[報告]続・淺井裕介天井壁画

最高傑作が完成しました!

去る6月29日、淺井裕介は、中国での天井壁画の制作を終えました(重慶・武隆での芸術祭と制作過程については、こちらから)。わたしは現場を確認してきましたが、当方の予想をはるかに上回る、飛び抜けてすばらしい作品でした。ぜひとも肉眼で鑑賞してほしいところですが、ここではその一部を、写真をまじえて、できるかぎりお伝えします。

新作《空から大地が降ってくるぞ》が展示されているのは、この作品のために建設された「苔蘚館」(タイシェンカン)。直径10メートル、高さ15メートルの大きなドーム型の建物です。頂点には天窓が、内側の縁にはバルコニーが、それぞれ設けられていますが、それ以外の白い壁面はすべて淺井くんの支持体となりました。

描き出されたのは、動植物と人間など、さまざまな生命が入り乱れながら融合した有機物。大樹のようなフォルムが床面から立ち上がっている点で言えば、先ごろ横浜美術館で発表された《いのちの木》と同類であることは明らかです。ただ、今回の新作がそれと異なっているのは、大樹の先端が水平方向だけでなく、垂直方向にも拡張し、ドームの天頂部を通り越して、対面にまで下降しながら増殖している点にあります。まさしく、「空から大地が降ってくる」のです。ドームならではの、いや、ドームでしかなしえない、大迫力の泥絵と言えるでしょう。

写真は床面の中心点から天窓を見上げたもの。とりわけ夕暮れ時は刻々と変化する空のグラデーションが楽しめます(期せずして、ジェームズ・タレルの作品のようになりましたが、まったくの偶然です)。床面に寝転んでしばらく見上げていると、その体勢も手伝ったのでしょうか、不思議なことにこの天窓が巨大な北極星のように見えました。北辰を軸にゆっくりと回る星空と同じように、淺井くんが描いた泥の図像もまた、ぐるぐると回転しているかのようでした。

また、今回の作品のもうひとつの特徴は、泥絵の密度が異常なまでに高いこと。さまざまな色彩を密集させる点は、かねてから淺井くんの泥絵の魅力のひとつでしたが、今回の新作はとりわけディテールの描写がこれまでにないほど細かいのです。モザイク模様のように、微細な図像が凝縮していると言ってもいいでしょう(もちろん、こうした細密表現は、数多くのアシスタント・スタッフによる繊細で粘り強い労力の賜物であることは言うまでもありません)。「あ、あそこに小さな魚が泳いでいる!」というように、見れば見るほど、いろんな図像を発見できるので、いつまでも見ていたい絵画なのです。

その一方で、やはり全体の迫力に圧倒されることは、何度でも強調しておきたい、この作品の魅力です。通常のカメラの画角では到底その全体像をとらえることができないほど、この絵はとてつもなく大きい。しかも、360度、全方位から泥絵に囲まれるのです。当初は圧迫感を懸念しましたが、杞憂でした。むしろ、抱擁される実感の方が上回っていたからです。土は踏みしめるものでしたが、ここでは全身を上から包み込むものとしてある。この大いなる逆説は、並大抵のコンセプチュアル・アート以上に痛快ですが、実感としては心地よい一体感の方が勝るのです。残念ながら、この感覚は写真や動画ではとても伝えられません。現場でしか体感できないからです。

細部の凝集力と全体の抱擁力、あるいは上昇と下降、さらには螺旋運動すらも包括する小宇宙──。淺井くんはこれまでに数多くのすばらしい泥絵を制作してきましたが、今回の新作は間違いなく最高傑作と断言できます。

日本からはとんでもなく遠い僻地にありますが、わざわざ足を伸ばして一見する価値はあります。とくに、越後妻有や瀬戸内の芸術祭をひと通り楽しんだ方々には、それらの上級編として、この作品を強くおすすめします。

後日、交通手段や宿泊についての情報をお知らせする予定ですが、とりいそぎ現在判明している「武隆ランバ国際大地芸術祭2019」の情報です(芸術祭のウェブサイトは現在のところありません。細かい情報をその都度wechatで配信する、という広報のスタイルのようです)。

会期:2019年8月3日~11月3日
会場:中国重慶市武隆区仙女山国立公園
参加:淺井裕介、ジル・スタッサール、トーマス・ダンボ、クリスチャン・ボルタンスキー、松本秋則、罗中立、张超、戴丹丹、临时小组、张钊瀛、张晓影、胡人戈、龙艳芳、易兰星、邓丹、唐勇、向京、宋陈、王苡沫、戴月悦、罗舒宁、樊俊言、张晓影、田禾、柳青、时子媛、高孝午、黄玉龙ほか多数

https://cq.qq.com/zt2019/LBa/index.htm?qz_gdt=nl7rexijaaafmrbyidxa&from=timeline&isappinstalled=0



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fukuzumiren

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