都市景観についてのノート


パーソナルな世界

実写版『ゴーストインザシェル』などで描かれている多言語の看板が入り混じる都市風景に違和感を感じていたが、ウェアラブルデバイスやインプランタブルデバイスで文字をリアルタイム翻訳して表示言語の統一化をはかれるようになると考えれば、その風景に自分が違和感を感じてしまうのもなるほどなと感じた。
リアルタイム翻訳が浸透すれば、今のように日本語の下に英語、中国語を書く必要もないしいちいち表示選択もする必要がないので、むしろ広告のありかたがスッキリするのではないか。そして文字の表示の大きさもタグクラウドのようにアクセス解析してパーソナライズできるようになったら、文字の大きさによるインパクトの効果というのも薄れていき、大きさの統一がはかられるかもしれない。路線図だって主要駅が大きくなってるけど、ある人にとっては「池袋」なんか全然主要じゃないし、自宅の最寄り駅とかが大きく見えた方が視認に関する快適性は高い。そしてその時に相対的に生まれるのは「物質」としてでかい文字なのかもしれない。古典的かもしれないが圧倒的にモノとしてでかかったりというのが復活してくるかもしれない。

そういう時代になってくると「装飾」なんかの意味が変わってきたり、ヴェンチューリが唱えたような「装飾された小屋」も力を持たなくなってくる。もしかしたらイタリアファシズム建築のような巨大な空間性を持つ建築表現や19世紀の建築家アドルフ・ロースのような直裁的な表現が重要性を持ってくるのかもしれない(そう考えるとブレード・ランナーのタイレル社は納得感あるのかもしれない)。

VRやARは直接的に建築と結びつかないように感じてしまうが、実際にはそうではなく確実に都市の風景を変えてしまうことから建築とは不可避的に関係を持ち得るのではないのだろうか。そうした時に建築の「表現」は改めて考えられるべき重要な要因となってくれるのではないかと思う。


「語る」建築から「会話する」建築へ

昔読んだエッセイで語られていた『「語る」建築から「会話する」建築へ』という話はおもしろかった。
いわゆる「装飾された小屋」の代表的な建築がタイムズ・スクエアだ。

タイムズ・スクエアではビルのすべての壁面は電子的な広告で覆われ、その広告料がもたらす利益はフロアを貸し出す賃料よりも圧倒的な価値を帯び、所有者に天文学的な数値に及ぶほどの利益をもたらしているという。ここでは、建築のファサードの通常の論理がまったく機能していない。しかし、「装飾された小屋」がもたらす情報は一方向的だ、それが情報化が進むようになるとその人に適した情報を表示できるようになる(例えば、amazonの行動履歴解析のようなあらかじめデータが蓄積されていればその人へのオススメ商品が表示されるなど。上のパーソナライズの話ですね)。


「モノのインターネット」。デジタル化が進行したその先には物質(フィジカル)それ自体がデジタル的な性質を帯びるようになる。さらには、原子のような極小のモノを人間が操れるようになったら、いよいよ人間はなんでもつくることができるようになるかもしれない。この状況を『SFを実現する』の著者の田中浩也氏は「フィジタル化(フィジカル+デジタル)」と名付けた。そして、同じく著者が主張する「フィスプレイ」はフィジタル化したディスプレイの究極版である。原子を操れるようになった世界と3Dプリンタが発達した世界では、遠くの場所で起きている事態を3次元的な映像(というのだろうか)としてリアルタイムに投影することができる。その時おそらく、視覚、触覚、聴覚などがあらゆるところで共有される(嗅覚や味覚についても化学的なアプローチが進行しているので、味や匂いすら再現可能になるでしょう)。「フィスプレイ」はそれを実現する技術だ。

そのような世界では、建物があらゆる人に対応してパーソナルに変化することもありえる。建材もフィジタル化されれば、それぞれの人にとって快適な形状に最適化されるようになるのかもしれない。
つまり、その時に建築の外観はインタラクティブな性質を備え、建物は「語る」というよりも人間と「会話する」ものとなる。そこでは、建築を「見る」だけじゃなく、僕たちも建築に「見られる」という世界になっている。

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