11.押し付け

「もったいない」という言葉には、ある意味圧力がある。

「私の感性では非常に残念に感じる」みたいな意味だと思うが、押し付けになりやすい言葉の一つではないだろうか。

「なになに食べたことないんです」「どこどこ行ったことないんです」

「えー、もったいない」

よく耳にするやり取り。


正直、「君がどう思おうが私はそう思ってないからな、すまんな」という感情しかわかない。

なぜ「もったいない」が押し付けがましくなるのか、考えてみる。

そもそも君と私はそもそも違う生き物である。思考回路も違えば、感性も全く異なる。共通しているのは服を着て呼吸をしていることくらいである。

そうするとどこに価値を置くのかという基準も大きく異なる。例えばパソコンで文字を打つのが好きな人もいれば、手書きが好きな人もいる。これはとても大事。

経験してきたことが違うのだから、もったいないと思う基準も違う。

それをあたかも「一般的に見たら君の価値観はおかしいよ」と突きつけるような言葉が「もったいない」なのである。と、分析。

この考え方がもったいないと思うのであればそれもそれでもったいないと思う。日本語がややこしくなってきた。

「なんとなくもったいないと感じる」ということも大切だと思うが、その感情をどう伝えるのかは腕の見せ所である。

もったいなく「感じてしまった」ということは、自分にない価値観を見たということでもあるだろう。

もちろん、「もったいない」と思う場面はある。私も人間である。

その時は、もったいないという言葉はいったん引っ込める。全身全霊で押さえつけておく。そのうえで、相手のバックグラウンドをきく。

「もったいない」という言葉をたたきつけ、自分の価値観をひけらかすよりも、その人の価値観を知るほうがよっぽど楽しいと思うのだ。


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