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『Mリーグ2020公式ガイドブック』を読んだ

アマゾン300位台だし売れてるみたい。

ボロクソ書く気満々だったんだけど、読んでみたら予想よりずっと面白かった。手抜きせず真面目に作ってる。すげー大変だったんじゃ? 値段が馬鹿高いので買い!とまでは言えないけど、買って損する本ではないと思う。

出版の人によると、オールカラーで部数が多くないと、このくらいの値段じゃないと成立しない。ぼってるわけじゃないらしい。

こういう本って、まず写真を大事にするもんだし、フォーマット重視になる。そして名のあるベテランライターが書かない。そんな理由から、文章がイマイチになりやすく、データ等はよくても読みごたえは低くなることが多い。

という理由から、文章の質には期待してなかったんだけど、それがくつがえされて面白かった。正確にいうなら、文章の質が高いわけじゃないんだけど、Mリーグの面白さがちゃんと再現されていた。

ただし欠点として、ビジュアルは良くない。ツルツルの紙を使って、写真がかっこよくなるようになぜしなかったの?

見た目として、暗い感じになってるページが多い。

さて、それでは内容を順番に説明していこう。

この本の中心となっているのは選手紹介だ。1人4ページずつあって、選手30人で120ページ。全176ページの7割弱を占めている。チーム紹介(各チーム2ページずつ)も含めると、全体の77%を占める。

そのページが面白かったんだよね。

こんなフォーマットの4ページだ↓

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1ページ目に、①レーダーチャート②全身写真と名前③本人コメント
2ページ目に、④プロフィール⑤記録⑥選手紹介
3~4ページ目に、〇〇〇〇の名手①と②全体牌図TV画面写真解説文章

となっている。

①レーダーチャート――2019年レギュラーだけだから単なる飾り。

②全身写真と名前――写真はイマイチ。ユニフォームの色が濃いチームの人たちはページ全体が暗くなってる。女性選手は気の毒。ひなたんなんて怒ってるんじゃ?

③本人コメント――普通にいい。なぜかハギー3行、茅森p1行。もっとしゃべれよ。

④プロフィール――いい。なぜか好きな音楽だけ充実。

ここに、熱闘Mリーグからの私生活写真が1枚あると面白かった。近藤さんの温泉とか、まるこのアスレチックとか、和久津pの筋トレとか。

⑤記録――いい。2018レギュラー、2018セミ、2018ファイナル、2019レギュラーなど、すべてを合算した記録が載っており、順位もついてる。記録として一番信用できるのはこれだと思う。たとえば1年目は大勝、2年目は大敗の園田p、1年目は大敗、2年目は大勝の魚谷pなど、通算を見てみないとわかんないでしょ。この記録は非常にいい。

この種の本って、こういうデータの取り方&載せ方が命みたいな部分があるけど、そこに無頓着なことってじつは多い。編プロ丸投げで作ることが多いしね。こういう目立たないけど重要な部分が使えることで、この本の印象はむっちゃ良くなった。

⑥選手紹介――普通に面白い。

というわけで、このお約束の2ページが、ノルマだから埋めましたって感じではなく、まずまず誠実に作られてて面白かった。

3~4ページ目。〇〇〇〇の名手①と②。これがけっこう面白い。もう一度ページ画像を載せておこう。

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分解すると、
①状況(文章)
②牌図
③画面写真(顔と手牌)
④キャッチコピー
⑤解説文

となっている。

①状況(文章)
文章はそんなに上手くはないんだけど、いいたいことはわかって許せる。

「状況」の部分は、ただ埋めてるだけの前置きがけっこうある。これは空白にした方がマシ。

たとえば、P43の勝又pの名手②は「野球でワンアウト満塁という状況は~」以下13行が野球の話。そして「麻雀も時には「満塁」に匹敵するような手が入ることがある」となって、ようやく麻雀の話になる。で、その麻雀の話が野球の満塁と関連性がむっちゃ高いのかといったら、そうでもない。おい、真面目にやれ(;^ω^)
これは悪い例で、全般に無駄な文は多いんだけど、ページ全体として見たら面白いことが多いから許せる。

②牌図
牌図は、相手の手牌が伏せてあったら何切るとして考えられるとか、ケースバイケースには対応してない。まー、しゃーないな。
赤5m赤5p赤5sがあまり赤くなってない(よく見るとほんの少しだけ赤い)。赤5m切りについて語ってる牌姿で赤くないのはマズい(岡田p名手①)。

③画面写真(顔と手牌)
意味としてはあまり機能してないけど、臨場感のために入ってる。まーいーのでは。

④キャッチコピー
下手なことが多い。
沢崎pの「こんなことが毎回起きます」って、最初にその見出しが目に入っても意味がわからない。
これって、文章を書いたあとに見出しをつけるという作業工程がただ反映されたミスで、見出しは何のためにあるかという編集的な観点が抜け落ちている。こういうのはゲラで直そう。
このページは、沢崎さんの読みがすげー、理由はわからんけど・・・って話なので「驚愕のマムシ読み」とすれば、文章を読む前から何の話なのか予想がつく。
内容自体は面白いし、実際すごいと思う。沢崎pの異能ぶりが表れてる。説明を放棄しちゃってるのも面白い。

⑤解説文
8割くらいは面白い。2割くらいは当たり前だったり、無用の説教だったり。
プロ連盟の人が書いてて、やたら古臭い戦術が常識として書かれてることが時折。おいおい、老人が書いてるのかよ(;^ω^)ってなる。たとえば、鳴いた手だったら加槓しないのが普通とかさ。リャンメンテンパイしてたら加槓するだろーよ。

面白いやつには、技術的にすげー!系と、展開としてドラマチック系がある。後者は役満をアガった手順や展開など。役満は全部扱う方針なのか、そこそこ出てくる。

技術的にすげー!系は説得力がある。あー、強いんだなーって感じられる。そして強くない人についての文章は、ほめてあっても説得力があまりない。

こんな感じで、30人の名手が計60個あるから、けっこうな分量だ。平均して近麻webの観戦記よりずっと面白い。説明が詳しいのと個人にフォーカスしてるからだろう。

このページで最大の不満は文章中の麻雀牌が白黒表示になってること。カラーの本でそれはねーだろ。マンズとかピンズとか赤い色が入ってないと、リアル感が低く、頭に入ってきにくい。

出版技術的に、牌をカラーにするのってけっこう面倒だ。牌ってフォント(字)であり白黒だから、オペレーターがこの本のために色をつけた牌画像を用意することになる。それでも最近の麻雀本は2色が標準になりつつあるから、やってほしかった。4色までは不要。2色でいい。

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チーム紹介のページも良かった。

あー、こんな展開だったよなーって、シーズン中のポイントの推移を思い出せて。
順位の推移が折れ線グラフで表示されてるのは、こうして完成品を見せられると当たり前のようだけど、普通はこんなにうまく表示されてない。この折れ線グラフは非常にいい。こういうのが大事なんだよ。

文章も普通にいい。

さて、以上が約8割を占める選手&チーム紹介だ。

他のページもさらっと紹介しよう。

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表紙はいい。

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は駄目。徹底紹介って当たり前すぎて意味がない。それだったら「この熱狂を外へ」の方がマシ。「136枚の牌が織りなす無限ドラマ」みたいな新フレーズを作ったらなおいい。

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シーズンダイジェスト

成績の表に選手の顔はいるのかね? 名前だけでよくねーか? 名前だけの小さな表にしちゃった方がいいと思う。

下の方のミニコラムみたいなやつ。内容は面白い。こういうのを読んでると、Mリーグの面白さが伝わってくる。ただ字が小さい。文字は読めるけど、牌が出てくるとマジで小さすぎて見えない。このサイズはなくねーか?

Mリーガーの小ネタ――可もなく不可もなく。

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非公式さんによるデータ集。2ページだけだが、もっとあってもいいくらい。こういう本ってデータを読むのが主って感じあるでしょ。
リーチしてアガったときに裏ドラが乗ってた割合は、石橋pが1位で、園田pが最下位とか、なるほどなって感じがする。

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麻雀用語集――できが悪い。

この本って、プロ連盟の黒木さんが指揮して、連盟の若手が中心なのかな、5人で書いてる。

プロ連盟の特徴として、麻雀観が古く、他にも何かと古臭いというのがある。

この本に用語集をつけるなら、実況&解説に出てくる麻雀用語がわかるような用語集にすべきだ。5ブロックとか、先切りとか。先切りは載ってるけど、5ブロックは載ってないんだよな。

異常なまでに古めかしくて、たとえば、ほんちゃんたいやおちゅー【混全帯ヤオ九】という項目があるけど、今はこんな言葉は誰も使ってなくて、入門書にもチャンタとある。

ちゃおぱん【跳板】とか、俺も知らなかったぞ。チョンチョンのこと。この用語集は20年くらい前の感覚となってる。

それでは以下、面白かった文や誤字などを抜粋していく。主観で。

P30 (EX風林火山について)結果を出せなければ全員クビになる

そうなん? 全員とは知らんかったわ。

P37 (タッキーについて)放銃せず、高い手を作って要所を締め、ラスは引かない。まるで、チーム戦のために存在しているような選手なのである。

説得力あったわ。

P45 (沢崎pについて)老齢であることを心配する向きもあったが

今の時代に60代を老齢はねーだろw 年配と書けよ。

P45 沢崎のあまりにもハイレベルな戦い方に、一部の麻雀ファンから理解を得られないこともあったが、裏を返せば沢崎が達人すぎたのである。

同様の記述が別の箇所にも。麻雀警察にダメージ受けすぎだろw

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