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世界最大のVC、Sequoiaのデザインチームは何をしているのか?

2019年3月初旬に行ったシリコンバレーで、VCのデザインサポートについて聞いたので、その気付きをまとめます。今回の訪問ではSequoia Capital(以下Sequoia)のCreative lab FounderのJames氏、同Product DesignerのAine氏を中心に10名弱のシリコンバレーVC関係者に最近のシリコンバレーにおけるデザインサポートを聞いてきました。詳細は後述しますが、Sequoiaは紆余曲折を経て現状の体制になっていると推測されるので、Sequoia以外のVCも一緒に見ることでVCにおけるデザイン機能の全体像が少し見えてくるのではないかと考えています。

Key Takeaways

・Sequoiaは現状ハンズオンのデザインサポートは実施しておらず、プロダクトデザインのディレクション、デザインチーム設立、採用支援がメイン。ただし、デザインサポートの際にはSequoiaのデータサイエンスチームと協力して事前にターゲットとするKPIをしっかり把握
・現在はもう実施していないようだが、他VCはFellowshipプログラム等で優秀なデザイナー等を確保し、投資先に送るリソースサポートを実施
・Sequoiaの投資判断においてもデザイナーがUXの観点から意見をだし、実際の投資判断に反映

Sequoia Capitalとは

皆さんご存知かと思いますが、念の為…
セコイア・キャピタル (Sequoia Capital) は、アメリカを代表するベンチャーキャピタルです。1兆5000億ドル(約183兆7178億円)あまりの資産を運用する世界最大のベンチャー・キャピタルで、シリコンバレーの父と呼ばれるドン・バレンタインによって創業され、これまでにアップルやグーグル、ヤフー、Instagramなどに投資しています。
1972年にドン・バレンタインによってカリフォルニア州のメンロパークにて設立され、現在は世界中の投資先をサポートするためにイスラエル、インド、シンガポール、中国、香港などにも拠点を持っています。
実際にSequioaのオフィスには当時の投資の詳細が下記のように掲載されており、投資家としては非常に興味深いです。また、当時を反映してかAppleもGoogleもPaypalも、確認したすべての主要投資先がCommon Stockでした。

Sequoia Capital Creative Labとは

Sequoia Capital のCreative labは2014年に設立されたSequoiaのデザイン機能で以下の目的のもと、現在はパートタイムを含む5人のデザイナーが所属しています。

Creative Labの目的
我々がデザインサポートをする際にはアプリの細かいデザインではなく、サービスのトータルエクスペリエンスにフォーカスします。ユーザージャーニーでは、世界やプロダクトにどのような変化が起きるのかを描きます。さらに、Sequoiaでは投資先が彼らのストーリー、デザイン組織、成長に必要なツールの構築をサポートします。(Webページより意訳)

また、本来のサポートメニューについては下の図のようにユーザーリサーチからデリバリーまでを担っています。

このように、2014年というVCとしてはかなり初期の段階からデザイン機能を実装した事例だと思っています。また、私が今働いているD4Vにおいても大切にしているUXデザインについてはっきりとその重要性が書かれているのは嬉しいところです。(UXデザインと日本でよく言うデザインの違いについては今度また書きたいと思っています)

現在実施しているのは、主にUXデザインディレクションと採用サポート

上記ではWebサイトに掲載されているデザインサポートを書きましたが、現状ではハンズオンのサポートは実施していないそうです。
実施している内容としては以下です。

現在のデザインサポート
内容:①
プロダクトデザインのディレクション、②デザイン組織設計、③デザイナーの採用
サポートの期間:基本的には1週間以内、短いと1-2日のディスカッションベース
対象会社数:百社以上ある投資先の中でもフォーカスは20-30社程度

デザインのディレクションはユーザーの体験に焦点を当てています。ユーザーにどのようなニーズがあって、どのような体験を届けたいのか、が論点です。また、伝えたい体験がシンプルだとそれを伝えるのも楽になるので、その点も会話の中で、重要視されていたように思います。米国は日本と比べると他民族ですし、シンプルにわかりやすいストーリーがないとやはり難しいということだと思います。(この点日本のスタートアップ環境で思うところがあるので、またnoteにします。)
また、このようなサポートをする際には場合によってはSequoiaのデータサイエンティストチームと連携しターゲットとするKPIを定めそれに基づいてサポートや助言を行うとのことでした。この点はまだ日本のVCでできているところは少ないのではないかと思っています。

③デザイナーの採用については社内のタレントチーム(Sequoia内で投資先の採用を援助するチーム)と連携して、またCreative LabのWebサイトに投資先のデザイナーの採用情報が載せて、サポートを行っています。また、どうやって優秀なデザイナーにリーチするかですが、これはスタンフォードでの授業が大いに役立っています。ここでデザインの授業をすることでスタートアップが欲する若くて優秀なデザイナーが確保できるとのことでした。日本ではまだここまでの産学連携ができてないですね。今後の課題として認識しました。

現在はやっていないデザインFellowサポート

現在のSequoiaではやっていませんが、過去SequiaはFellowshipプログラムを実施しています。下記記事を見るとEvernoteやGitHubにFellowを送り込んでいることがわかります。日本ではあまり馴染みがないFellowというシステムですが、過去のSequoiaを始め今でも複数のシリコンバレーVCがこの制度を使っています。

実際には、大学生や一部社会人から優秀な人材をMakeathonや紹介を通じで採用し、給料折半等で投資先に送り込んでいます。今も実際にやっている例として、下記のTrue Venturesや少し形は違いますがIDEO CoLabがあります。ブランド力のある強いVCが窓口なって優秀な人材をスタートアップに送り込むという非常に良い循環が生まれる良い手段だと思います。

Creative Labのデザイナーも投資判断に関わる

最後に、Creative Labのもう一つの機能として、投資判断にも関わっているという話があります。実際にボーディングメンバーに代表のJames氏が入っており、特にUXの観点からサービスについて意見を述べるとのことでした。

さらに、これはCreative Labとは関わりが無いですが、データサイエンティストチームからも代表が出ており、そちらはデータの観点から判断するとのこと・・・

ここまでSolidなチームは日本ではまだないと思いますが、サービスが多様化する中で様々なスペシャリストの意見を活かす体制を整えているSequoiaはやはり強いなと思いました。

番外編

番外編ですが、話の中ででてきた他に面白いデザイン系のサポートを実施しているVCをまとめます。

First Round Capital:100人規模のスタッフを抱え、投資先のピッチ資料の作成に特化してサポート。特にシリコンバレーにおけるストーリーとデザインの重要性を踏まえての振り切りが気持ちいいです。

Bolt:ハードウェアのデザインに特化してサポート・投資

Designer Fund:シード期によりよいデザインを持つ/目指すスタートアップに投資(今回話しが聞けなかったのが残念)


最後に

今回は、SequoiaのCreative Labの最近のデザインサポートの内容と投資への関わり方からの学びを記載しました。個人的には特にUXデザインの重要性と産学連携については学ぶところが多かったです。
少しでもお役に立てれば幸いです。
疑問・質問等あればぜひお願いします!

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