さあわい

頭と心と体が一致している瞬間。

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祈りは万能じゃない、でも手を合わせずにはいられない

東京国立博物館の縄文展、閉館2分前。誰もいなくなった国宝のコーナーで、合掌土偶と視線を合わせて、なんとなくわたしも合掌してみる。刺青だらけで陽に焼けた肌。ぽっかりと無防備な穴。煮炊きをして、乳を与え、たくさんの子どもを抱いただろうたくましい腕。つくられた当時は赤く塗られていたらしい。赤ちゃんの赤、命の赤。この土偶に手を合わせたところで、必ず願いが叶うわけじゃない。だけど、人は祈らずにいられない。この土偶に向かって手を合わせてきたあまたの人の一番後ろに、いまわたしがいる。太古の

    • sun shower

      やわらかな雨に降られて走りだし 少し前にはもう戻れない 滲みてくる雨に自分の体温を思いだす こんなふうに抱きしめられたかった 鳥は教わらなくたっていつか飛ぶ あたたかな地を目指して びしょ濡れのまま踊りたい 雲もないのに降る雨は草木の夢見る1秒後 こんなふうに抱きしめよう まだ見ぬあなた 静かに打つ胸 光に向かって伸びていく野ばら 出し惜しみなんてしないよ 帰る場所がほしかった だけど泣く暇もない 光を受けた雨に包まれて立ちつくしてる こんなふうに世界にいよう 愛し方

      • 「bad habit」

        あいつは右足をちょっと引いてポケットに手を突っ込む いい女がくるといつも ハムみたいな女の履く9ドルのストッキング 優雅にカールさせたおくれ髪 鐘が鳴ると散っていく鳩たちの白い羽根 癖みたいなものを収集してる 分かりやすい闇ならいっそ親しみ深い みんな同じさ 欲望に疲れてウォトカで爛れた壁を燃やす もう触れられない肉体の火 熱い血もすっかり冷えてテーブルのシミになる 午後のソープオペラ 出入り自由な亡霊の踊り コーンスープに沈んでいく蝿 ビスケット缶から出てきたプロレ

        • 君の名前で僕を呼んで

          君の名前で僕を呼んで 僕の名前で君を呼ぶ 君の心のすみずみに 染みとおっていくこのよろこびは僕のもの この手のなかにあるものはとどまることはない 川の流れみたいなもの ここにいて 何も知らない僕を見つめて はじめて僕が僕であることが誇らしいから この世は怖いものだらけだ 泣くなって言われたから強いふりをすることには慣れたけど 何度も惹きつけられる 誰かを守るなんておこがましいね ただ一緒にいたい 木漏れ日は点滅する 頬も背も焼かれながらやさしい歌を聴いている 君の考え

        祈りは万能じゃない、でも手を合わせずにはいられない

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        • 返歌
          5本
        • 日記
          6本

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          ピュ~ぴる

          『オトトキ』の初日に行けないかわりに、松永監督の撮ったドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』を観た。『ピュ~ぴる』は公開当時ポスターだけ見ていて、ピュ~ぴる自身のビジュアルもすごいけど、この人を追いかけようと思った監督もどんな人なんだろうって思ったのは覚えてる。 ピュ~ぴると松永監督はもともと友達だったらしくて、公園とかアパートでふつうに恋バナとかしてるから、わたしも友達の輪のなかにいる気分で映画を観た。監督は客観性を保つために意見を言わないように努めているけれど、どうしてもピ

          ピュ~ぴる

          わたし、アラーキーと豚カツ食べたいの。

          新宿13時。目当てのカレーは売り切れ。なべ底に残ったカレーを味見させてもらって、レシピの紙ももらったから今度は自分で作ろう。西安で担々刀削麺を食べて、初台へ移動。アラーキーの「写狂老人A」をみる。 あのいちごとかひじきのサラダとか、誰がつくってんのかなぁ。家政婦さんだとしても、そこにおんなのにおいが混じってるって、なんかちょっと嫉妬した。別に愛人になりたいわけじゃあないんだけど。お化粧して着物を着た女のひとは、みんな陽子みたいな眉毛のアーチをしてる。向かっていくひとつの方向

          わたし、アラーキーと豚カツ食べたいの。

          少年の夢 20170812

          基礎体温は36.30℃。すこし寒い、そして眠い。寝転んだまま『ベルベッドゴールドマイン』を観る。つまらなくて2倍速でやっと観終わった。終盤のブローチのやりとりは都合がよすぎたし、全体的に監督が「自分のため」につくったにおいがした。自分のためにつくるならもっと血を流してほしかったし、ボウイを描きたいならもっと人物像に迫ってほしかった。この煮え切らない感じが自分にもあるから余計に嫌だと感じるんだろうなぁ。 5時にやっとシャワーを浴びて、音楽を聴きながらスーパーに行く。レジでイヤ

          少年の夢 20170812

          くたくたになりたい

          10時半ごろ起きる。基礎体温は36.31℃。右の腰が痛い。少しだけストレッチをする。作り置きのおかずが何もなかったから、観念してわかめと豆腐の味噌汁ときんぴらごぼうをつくった。あとはプチトマトと白米。昨日切った髪は変にスカスカしていて、やっぱり安いところで切るとそれなりだ。 恵比寿のピクニックシネマに行こうかと友達を誘ったけれど、なんだか元気がなくてやめにする。力が出ないのはお腹がすいているせいもあるなと思って、朝昼兼用の残りを夕方に食べた。ちょっと回復。 夜、外に出たく

          くたくたになりたい

          誕生日

          ちょうど今日が誕生日なので、日記をはじめる。できるかぎりつづけるつもり。 33回目の誕生日は、起き抜けから頭痛。でもお出掛けしたかったので、日本橋高島屋の黒柳徹子さん×田川啓二さんのSU・TE・KI展へ。 田川啓二さんのご親族の着物は、豪華なのに品がよくて、しかも状態もよかった。財と粋、職人の技が揃うとこうなるのか、という感じ。あんなに美しいものを身にまとうってどんな気分だろう。護符のようでもあり、ときに自由には動きにくいような気もした。シノワズリの衣装は、栄華を誇るあつ

          ありふれた星 『リップヴァンウィンクルの花嫁』に寄せて

          眠ってばかりの夢の淵 誰かいてくれたらうれしいな 死なないように見張ってて 笑えるようにそばにいて 水が流れていくでしょ それを見てると溶けだしちゃって 触りたいの じぶんのかたちを忘れそうだから みんな真心をさらして歩いているの? なんてことない顔して ひとりで着替えているときも 暗くなってきて明かりをつけるときもね ずっと見ていてくれるの 自分が勝手につくった神さま とくに何もしてくれないの、見てるだけ 助けてなんて言わない どこへ行けばいい

          ありふれた星 『リップヴァンウィンクルの花嫁』に寄せて

          『たかが世界の終わり』への返歌

          予感は常にあった 音楽と暗がりと中途半端なネオンのなかで 抱き合わないとやりきれなかった 出ていかなければ窒息してた 傷ついたのはどっちだ 誰かがねじを回して保ってきた でも普段は忘れてるだろ 息の仕方や神の存在なんて 殺したいと思った 抱きしめられたいと思った 忘れているふりをしてきただけ 今晩帰るから どこにいくの、どこにいるのと言わないで たくさんの言い訳をなすりつけて触らないで なにも変わりゃしないよ たかが世界の終わり 飴玉に似た 細

          『たかが世界の終わり』への返歌