「車のドアが開かない！」
と、腐れ縁で傍若無人な人が言い出したのは、スーパーで買い物し、駐車場に戻ってきた時のことだった。

車のドアを開ける。
という行為は、私の子どもの頃だと実際のキーを鍵穴に突っ込んでいたものである。

その後、私が車の免許を取得するまで成長した頃には、リモコンのように、キーのボタンを押すことでロックが解除できるようになっていた。
当時は「おおっ」と感動したものだ。

だが今は、"スマートキー"っていうのかな、キーを所持しているだけでドアのロックを解除できたり、エンジンを始動できたりするという。
たくさん荷物を抱えていたりする時とか、非常に助かる。
便利な世の中になったものだ。

その世の中も、うまく機械が反応してくれないと、たちまち不便になるのだけれど。

車のキーが反応しないというのは、一般的に電池切れが考えられる。
キーには、ボタン電池がおさまっているはずだ。
ボタン電池。あの丸くて小さくて、幼いお子さんがいるご家庭などでは、誤って飲み込んでしまわないか心配なアレですよ。

だがヤツ曰く、
「最近、電池を変えたばかり」
なのだという。

まっ、機械が反応しなくてもキーには物理的な鍵が内蔵してあるので、手動で開けることもエンジンをかけることも可能なのだが。

新しい電池に変えたのに、キーが反応しない理由とは？
議論になった。

・電池の入れ間違え
「バカにするな」とヤツは言う。
「型式も合っているし、プラスとマイナスを間違うヘマはしない」と。
…でしょうね。

・電波障害
ネットで調べると、近くにある建造物や持っている電子機器によって影響が出ることもあるらしい。
だが、場所を移動してみたり、持ち物を変えても変化はなかった。

他にもバッテリーが上がっただの、その他諸々の事情でキーが反応しなくなるケースがあるという。

「車のディーラーさんに相談するしかないね」
という結論になった。
このコロナ禍のご時世、予約しないとディーラーさんにも行けないけれど、致し方ないよね、と思う。

ただインターネットで検索を重ねる内に、ひとつ気になる記述を見つけた。
今となっては、どこの誰かもわからない方の体験談。
某コンビニで買った電池に交換した後、同じように作動不能の状況に陥ったその方は、今度はボタン電池を同じ型式でも、別のメーカーのものに変えてみたという。

つまり、◯ナソニック・製のボタン電池に交換すると、うまく作動したというのだ！

当たり前だが、ボタン電池はいろんなメーカーのものが存在している。
現に、ヤツが購入し作動しないボタン電池は、◯芝・製だったし、体験談で最初に作動しなかった方の電池は◯田製作所・製だったそうな。

P社の電池に交換すれば、うまく作動するかも知れない！
私は、この情報に狂喜した。

「あり得ない」
ヤツは言った。「規格があるのだから、型式が合っていれば製造メーカーに関係なく、起動するはずだ」、「そんなマユツバな意見に左右されてはいけない」と。

まぁね。
取り扱い説明書やその他諸々、型式に関する記述はあっても、どこどこ製の電池が必要なんて文字は、どこにもないのである。

さらに言うなら、機械オンチの私の知識は、ヤツのはるか下に位置する。

だけど私は、試してみたかったのだ。
ディーラーさんに駆け込む前に、電池１コたかだか２８０円の出費ですむのなら、チャレンジしてみたい！

「…賭ける？」
意見がまとまらなかった私たちは、その日の夕飯を賭けることにした。そして私は、P社のボタン電池を入手したのである。

私は決してP社の回し者ではない。
伏せ字にしているのは、そのためだ。
ただ己の好奇心を充たしたかっただけなのである。

その後…。
結局私は賭けに、勝った。

P社のボタン電池に交換すると、キーのランプは赤々と反応し、車のロックも無事解除されるのであった。

賭けでせしめた、その日の晩のごはんは美味しかった。

ありがとう。
どこの誰かわからない人。あなたのブログのおかげで、キーシステムの不具合が解消できた。

不具合が解消された理由は、未だにわからない。
たまたまラッキーだったのかも知れないし、何か知らない理由があるのかも知れなかった。

好奇心をもってチャレンジすると、道が開けることもある。

今回体験した出来事は、ほんの１例に過ぎない。いろんな会社の車があり、キーシステムがある。
不具合の理由だって、千差万別だろうし。

P社の電池は買い！ということが言いたいんじゃなくて、まず電池交換の際、元の正常だった電池を捨てる前に、どこのメーカーのものか確認しておくとよいなと思う。確実だからだ。

いざという時、困らないように。

またネットで電池を入手して粗悪品を掴まされたなんて、コメントも目に入ったので、入手先にもどうぞご注意あれ。

もしもどこかで困っている、誰かのヒントになることを祈って書き残しておきたい。