脱原発国会大包囲デモ

国会議事堂を包囲した脱原発デモ。推定で20万人ほどが参加した。とりわけ国会議事堂の正面の車道には、文字どおり身動きが取れないほどの人が集まった。

多くの参加者が懐中電灯やペンライトを持ち寄ったため、群集のなかにはおびただしい数の灯りが点滅していたが、その光は原発の危険性に恐怖や不安を抱く人びとの表われだった。

だが、これまでのデモと同じように、このほかにもデモの随所ではさまざまなパフォーマンスが繰り広げられた。今回初めて見たのは、発泡スチロールを組み立てた神輿のパフォーマンス。表面の水色の模様から察すると、どうやらフクイチを模しているらしい。しかも一面はその模様によって野田首相の顔を描いているようだ。

若者たちがこの神輿を路面に置くと、子どもたちが勢いよく破壊し始め、神輿はあっという間に骨組みだけになってしまった。爆発事故を再現しているのかと思ったら、それだけではなかった。あたり一面に飛び散った発泡スチロールの残骸を、周囲の野次馬たちが拾い集め、きれいに掃除したのだ。どこかから「政府はこれくらいちゃんと除染しろ!」と野次が飛ぶ。たしかに、そうだろう。だが、これは原発の爆発事故から除染作業までの過程を再現したパフォーマンスではない。そうではなく、そのすべての過程に私たちを巻き込むことで、それが決して他人事ではなく、むしろ私たち自身の問題であることを明確に示してみせたのだ。

初出:「artscape」2012年09月01日号
会期:2012年7月29
会場:国会議事堂周辺

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