観光における「名前」の重要性 〜それの名は〜

観光していると多くの名所に出逢う。
「上高地」「善光寺」「諏訪湖」「高遠の桜」…

それ全部長野県だろ、というツッコミはさておき、名所には当たり前だが「名前」がある。(当たり前だが)

けれど、「名前」のない観光名所も多くあると思う。その辺にあるポストとか、大きな石とか。畦道の中にひっそり佇む大鳥居とか。(ちなみにこれは上田市塩田平にあるけど、そこまで観光地化はされていない)

もちろん、もともと観光資源としての価値がないのかもしれないけれど、実は観光資源になりうるものを観光資源として昇華させる上で「名前」、もしくは「ネーミングセンス」は非常に重要なウェイトを閉めてあるのではないかと唱えたい。そういうコラムである。

例えば、最初に挙げた「高遠の桜」は地名ではない。謂われから名を馳せた、言わばニックネーム的な「通り名」だ。

別所温泉のことを「信州の鎌倉」と読んだりもする。そうした俗称があることにより、「鎌倉」から連想されて別所温泉には寺社仏閣が多いことがイメージづけられる。

長野県のことを「信州」と呼ぶのもその一種だ。もし、「信州」という通り名が無かったらどうなっていただろう。もしくは、今ほど定着していなかったら。

長野県を過小評価する思惑はないが、他の都道府県から地名ブランドとして一目置かれている「信州」のブランドパワー、そこには「通り名」が持つパワーが少なからず潜んでいる。

信州と書いてあると二割増くらいで美味しそうに見える

今、地方創生が叫ばれる中、市町村各所で新たな観光名所の創出が進んでいる。

そうした事例をいくつも見る上で、やはり「ネーミングセンス」は大きな影響を与えていると感じる。

聞いただけで行きたくなる地名、聞いただけで食べたくなるグルメ…観光資源が大量に乱立しているこの御時世、忙しい現代人の心を掴むにはファーストインプレッション、つまり「名前」に訴求力が求められてきているのではないのだろうか。

また例を挙げるなら、諏訪湖に「御神渡り」という現象がある。あれがもし、ただの「氷がひび割れた現象」という認識で地元の人にも特に価値を感じさせず、名前もついていなかったら…。

今でこそ、「御神渡り」は諏訪地域の毎冬の風物詩になり、メディアでも持て囃されているが、それは「御神渡り」というネーミングセンスがもつストーリーの力も付与されていることは想像に難くない。


「結氷した湖面の氷が綺麗に割れる」という自然現象にも観光資源としての価値はあるが、それだけに留まらず、「諏訪湖を渡って諏訪大社上社の男神が諏訪大社下社の女神のもとへ出かけた」というストーリーを纏わせることにより、文化的な観光価値ももたらしている。

この御神渡りは14世紀頃から観察されている現象で、当時の人々に観光資源としての意識は全くなかったと思われるので、こうした現代的な考察は無稽かと思われるかもしれない。

しかし、こうした事実は確かに観光と名前の繋がりを考える上で、観光資源の創出に携わり、尽力している人にとって小さくないヒントになると感じている。

逆に言えば、現在は放っておかれている観光資源を、上手に「名前」をつけて大切に扱い、マネジメントすることで、地域の誇りを、地域の活力を大きくすることができるかもしれない。

ただし、観光というアプローチからの地域創生という面で、「人間の私利私欲」が一番上にあってはいけない。バブル開発の環境破壊のように、経済活性化のために自然環境・民俗文化が失われるような事があってはならないと思う。

埋もれた観光資源を、人間の鋭い観察眼で発掘し、その観光資源が「文明」として、もう少し身近な言い方をすれば「文化」として社会に定着し、その文化を守るために人々が結託し、地域経済の活性化に繋がれば良いと思う。

そうして地域の埋もれたスキマを愛した結果、振り返ってみたら、その「文化」を軸とした新しいコミュニティが生まれ、「文化」の周辺環境はより整い、その「文化」の名前が持つブランドが高まって地域のプライドになっていれば理想系なんじゃないか。

このゴールに辿り着く手段としての「名前」を観光と絡めて考えてみると、いくら時間があっても考える時間が足りない…と思う暮夜でした。


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