今年の抱負は「生還」すること

今年の抱負は生還することです。
何を勿体ぶった話をという始まりで恐縮ですが、地球上には8000m以上の山が14座あり、今年はこれらに一気に登ろうと思っています。

14座全てに登頂した人は、Wikipediaによると世界で44人、日本人は1人だけと記載されていますが、さらにマナスルの頂上のように過去には危険性から本当の山頂ではない地点を暫定山頂としていた時期の登頂を認めない場合には、未だ世界で数人しか達成していないと言われています。

しかも、14座を制覇するには非常に長い年月を要するのが通常です。
2019年にネパール人のニルマル・プルジャがたった7ヶ月で14座を制覇するという世界記録を樹立するまでは、最短で7年を要していました(さらに2023年にはノルウェー人女性のクリスティンがなんと92日で制覇!!)

僕は彼らに比べたらあまりにも雑魚ですが、今年、1年間で14座に一気に登ってみようと思っています。実際に全てに登頂できる可能性は極めて低いですが、挑戦だけなら誰でもできます。

さて、8000峰の危険度ですが、標高が世界一の割には比較的安全と言われているエベレストですら、2023年は17人もの死者を出したと報道されています。

2023年のエベレストは、ネパール側だけで479人の登山者に許可証が発行されたとの記事があります。これにシェルパの数は含まれていませんが、1人の登山者(クライアント)のサミット時には通常1人のシェルパが帯同し、稀に2人のシェルパがつくこともあるので、少なくとも計1000人程度は頂上を目指したのではないかと思います。

また、エベレストに登頂するルートとしては、ネパール側だけではなくチベット側もあり、上記の死者数17名というニュースがチベット側を含むのかどうかはわかりませんでしたが、チベット側が公式なデータを集計して報告しているとは思えず、おそらくネパール側だけの死者数ではないかと思います。

これを前提とすると、2023年のエベレスト登山の死亡率は1.7%となります。

先にお話ししたとおり、エベレストは比較的安全な山で、それは地形的に雪崩が少ない方だということや、世界一だけあって登山者数が多く、ルートも整備されているし、キャンプやレスキュー体制も充実しているからだと思います。

例えば、Wikipediaで8000m峰について調べると、死亡と登頂数の対比で、1990年から2003年の統計では、エベレストが4.4%であるのに対して、危険度の高いK2、カンチェンジュンガ、アンナプルナ、シシャパンマは、それぞれ19.7%、22%、19.71%、16.8%と記載されています。

ちなみに、エベレストの4.4パーセントというのも2023年に比べると随分と高いように思いますが、これは分母を登山者数ではなく登頂者数にしていることと、高所登山の安全性はここ5年でも飛躍的に向上しているからです。

とはいえ、2023年時点でもエベレストに比べて、さらに危険度の高い山がいくつもあるということには変わりありません。

仮に、比較的安全なエベレストの死亡率1.7%を前提に、14回登山をすると、生存率は78.7%となります(100%-1.7%の14乗)。逆に言えば死亡率は21.3%で、5人に1人は生還できないことになりす。

2023年には登山史に残る事故も起きました。
過去の記事にも書きましたが、2人の米国人女性についてです。米国人女性で14座を制覇した人は過去にいないのですが、13座に登頂し、残り1座とリーチをかけていた2人の米国人女性がいました。
彼女達は最後の山となるシシャパンマに登り、競い、先に頂上に到達した方が登山史上、初めて14座を制覇した米国人女性となるところでしたが、何と2人ともが登頂寸前で雪崩に流されて亡くなってしまいました。
上述したクリスティンと常に登っていたシェルパも亡くなりました。

日本人でも、リーチをかけていた渡邊直子さんと石川直樹さんも同じシシャパンマに入山していましたが、上記の雪崩事故により登山を中止しています。

僕は彼らと競えるレベルでは全くありませんが、自分のペースで14座に挑戦します。
すでにエベレストとマナスルの2座のみ登頂していますが、せっかくなのでこれらも含めて一気に登っていきたいと思っています。

この意味で、今年の抱負は「生還」することだと考えています。

ちなみに、14座を標高が高い順に並べると以下の通りです。

① エベレスト 8848m
② K2 8611m
③ カンチェンジュンガ 8586m
④ ローツェ 8516m
⑤ マカルー 8463m
⑥ チョオユー 8188m
⑦ ダウラギリ 8167m
⑧ マナスル 8163m
⑨ ナンガパルパット 8126m
⑩ アンナプルナ 8091m
11 ガッシャーブルムⅠ 8080m
12 ブロードピーク 8051m
13 ガッシャーブルムⅡ 8035m
14 シシャパンマ 8027m

このうち、①③④⑤⑦⑩の6座が春のネパールで3月上旬から6月上旬、②⑨11.12.13の5座が夏のパキスタンで6月下旬から8月上旬、⑥⑧14が秋のネパールで8月下旬から10月上旬が登山に適した時期となっています。

一昔前は、この春夏秋にそれぞれ1座ずつ登るだけでもハットトリックと言って、快挙だったのですが、面白いもので1人が無茶苦茶な記録を打ち立てると、似たような記録が次々と出てくるもの。それだけ現実的な目標を意識できると人は力を発揮できるわけです。


というわけで、まずは春の6座に挑戦してきます。順番はアンナプルナ、ダウラギリ、カンチェンジュンガ、エベレスト、ローツェ、マカルーとなりますが、最難関のアンナプルナが一発目に来るので、ここが最大の難所です。

万が一、体調不良や疲労、悪天候などで一つの山に登頂できない場合にも、怪我をしていない限りは、次の山にどんどん挑戦していくつもりです。

どうしてわざわざ危険な登山に挑戦するのかという質問を受けることがありますが、生活が破綻するほどの大金を賭ける人がいるように、命を賭けることが面白いからとしか言いようがないです。
実際に身の危険が迫ってきたら、必ず恐怖を感じると思いますが、それでもこうやって冷静に考えているうちは挑戦してみたい思いが強いです。
日本でふわふわ過ごしていたところで、特に熱中するものが見つかっていないせいもあるかもしれません。
ま、大袈裟に言って盛り上がりたいだけです。

そんなこんなで、3月8日頃からヒマラヤ入りします。エベレストのような人気のある山以外はベースキャンプでもネットが繋がりませんが、可能な限り、現地からも報告したいと思います。

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