noteVR建築コンテストまとめ記事3

リアルとバーチャルの境界はなくなっていく─「第0回VR建築コンテスト」レポート最終回〜VR建築の未来をみる編〜

こんにちは。
FUKUKOZYです。

先日2018年12月16日に結果発表が行われ、大盛り上がりのうちに幕を閉じた「第0回VR建築コンテスト」の連続レポートを三編に渡ってお送りしております。
第一編「〜はじまるまで編〜」では、コンテストの企画から概要公開まで

第二編「〜はじまってから編〜」では、登録・提出受付始まってからワールド公開までを

追ってレポートしました。

ワールド公開後は「バーチャルお宅訪問」「結果発表配信」など、提出している人もいない人も、皆が楽しめるようなイベントを開催しました。
最終回である今回は、それぞれのイベントについて、そしてどんな「VR建築」が現れたのかレポートしていければと思います。

まちの出現─「バーチャルお宅訪問」

ワールド公開翌日に運営メンバーとワールドを巡る「バーチャルお宅訪問」を行いました。
想定以上に多くの作品が提出されたことから、番匠さんがぜひみんなでこのワールドを体験してもらいたいと 発案され、実現しました。

12月9日の夜の生放送を行うための準備をしていたところ、すでに配信されている方が現れるという事態も。

そんな反響を受けながらも、2018年12月9日21:00よりYoutubeにて「バーチャルお宅訪問」の生放送を行いました。

交流会も兼ねた「バーチャルお宅訪問」では、提出者も同行していたため、その場でプレゼンしてもらうという、現実のオープンハウスさながらの事態も起きていました。

各作品の前には提出者によるプレゼンボードを設置

階段を昇ると向こう側にもVR建築が

運営も出展者もさまざまな人がVR建築の中で交流しました

出展者のプレゼンを聞きつつ、体験

オーソドックスな建築もあれば,小型のロボットを拡大したもの、コライダーと呼ばれるいわゆる「当たり判定」を巧みに活用した現実ではありえない建築や、海の中を表現した幻想的な建築まで、多種多様な「VR建築」が揃いました。

壁をすり抜けられる家。市松模様がレイヤー状に重なる。

海の中から亀の甲羅の上の家に上がっていく

生放送の途中には負荷がかかりすぎてFPSが下がったため、負荷の低いアバターにコンバートして対応する、などトラブルもありましたが

負荷低減のためにAFKに変貌していくの図

計2時間半ほどの「バーチャルお宅訪問」を行いました。
2時間半かけてもすべての建築を周りきれず、ワールドの密度の高さが改めて分かる体験会となりました。

「VR建築」、ひいてはVRChat」の醍醐味はやはりVR上でのコミュニケーション。この「バーチャルお宅訪問」ではその魅力が存分に発揮されました。
また、「VR建築」ではVRならではのギミックを持つものも登場し、現実の建築ではありえない体験をみんなで体験するという経験は得難いものだったのではないかと言えます。

建築があって、そこに人が集まる、集まった人びとが思い思いに交流し合う。人が行き交い、活気が見える。まさにそこには「建築」、ひいては「まち」が現れていました。

1本の大きな木があり、そこに教える人がいて、教えを受ける人がいれば、それが学校である

と言ったのは近代建築を代表する建築家・ルイスカーン。この言葉からは人の活動が現れればそこには建築が現れるのだということが分かります。
ここに現れた「VR建築」も、この意味で「建築」と呼べるものになっていたのではないでしょうか。




結果発表までにやったこと

2018年12月9日に「バーチャルお宅訪問」を行ったあとは、審査員の番匠カンナさん、VoxelKeiさん、mozさんの審査期間に入りました。

審査を進める一方で、運営チームもコンテストを盛り上げるため、マップの設置、今回惜しくも出せなかった人たちへのフォローなどを行いました。


●マップの設置

想定以上の作品数が提出されたため、嬉しい悩みですが、ワールドを周るのに膨大な時間がかかるという問題が起きてしまっていました。そこで、sabakichiさんがワープ機能つきのワールド配置図を作成しました。

sabakichiさんによるワープ機能つきのワールド配置図

これにより、気になる作者の作品に一気にワープできるようになり、ワールドの快適度が向上しました。また、ワールドを配置図にしてみると、改めてその作品数の膨大さに驚きを隠せませんでした。


●#VR建築コンテスト作ってたけど間に合わなかったから次は出す

Twitterを見てると、今回のコンテストに興味はあったけど、間に合わなかった。。。
そんな人がちらほらと。
そこで、「#VR建築コンテスト作ってたけど間に合わなかったから次は出す」のハッシュタグを設置。
今回惜しくも出せなかった人はxRArchiのアカウントでのRTのもと、供養してあげました。

次回はもっといろんな人が参加できるように頑張りたいと思います!



いよいよ結果発表!

そして、2018年12月16日20:00〜より「バーチャルキャスト」を利用して結果発表を行いました。
審査の模様は下記の動画でご覧になれますので、ぜひご覧ください。

審査の詳しい経過は動画やモーメントでご覧いただくとして、本記事では審査員賞・最優秀賞を受賞した作品を紹介していきます。


シェーダーは魔法!
番匠カンナ賞|Ytomiさん「ゆらぎの建築」

シェーダーにより、時間経過で形態を変化させていくこの建築はまさに「VR建築」でしかできない表現をしていたものでした。番匠さんもこの点を評価されています。

シェーダーを大々的に活用したバーチャルらしい案。
自分の気分でゆらぎをコントロールできたら実用性がありそう。ただ、シェーダーは視覚的には自由度が高いけどコライダーが付いてこないので、そこに存在するという物質感が薄まってしまう気がする
。例えばもっと大きい囲いとしてゆらぎを利用して、内部に変わらない構造体があったら面白いかな…? とか、建築らしさをどう出すかが課題だと思った。とにかくいろいろ発展できそう
HPに掲載された番匠さん評


物語を纏った建築
─moz賞|小熊猫レッキーさん「カメと元気の生る木」

海の上に気持ちよさそうに浮かぶ亀、そして海自体も建築の一部にしてしまうという発想は既成概念にとらわれない「VR建築」だからこそ生まれ得た発想だと言えます。
mozさんはこの作品に物語性を感じ、高く評価しています。

現実世界の動植物を住まいに見立てたかわいい元気の出るご提案ですね。一見具体的なようですが、構成する動植物(部材?)にそれぞれテーマが込められているように感じて、神話のような物語性を感じました。
生命の起源ともされる海から堅牢さの象徴の二枚貝のリフトを使って、りんごの木を背中(甲羅)に生やす長寿・安定の象徴”亀”のお家にアクセスする様子は、さらなる進化を求めて禁断の果実を口にする人間の進化過程のオマージュに感じました(深読み)
これをVR空間内で体験・体感することは、ネットの海から構築された現代の常識上に成り立つxRという”次世代”の禁断の果実に手を伸ばして人々がネクストステージに移行しようとする様子を疑似体験しているようで、全て演出として構成されているのなら脱帽ですし、
偶発的な構成ならば尚更驚きです、製作者さんの純真さが伝わってきます。とても楽しい体験をありがとうございます。
HPに掲載されたmozさん評


桜の花びらが建築を形づくる
─VoxelKei賞|Noribenさん「Sakura Concrete」

スイッチを押すと、何もない場所に桜の花びらによる家型が現れるという作品。コンクリートを桜に見立て、「流し込む」という点で現実の建築の施工とも呼応するような不思議なレトリックを備えた作品でした。これもまた「VR建築」でしか表現し得ない建築なのではないかと思います。

好きすぎる。VR空間での建築というものを考えさせられる作品。コンセプト、ビジュアルともに素晴らしい。
HPに掲載されたVoxelKeiさん評

VoxelKeiさんはこの作品の講評の流れで、

●現実世界の建築をVRで再現すること。また、これからつくるもののシミュレートするものとしてVRを利用する。
●VRならではの要素としてインタラクションにより変化していくもの、または常に変化していくもの。
●物理的な制約がない、そして現実の建築の「シェルター」としての機能がなくなったときであっても、そこへの居心地がVR建築には重要。

「VR建築」における三段階の表現を分析。
この作品が、三段階目である居心地のよさを獲得していることが評価につながったようです。


そして最優秀賞は、

すべてにおいてのクオリティの高さとVR空間内でのスタディ
─Captain+鯨井さん「Cube Code Core.」

審査員が満場一致で、「クオリティが飛び抜けていた作品」と評したこの作品は、構造物としてのかっこよさ、コンテナやエクスパンドメタル、電柱などマテリアルの調和具合から、スピーカーのケーブルといった小物などのディテールまでありとあらゆる点でレベルの高い作品でした。

審査員評

休憩スペースもしっかりと設えられている

台所には料理までも

見晴らしの良い部屋は畳敷きに

配線まで細かく表現したスピーカー

驚くべきは今回の作品のスタディをVRChat内で行なったということ!
VR空間でスタディを行うことで実際に現れる空間のイメージを的確に掴みmながら制作を進められた、とのことです。

同様のシステムを利用していると思われるCAPTAINさんのツイート

作品の完成度から制作のプロセスに到るまでVRならではの手法で制作された本作品は、最優秀賞にふさわしい作品でした。
各作品はHPリンクから入れるワールドでぜひ体験してみてください。

そのほかにも、提出のあった作品の中でも特徴のあるものには特別賞を授与しました。また、第二編で述べたように全作品に審査員からコメントをもらいました。
下記のリンクより作品概要とコメントも見れますので、ぜひ見てみて下さい!





VR建築の未来をみる

そして、2018年12月16日をもって「第0回VR建築コンテスト」は大盛り上がりのうちに終了しました。

総作品数61作品。
それぞれユニークさを持つ作品が提出された今回のコンテスト。
賞を獲得したのは、それぞれVRならではの表現を持つ4作品でした。しかしそこには、新奇さだけではなく、ずっといたくなるような居心地のよさが実現されていました。
VR空間といえど、体験するのは人間。ならば、現実の建築と同じく居心地のよい空間が目指されるのは必然です。
VRはまだ発展途上だからこそ、そこで日々進歩する技術があります。その進歩する技術と居心地のよさが組み合わさった時、よりよい「VR建築」が現れるのでしょう。
第0回のコンテストを行なったことで、「VR建築」が持ち得る可能性の広さと深さが分かりました。

次に開催されるであろう第1回では、さらに素晴らしい「VR建築」が現れるのではないかと思います。

最後に審査員長である番匠カンナさんの総評を引いて、今回のコンテストのレポートを終わりにしたいと思います。
では、また第1回でお会いしましょう!

総評
まずはなにより……楽しかった!!
約60作品をひとつのワールドに配置するって(描画負荷的に・運営的に)けっこう無謀なチャレンジだったけど、大変だった分やっぱり最終形は壮観だったよ~!
そしてこれこそがVRならではの良さなんだけど、その場所に20人くらいで入って見て回るというのが本当に楽しかった

VR建築って何だろう?って考えても難しいけど、少なくともその場所、その家の中で人々が会話したり楽しい思い出をつくれるということは間違いないこと

今回なにより制約が厳しい中で提出してくれた人に感謝だよ!

思った表現ができなかった人もいると思うので、この辺りは今後やり方を考えていきたいと思うし、コンテストとは関係なく提出した方それぞれがVR空間制作で表現を突き詰めていってほしいと思う

・・・・・
審査の結果としては、「Cube Code Core.」「Sakura Concrete」「カメさんと元気の生る木」の3案に点数が集中して、それぞれ順に13点、12点、11点

平均で4点近くなので、3人の審査員がともに高評価を入れたことになるよ

結果発表放送でVoxelKeiさんも言っていたけど、全作品の系統として

1)まずはVRやゲームエンジンにトライして建築モデルを置いたもの
2)そこにVRならではの要素(シェーダー、パーティクル、メッシュ法線等)を入れたもの
3)そのうえで、VR要素がギミックに終わらずに、最終的に気持ちのいい空間ができていたもの

があって、やっぱりTop3は「気持ちのいい空間」にまで昇華できてたのが票を集めた理由だと思う

VR建築も使うのは人だから、そこにずっと居たくなったり、新しい刺激を受けたりというのが重要なんだと改めて感じたよ

・・・・・

コンテストにしたからには良いものを表彰したくて賞を選んだけど、まだ審査する人と提出する人で大きな差があるわけじゃない、というのは強調したいところ

建築がxRと出会って何が変わるのかまだ誰もわからないから、一緒に考えてつくっていくことが大事だし、このコンテストもそのためにあるよ~

私が保証するけど、VR・AR・MRは間違いなく今後人々の日常に浸透していって、リアルとバーチャルの境界はなくなっていくよ(確信)

その時、シェーダー魔法はリアルな魔法になるし、パーティクル芸術はリアルな芸術になるし、バーチャル建築はリアルな建築になる

バーチャル空間=ワールドをつくることは、そのままリアルな世界をつくることになる

だから、ここでトライしたことや気づいたことは貴重! 私自身も勉強だね~

ではまた、第1回VR建築コンテストで会いましょう!
番匠カンナ(バーチャル建築家)

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