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ベガルタ仙台 vs 浦和レッズ~J1 2019年 第1節~

1.はじめに

fukuharaです。

Jリーグが!ベガルタ仙台が!ついに!帰ってきました!

我々は今年クラブ創設25周年の大事な1年です。
トップチームの戦いは楽しみで仕方ない。
今年はどんな景色を見せてくれるのだろうか。どんな場所へ連れていってくれるのだろうか。

さあ、総力戦のはじまりだ。

2.ベガルタ仙台のメンバー

<ベガルタ仙台>
GK シュミット・ダニエル
DF 平岡、大岩、永戸
MF 蜂須賀、兵藤、富田、関口
FW ハモン・ロペス、長沢、石原

SUB
GK 関
DF シマオ・マテ
MF 梁、石原崇
FW 吉尾、ジャーメイン、阿部

主に昨季と変わったこと
①HVが板倉(out川崎フロンターレ→マンチェスター・シティ→フローニンゲン)からWBをしていた永戸に変更
②DHが奥埜(outセレッソ大阪)から兵藤(in北海道コンサドーレ札幌)に変更
③DHが負傷中の椎橋に代わり富田が先発
④STが野津田(outサンフレッチェ広島)からハモン・ロペスに、石原が一列ポジションを変更
⑤CFがジャーメインから長沢(inヴィッセル神戸)

①板倉に代わって永戸というのは戦術的にも大きな変更です。昨季の仙台は左サイド後方からゲームを作るチームでした。
永戸は、よりサイドプレーヤーの選手ですからボール保持ではビルドアップの立ち位置の変化も気になりますね。ボール非保持では背丈が中央で守る選手としては小柄なので、そこもポイントになると思います。

②③に関してはチームの心臓部分が変わっていますから、ゲームの運び方が変わります。特に奥埜に関してはスタッツでみるとかなり優良選手でした。兵藤に対して何を求めているのかを考えることは大事なポイントです。

④シャドーの選手がよりFWらしい(昔ながらのイメージで、あまりいい表現ではありませんが・・・。)選手になりました。昨季の野津田・阿部に比べるとボールを貰いに降りてきてゲームを作る役割ではないものを求められているのだと思います。また撤退守備時にはSHのタスクをこなすことになるので、どれくらいの強度を監督が求めているのかも楽しみです。ベルギー代表のように守備に戻らなくたって、それがチームが勝つ為の最善策ならそれでいいのです。

⑤ここは試合によって変わりそうという報道がキャンプでもありましたね。長沢に関してはどう落とし込むかはかなり気になるところです。というのもここ最近、背の高さを生かしたプレーヤーがボールを動かすチームにいるのをあまり見た事がないからです。僕には予想がつきません。

3.浦和レッズのメンバー

<浦和レッズ>
GK 西川
DF 岩波、マウリシオ、槙野
MF エヴェルトン、宇賀神、長澤、柏木、山中
FW 杉本、興梠

SUB
GK 福島
DF 鈴木、橋岡
MF 阿部、マルティノス、柴戸
FW アンドリュー・ナバウト

ゼロックスと変わったこと
①左WBに山中が入り、宇賀神が右WBにスライド

①ゼロックスでは頑なにWB橋岡の空中戦を使わなかった浦和レッズ。開幕戦を見てみると、そもそも橋岡はベンチでした。チームとして橋岡の空中戦は今季そこまで落とし込んでいないのかもしれませんね。

これは僕の予想ですが「全タイトル獲得」を狙うオリヴェイラ監督にとっては、ビルドアップの出口として橋岡の空中戦をスタンダードに組み込むとJリーグでは勝ててもフィジカルに優れた選手がいるACLでは苦戦を強いられるというのがあるのではないでしょうか。
なのでこの間のゼロックスでも、橋岡(というかWB)の足元にボールを当ててゲームを作るということを試していたのだと思います。

ゼロックスのレビューはこちらからどうぞ
川崎フロンターレvs浦和レッズ~ゼロックス スーパーカップ~

4.噛み合わせの確認

スターティングイレブンから予想される両チームのシステムと、その噛み合わせを確認していきます。

噛み合わせのズレ
①浦和のDHに対して仙台はプレッシャーをかけれる選手が存在しない
②仙台の最終ラインからのビルドアップに対して浦和は1人人数が足りない

①浦和のDHに対して仙台はプレッシャーをかけられる選手が存在しません。なのでFWがカバーシャドウで消し続ける、プレス開始位置を下げる(FWが中盤底から守備を開始する)、DHが一列あがって前から嵌めにいく等が予想できます。どこでのズレを許容して守備をするのかは今季の楽しみですね。

②仙台の最終ラインが3vs2で数的優位ができているので、今のままだと2FWの脇からボールを運ぶことが容易になります。浦和としてはIHが一列あがって前から嵌めにいく、プレス開始位置を下げるが予想できます。

ゼロックスの川崎戦ではプレス開始位置を下げて戦っていましたがどうなるでしょうか。

5.キックオフから考える

キックオフから考えるは可能なら毎試合とっていきたいですね。というのも思考停止でロングフィードというのも考えられるので。サッカーでは相手を相手陣地に押し込んでフリーな状態からボール保持できる場面ってあんまりないんですけど、とりあえず蹴り込むのが主流なのが面白いです。

浦和レッズはすぐさまロングフィードを蹴り込んできました。
ターゲットは杉本。マッチアップは永戸です。187cm vs 172cmのバトルは永戸が15cmジャンプしてやっと対等の高さになりますから、序盤に「自分たちは隙さえあればそこを狙うぞ」という印象を刷り込む為にも良い選択だと思います。

ちなみに永戸は試合を通じて空中戦ではほとんど負けていませんでした。すごい。

6.仙台の守備の狙いと浦和の対応

仙台の守備の狙い
①CFがDHを背中で消す
②STがIHへのパスコースを背中で消す
③HVのパスコースはWBのみ、狩場にする

①仙台のプレス開始位置は噛み合わせの関係からMFの底からスタートしていましたね。CFは背中でDHへのパスコースを消します。

②STはIHへのパスコースを背中で消します。
ここでHVへはプレスの圧力がかからないのが特徴でしょうか。持たせてもいいよという判断なのか、STの守備貢献度を考えるとプレスにいくまで仕込めていないのという判断なのかは気になるところです。
試合中にあった現地リポーターからの情報によると渡邉監督はしっかりプレスに行くようにハモン・ロペスに声をかけていたようなので、まだ頭の中の改革が終わっていないのでしょう。今後に期待です。

③HVは他にパスコースがないので大外のWBへパス。大外にボールが入っても縦の面ができていれば中に入るしかないですし、バックパスをしようにもSTがバックパスのコースを消してしまえばいいので誘導完了。狩りのポイントです。

こういった狙いがあったと思いますが、これが対浦和レッズに限るのかどうかが時節以降のポイントとなるでしょう。例えば次節の横浜F・マリノスならCB畠中にボールを持たせるという判断は良くないですよね。相手をみて規準を変えれるのかは楽しみなところです。

浦和レッズの対応
①HVがピッチ幅いっぱいに広がる
②IHがCB-HV間に降りる
③CFがIHがいたスペースへ降りる

浦和レッズは仙台への対応というよりも元から本当のビルドアップはこうだったんだろうなというような形を作ります。

①HVがピッチいっぱいに広がる事でSTを外に釣りだします。

②IHが広がったCB-HV間に降ります。これでSTのプレーヤーは2vs1の状態を作られていて、かつハーフスペースの遮断ができなくなります。

③CFがIHがあけたスペースへ降りてボールを引き出しにきます。仙台のDHはIHについていくか、CFをみるかの選択を強いられます。

ゼロックスでは規準を崩しにこなかったIH。そして頑なに大外へ流れなかったFW。浦和の本当の狙いは何だったのか、というのが少し垣間見えました。また別のパターンとしてはIHが外に流れてDHを釣り出し、2ライン間のスペースへCF降りるものもありましたね。

どちらのパターンにしても浦和が破壊したい規準の対象は仙台のSTとDHでした。そしてそれは上手くできていたと思います。その結果、仙台の前からボールを奪いにいくという新しい試みはこの試合で言えば上手くはいきませんでした。

だからといって仙台の守備が悪かったかというとそういう事ではありません。むしろ良かった、進化していました。
奪えなくても前からいけるからこそ相手はプレス回避に人数を割く。そして回避できても崩しの局面に移るのには時間がかかるので、その間に撤退してブロックを作れる。プレスバックできるという流れができていました。

特に撤退時の速度は昨季よりも早く感じました。
機動力に優れた永戸やキャンプからしっかり取り組めた関口といった存在が大きかったのではないでしょうか。関口が90分フル出場できたのも大きな収穫です。

7.仙台の攻撃の狙い

ベガルタ仙台の攻撃のイメージと言えば2シーズン続いた「ボールを動かして相手を動かすサッカー」でしたが、この試合はロングフィードがメインでした。今シーズンこれがチームの規準となるのか、それとも戦術の幅の1つになるのかはとても興味深い所です。

個人的にはこのロングフィードは戦術の幅の1つだと考えています。
長沢とハモン・ロペスがいるからロングフィード!というのは誰でも思いつきそうな答えですけれど、まずは相手のこと。浦和レッズのことを考えます。

浦和レッズの事前情報を考えると、ゼロックスでの守備でしょう。というか守備の事しか分からない試合でした。仙台としてはあの組織された5-3-2ブロックを相手に戦いたくなかったのではないかと思います。

4.噛み合わせの確認でも書きましたが、最終ラインで仙台は数的優位があります。やろうと思えば永戸なり、平岡なりがドリブルで運ぶ事は可能です。
しかしその一方でどこかで引っ掛かるとその瞬間2vs2が生まれます。相手は興梠と杉本です。崩すのが非常に困難なブロックに突撃する為に、そのリスクを背負うのは厳しいです。

そこで仙台は相手を十分に引き込んで前後分断させ、3vs3になった前線へロングフィードを蹴る選択をします。

ターゲットは主に長沢とハモン・ロペス。マッチアップはマウリシオ、槙野、エヴェルトンでした。ロングフィードという試行回数を増やさないとあまり勝算のない戦術でしたが、思ったより勝てていたのは良かったですね。

可能ならばこの試合、このロングフィードから点がとれていれば時節以降、相手に対して前からいくべきなのか、撤退すべきなのかを考えさせることができたでしょうが布石としては十分すぎるでしょう。特にハモンは槙野だからこそ苦戦していましたが、4バックのSB相手なら勝てるでしょうから。

8.おわりに

結果は0-0のスコアレスドロー。ですがお互いに思った以上に中身の濃いゲームとなりましたね。

浦和はゼロックスで感じた違和感に対する回答をみせる試合となりました。
引く動きが良いだけに、あとは裏へのアタックができると怖いチームになりそうですね。そのあたりは現在負傷中の武藤だったり、今節も途中から出てきたマルティノスが面白いプレーをしてくれそうです。

仙台は前からのプレス、ブロックを組んだ後の立ち振る舞い。
ロングフィード、クロスからの攻撃、ちょっとだけ見せた永戸のSB化と、シーズンという長い戦いを考えるとやれることの幅を見せた今季は、個人的には天皇杯で決勝までいった昨季以上に期待値が高いです。
特に昨季終盤は仙台のDFにボールを持たせて放置というやり方が多かった中で、ロングフィードはどうしても欲しかった武器の1つです。その可能性を見せてくれました。

次節はアウェイでのマリノス戦。マリノスは開幕戦でも相変わらず撃ち合いをしているようですが、我々としては昨季なかった新たな武器、そしてマリノスキラー”ジャーメイン良”の活躍に期待が高まります。

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