不迷の人類へ─『NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生 (世界を変えた地図)』

著者は、グーグルマップの生みの親ジョン・ハンケの学生時代からの友人でいまも同僚のビル・キルデイ。
ジョン・ハンケとの出会いからキーホール社の立ち上げ、グーグルによる企業買収、そしてグーグルマップが世界的な成功を得るまでの軌跡を描く。
グーグルマップを支える技術の話はもちろんのこと、内部の人だからこそわかるジョン・ハンケやグーグルの雰囲気が、著者とジョン・ハンケ、個性豊かなメンバーとのやりとりなどを通じて伝わってくる。また、グーグル創業者であるラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリンとのやりとりや、マリッサ・メイヤーとの確執、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツの話など、多くのエピソードが挟み込まれていて臨場感も満載。山あり谷ありで飽きさせない物語になっている。巻末のエピローグの舞台は東京。
現在、ポケモンGOで有名なナイアンティックを率いるジョン・ハンケとビル・キルディの新たな物語がまた始まる。

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『ポケモンGO』、『ハリー・ポッター:魔法同盟』

と世界中を熱狂させるARゲームをつくりだしたナイアンティックという企業をご存知の人も多いでしょう。そして、そのナイアンティックを率いるのが本書のメインの登場人物であるジョン・ハンケ
今となってはメディアでたびたび登場することから、この名前を知っている人もいるかもしれません。しかし、このジョン・ハンケはナイアンティック以前にグーグルで「グーグルマップ」や「グーグルアース」を生み出す中心となった人物なのです。

本書は、グーグルマップ、そしてポケモンGO誕生までを、学生時代にジョンと出会い、キーホール(ジョン・ハンケが創業し、グーグルが買収したグーグルマップの基盤となる会社)時代からグーグル、ナイアンティックとともに走ってきた同僚であるビル・キルデイが克明に語っていく。

序盤はキルデイの独白からはじまる

最後に道に迷ったのはいつだっただろうか?どの方向に行けばいいか見当もつかないほど道に迷ったのは。

いまや私たちにとってグーグルマップは欠かせなくなった。人類は歴史上はじめて「道に迷うこと」がなくなる時代を迎えようとしている(グーグルマップがある限りは)。
そんな「世界を変えた地図」と言っても過言ではないサービスはどのようにして生み出されたのか。

倒産寸前までいったキーホール、グーグルの買収など話題に事欠かないが、驚くべきはラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの規格外さ。ピカサ(!?)のレビューで突如として現れたキーホールの製品に心を奪われ、その場で買収を決定したこと。

騒動がひと段落すると、ビジネス戦略も根拠も何もなかったが、セルゲイはシンプルに「この会社、買うべきだね」と言った。部屋にいたグーグルの役員は互いの顔を見た。反対する者はいなかった。それで買収が決まったということだった。

当時のグーグルは一切地図事業を行っていなかった。
はたまたグーグルアースの3Dモデル搭載に向けて「スケッチアップ」を有する@Last Software買収のためのプレゼンをすると

ジョンは、ラリー、セルゲイ、エリックが参加するミーティングで@Last Softwareを買収する承認を得るためにプレゼンを行った。
ジョンがスライドを見せようとしたところで、ラリーは中断するように言った。
「この会社を買収してくるよう言ったはずですが」とラリー。
「なぜ、この話をしているのか分かりません」。
「えっと、大金ですから、確認が必要かと思って」とジョン。
「いいから、買ってきてください」。

グーグルが地図事業にかけるエネルギーの大きさが分かるエピソードだ。
キルデイがしきりに強調するのはビジネス戦略などものともしないグーグルの姿勢だ。
「きみはもっと物事を大きく考えるべきだ」と言うラリー、セルゲイの言葉は何か染み入るものがある。

そして、物語は『ポケモンGO』につながっていく。本書を読むことでこれらのサービスの関係性が分かるようになるだろう。
臨場感と熱気が伝わってくるとてもエキサイティングなノンフィクションでした。



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