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今回もゴールド免許更新【怖かった体験】

書くンジャーズ日曜日担当のふむふむです。


今回のテーマは怖かった体験。これだけ生きていると私の怖かった体験もいろいろありますが、冬にちなんだものをひとつ。

かれこれ20年以上前、私が大学に通っていた頃のこと。実家から離れ一人暮らしをしていた私は年末の帰省を前に熱を出してしまい、一人アパートで唸りながら寝込んでいた。そんな時、父が一人で寝ていても良くならないからと車で迎えに来るとの申し出。

悪いなあと思ったものの、確かに一人では心細いこともあり、甘えてお願いすることに。

しかし、翌日は天気が悪くなるとの予報。雪が降ってきたら山越えをするのが不安。心配するなとは言っていたけれど、本当に大丈夫なのかしら。

***

翌朝、車で実家を出た父がアパートに到着する頃にはものの見事にその予感は的中し、平地でも雪が降りだす始末。スタッドレスタイヤはもちろん履いているだろうけど、雪道の運転には慣れていないはず。

タイミング悪く熱を出してしまったなと反省していたけれど、少し休憩をした父は「雪が強くなる前に帰ろう」とすぐの出発を促され、反論もできない私は疲れているだろう父を気遣いながらも早々に出発。

かといって熱がありぼーっとしているため、助手席でうとうとと眠り込んでしまい、心配どころか役にも立っていない。

何となくラジオの声が聴こえてきて目を覚ますと、そこは既にいくつかの山を越えた後。「お父さんごめん、すっかり寝てたね」と言うと、「ちょっと怖いからまだ寝てたら」との返事。

まだ眠い目をこすると、普段の様子とは何かが違う。

有料道路の両端には妙に車が停まっていて、車線がふさがれている。そして車のスピードが随分とゆっくりに感じる。

すると、あちこちで聞こえる「ガシャーン」「ガシャーン」という音。

まるでビー玉を弾いたように車線から左へ右へと車がスリップし、次々とつぶれた車が連なっていく。

ドカ雪と凍り付いた道路、普段の道とは勝手が違うだけでなく、ぶつかって停まることがまるで当たり前の光景だった。

思わず血の気が引く。

車ってこんな簡単にぺしゃんこになるの?車が自動的にぶつかっていくよ

何じゃこの世界は。今まで当然のように考えていた車の硬さとは全く違う。

熱でやられている頭の中がさらにパニックを起こす。でも言葉に出したらお父さんがパニックになるかもしれない。

言葉を発しないように、周りの様子を見まわしながら平静を装っているものの、父にはお見通しだった。

「あのなあ、こういう時はブレーキは絶対かけちゃいけないんだよ。もちろんアクセルは踏まないで止まるか止まらないかのスピードで走り抜けるんだ。あと少しだから目つむっておけ」

いやいや、この状況を知ってしまったら目を閉じることの方が怖いよ、お父さん。

後ろの車に突っ込まれる可能性もあれば、スリップしてスピンしてる車がこっちに向かってくるかもしれない。

***

こんな日に迎えに来てもらうなんて、本当にごめんね、お父さんの大事なクラウンが廃車になっちゃうかも。そして2人で入院するかもしれないなんて。

間の悪い時に熱を出し、しかも迎えに来てもらっている私は本当に馬鹿だ。

思わず涙がこぼれそうになったが、父をこれ以上困らせるわけにはいかない。

とにかく心の声が漏れないように、ぐっと歯を食いしばり、我慢しながら祈ることに決めた。

事あるごとにガシャーンという音が聞こえる。そのたびに車から人が降りてきてそれだけでも危ない。

そんな中、父の運転する車は、こんなにゆっくりとした速さで走れるのかというくらい、音もせず器用に車と車の間をすり抜けていく。

しばらく緊迫の時間を共に過ごしていたが、だんだんと車の数が減り、道の状態も良くなり、いつのまにか有料道路を抜け、ふもとのコンビニの明かりが見えた。

その時にやっと私は地獄のような道から父が無事生還したことに気づいた。

そして、気が緩んだと同時にトイレに行きたくなり、「お父さん、そこのコンビニ寄って」と声を出した。

父も「お父さんも疲れたから、少しここで休憩していこう」と言って車を停めた。

「さっきまで熱で真っ赤な顔をしていたのに、横を見たら真っ青な顔色だったからお父さんも緊張したよ。あそこで動けなくなったら家に帰れないからな」

父も不安を抱きながら一生懸命運転していたのだろう。温かいおでんとお茶を買って食べ終わると、30分程仮眠を取った。休憩が終わると何事もなかったかのように実家へ向かった。

どれだけの時間がかかったのか全く記憶になかったが、車には一つの傷もなく、もちろん私たちも何もけがもせず家に着いた。そしてあれだけの高熱を出していた私は、すっかり平熱に戻っていた。

***

この経験から雪道の運転、車の強度、冷静な判断、この全て、どれを取ってみても私には車の運転には不向きだと気付いた。

しかし残念なことにこの出来事の3か月前に免許を取得してしまっていた私は、それからずっとペーパードライバーのまま。大金を支払って免許証という身分証明書を手に入れたという事実。

そして、先日もゴールド免許を更新してきたのだった。


というわけで、冬の雪道の怖さと、大金で身分証明書を手に入れたという怖かった体験をお伝えしました。


凍結した道の運転はノーブレーキで!これ鉄則です。





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