ふくしまの、まちをつくる人たち #3

OBROS COFFEE  荻野夢紘 -Ogino Yumehiro-


___暮らしの中に、コーヒーを楽しむ文化を。

 郡山にある、OBROS COFFEEは、ハンドドリップでスペシャルティコーヒーを出してくれるカフェだ。経営するのは、バリスタの荻野兄弟。荻野兄弟=オギノブラザーズでOBROS。兄弟の仲の良さを感じて、なんだかほっとする。

  OBROS COFFEEのコーヒーは、詳しくない僕でも豆の味わいがしっかりわかる。荻野さんが選ぶ豆は、国際基準をクリアした上質な豆だけを使ったスペシャルティコーヒーで、中でも比較しやすいフレッシュな3種類に絞って提供しているのだそう。

 OBROS COFFEEのコーヒーは、今まで僕が飲んできたコーヒーと比べると、フルーティーな酸味があったり、独特の香りや味わいのものが多い。

荻野さんに聞くと、産地の違いや収穫後の過程によって、それぞれの豆の独特な味わいが生まれているという。これまで自分が持っていたコーヒーの概念が、いい意味で覆っていく

そして、もっとコーヒーのことを知りたくなる。

 お店の前を通る人たちが、出勤の途中に、子供を送った帰りに、学校から家に帰る途中に、OBROS COFEEでちょっとだけ贅沢な時間を過ごしていく。暮らしの中に、コーヒーのある風景を、OBROS COFFEEがつくっている。


__OBROS COFFEEのはじまり。

 兄の夢紘さんがコーヒーと出会ったのは、高校3年の秋、進路を決めなくてはならない時期。近所にあった個人経営のカフェにたまたま立ち寄って、カプチーノの上に描かれたラテアートを見たとき、これだ、と思ったのだそう。

 ラテアートがやりたくて、郡山市内の大手コーヒーチェーンに就職。22歳で店長を経験して、カフェのオペレーションを学んでいった。その頃には、自分でカフェを開きたいと考えるようになっていた。そこからの荻野さんのキャリアの積み方が、すごく論理的でかっこいい。

 まず、空間として魅力的なカフェをつくるためには、家具やインテリアの知識が必要だろうと考えて、郡山市内の家具屋に就職。その後、将来的に必要になるであろうエスプレッソマシンのメンテナンスや修理技術を学ぶために、関東のマシンメンテナンス会社に就職。その間、土日の休みを使って、コーヒーに対する味覚や淹れ方や知識をトレーニングして、バリスタとしての技術を身につけていった。

こんな風に、カフェを始めるために必要な技術と知識を最短ルートで習得していったんだ。そして今、バリスタとしてOBROS COFFEEに立っている。

「僕たちバリスタは、コーヒーを"おいしく"することはできません。」

 夢紘さんが学んできたバリスタとしての技術は、コーヒーを"おいしく"するためのものじゃない。コーヒー豆の品質が最も良い状態は、豆を収穫した瞬間だそうだ。そこからは劣化の一途を辿っていく。産地で採れた豆が、海を越えて輸送され、焙煎され、店舗に届き、お客様に1杯のコーヒーとして提供される。本来の豆の品質を、どれだけ落とさずに1杯のコーヒーを入れることができるか、それがバリスタの仕事の本質だ。


__OBROS COFFEEファンの人たち。

 OBROS COFFEEには、リピーターとして何度も来店するお客さんはもちろん、お店に頻繁に来れなくてもInstagramやFacebookをいつもチェックしているような、たくさんのファンがいる。彼らがファンになっていく過程が、また独特でおもしろい。

 先に書いた通り、荻野さんたちが提供するコーヒーは、個性的な味わいのものが多い。だから、口に合わなかったお客さんは2度目は来てくれない。でも、こんなコーヒーもあるんだと興味を持った人や、荻野さんとのコミュニケーションを通じてコーヒーのことをもっと知りたくなった人たちが、コアなファンになってOBROS COFFEEに通ってくる。

「みんなに好かれる味のコーヒーというよりは、この人が今後好きになるきっかけとなるコーヒーを提供できたらと考えています」

という荻野さんのスタンスは、大手コーヒーチェーンには絶対真似できない。幅広い客層ではなく、狭くて深い客層にアプローチしている。

 Instagramを使って作っているカレンダーもおもしろい。OBROS COFFEEを訪れたお客さんが、ハッシュタグ#OBROS COFFEEをつけてInstagramに投稿してくれた写真の中から毎月1枚をピックアップして、カレンダーを作っている。おしゃれなカフェをファンも一緒につくることができる、そういう余白を残している感じも心地がいい。


__これからのOBROS COFFEE。

 弟の稚季(わかき)さんは、現在OBROS COFFEEの店舗を離れて、1人でコーヒースタンドを始めた。焙煎の技術を身につけて、将来的にはOBROS COFFEEで自家焙煎の豆を販売していきたいという想いからだ。今は都内で焙煎機を借りて経験を積み、郡山のコーヒースタンドで実験的に提供している。

 数年後には、郡山に焙煎機の併設されたコーヒーストアができるかもしれないと思うと、今からわくわくする。

 OBROS COFFEEがコンセプトとして掲げているのが、提案型のコーヒーストアであり続けることだ。どんな提案かというと、まだお客さんが出会ったことのないコーヒーを提供して、居心地のいい空間をつくって、コーヒーのあるライフスタイルを発信していくことだ。

「コーヒーとパンと公園のある暮らしは、すごく豊かだと思います。生活必需品ではないけれど、暮らしに密着しているものばかりで、どれも生活を豊かにしてくれるものです。そういうものに囲まれた暮らしを提案できたらと思っています。」

 夢紘さんの描くまちのイメージが最高にかっこいい。OBROS COFFEEは、コーヒーのある暮らしをつくるためにこれからも上質なコーヒーを提供し続けていく。

OBROS COFFEE

ふくしま空間創造舎 上神田健太

 





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ふくしまの、まちをつくる人たち

福島全域を対象に、福島にはない新しい仕事にチャレンジする人たちに取材して、記事を書いています。この人たちが、福島の魅力を確実に高めています。
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