一流の「聴き方」を考えてみた
こんにちは。
話し方研究所の代表、福田賢司です。
「コミュニケーションスキルを磨くには?」
そう質問された時に、「伝え方」を思い浮かべる方が多いでしょう。
たしかに伝え方は大切です。
ただ、コミュニケーションにおいて本当に難しいのは、実は「聴き方」だと私は考えています。
「話し手」は自分の伝えたいことを前もって準備できますが、「聴き手」は準備ができません。言葉を受けてはじめてコミュニケーションのスタート地点に立てる聴き手は、話し手以上に高度なスキルが求められるからです。
今回は、コミュニケーションの鍵を握る「聴き手」について、思うことを書いてみます。
聴き手に求められるのは「経験を踏まえた」返答
コミュニケーション研修の中には、聴き手としてのトレーニングがあります。
ですが、研修の多くは「傾聴力」を磨くもの。
「相手のリズムに合わせて適度に頷きましょう」
「なるほど、というような相槌を入れ、会話にリズムをつけましょう」
のように、話し手が「会話をしやすい環境」をつくることへのトレーニングが主流です。
では、会話しやすい環境をつくることだけで「一流の聴き手」と言えるのでしょうか。
私はそうは思いません。
一流の聴き手は、話し手に「あなたに話しをして良かった」と思ってもらえること。それには、言葉を受けて「何を返すか」が問われます。
話し手の言葉に自分の経験を加え、
「そんな方法もあったのか!」
と、話し手自身が気づいていない「情報の深み」を引き出せるのが、聴き手に求められる「真の傾聴力」だと思うのです。
傾聴“テクニック”だけでは限界がある
とあるサミットに参加したときのことです。
懇親を深める中で、参加者の一人が「研修業界もAI化の波が押し寄せている」という話題を出してくれました。AIを導入することで、新しい研修ができるようになったことを語ってくれたのです。
その話題を受けて、学校関係に造詣の深いAさんはこう答えました。
「なるほど。それなら学校関係にも応用できそうだね。教育履歴を全てデータ化すれば、これまでになかったビッグデータができる。これは学校教育が変わるかもしれない」
Aさんの言葉を受け、話し手がイキイキとしてきます。
私は、人材分野の知見を織り交ぜ
「転職活動をデータ化してビッグデータをつくれば、転職のミスマッチを防ぐことができそうですね」
と返答をしました。
話し手は私の返答も楽しんでいるようでした。
一方、もう一人、その場にいた方は一言、
「すごい!!」
とひたすら相槌をうつだけ。
しばらくすると、その方は自然と私たちの会話から外れ、他のグループへと移っていきました。
ここで考えたいのが、「会話に残り続けた聴き手とそうでない聴き手の違い」は何か。
それは、話し手に「刺激を与える聴き手」であったかだと私は思うのです。
では、刺激的を与える聴き手に必要なことは何か。
私は、スキル以上に大切なものがあると考えています。
本当の聴き手は「表現者」でもある
聴くという活動には3つの力が求められます。
・反応の示し方
・要約力
・質問力
これらはトレーニングで磨くことができる力。
私はこれにプラスして、「新しいものを生み出したい」というマインドが、話し手を刺激する「一流の聴き手」に欠かせないものだと思います。
先ほども申し上げましたが、話し手にとって会話のだいご味は、自分が発信した情報に対し、
「そんな手もあったか!」
という化学反応が起きること。
話題のきっかけに過ぎなかった「情報」が、聴き手との会話を通じてアップデートされていく。
話したことで磨かれた情報を別の場所で伝えたとき、それは単なる情報ではなく「話し手の評価を高める」意見となります。
このように、「一つの情報を双方で磨きあげる」には、聴き手も一流でなければ叶いません。
本当の聴き手は、実は「表現者」でもあるのです。
新たな価値を生み出すコミュニケーションを増やすために、一流の聴き手を目指してみてはいかがでしょうか。
その第一歩として、話した内容だけでなく、相手にとって「良い聴き手」であったかを自分自身に問いてみることから始めてみましょう。
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