちへの執念が桁外れというタイプもいます。
 cisさんはそれとは違っていて、徹底してロジック重視というところに特徴があると思います。「負けたとしても有利な勝負ができたらありがとうという気持ち」など、ロジック重視の裏に結果に対する淡白さを感じさせて、ゲームの強者としては異端の感性であるように見えます。ひょうひょうとして見えるcisさんですが、小学生時代から培ってきたロジック主義が彼を支えています。

 こんな百獣の王でありながら、cisさんは不思議なことに人間的には嫌味な感じじゃないんですよね。すごく穏やかで寛容であり、おごりたかぶっている感じがありません。

 途方もない金額を稼いでしまった個人トレーダーの方は、精神的なバランスを保つのが難しく、そこに一つの関門があるんじゃないかと思います。平常心で生きるのが難しそうじゃないですか。宝くじに当たった人は、幸福になるよりも不幸になる確率のほうが高いといいます。

 cisさんは230億円を持っている今にしても、金よりロジックを重視して生きていて、それは小学校のときから変わっていないそうです。ここにも異端の平常心があります。

 「俺は腕もこんなに細くて、喧嘩するとかならず負ける側だから」と言うように、肉体的に強くなかったことが諦念に結び付いている気もします。逆にそんな人こそ、大金をつかんだら天下を取った気分になって芸能人を囲ったりしそうな気もしますが、cisさんはそこで何かしら自分よりは優れているということを常に思って相手に対する敬意を持ちつづける。だから人の話を聞き、やり方を盗み、今のスタイルを築けたのかもしれません。不動産でcisさんに説教されたという投資家の降臨さんに話を聞いた時には、「でもあいつは本当にいいやつでとにかく人を立てる」と何度も口にしていました。

 お金じゃないところでたしかな人間的魅力がある。そんな風に自分を見失わないからこそ今も勝ち続けているのかもしれません。なんにせよ、すごいもんだというしかないですね。

 今後、引退する時期を見誤らないようにしなければ……とcisさんはいいます。引退したあとはどうするんでしょう? プロ野球球団を買う……のはさすがに無理かもしれませんが、麻雀のチームくらいなら余裕で持てます(2018年に企業が自社チームを持ってリーグ戦を行うMリーグというものが麻雀の世界にできました)。本人はどこまでも興味が無さそうですが、いずれ何らかの社会的活動に乗り出すcisさんを次のステージとして見てみたいと思います。

(幻のあとがきはここまで)↑↑↑

福地、cis、降臨(個人投資家)、青柳(雀ゴロ)による
麻雀はこちらのチャンネルで見れます。
https://www.youtube.com/channel/UCn5YzlA_yGrWlooXnLvZMkg


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福地 誠

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