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パラドックス

猫のミイが我が家にやってきた

ぼくたちの散歩コースの公園で出会ったミイ

ミイが我が家にやってきて
ぼくたちのお散歩は
豆柴のシロと
ミイと
ぼくの3人(1人と2匹)になったんだ

ミイはいつも自由
ぷらーっと勝手にお散歩へ行って
帰ってきたら
ごろごろと寝て
毛糸の玉で遊んでる

だけど必ず
ぼくとシロがお散歩へ行くときは
一緒に行く

ぼくもシロも
そんな自由気ままなミイが大好きだ

ある日
いつものお散歩コースにあるぼくたちの
お気に入りの場所で
絵を描いているおじさんがいた

おじさんの絵をちらっとのぞいたら
ぼくたちが見ている景色と
まったく違う絵を描いていた

その絵は
おもちゃ箱だった

おもちゃ箱から
たくさんのおもちゃたちが
きらきらと溢れ出している
とってもきれいな絵

その日から
おじさんが時々現れるようになった

いつも絵を描いていて
みんな素敵な絵なんだけど
ぼくたちが見ている景色ではない

どうしていつも景色を描いていないんだろ?
ここで描くことあるかな?

ぼくは日に日に増えていくおじさんへの
質問を聞いてみることにした

あの、いつもここで絵を描いているけれど
どうして景色を描いていないんですか?

いつも景色を描いているよ

えっ?ここから見えている景色と違う

それは君が見えている景色さ
おじさんが今見えている景色はこれなんだ

今日の絵をのぞいてみたら
ジャングルだった

虹がかかる森で
雨が降って
動物たちがダンスをしていた
今にも絵から飛び出しそうなくらい楽しそう!

おじさんには、今この景色が見えているってこと?

そうだよ
今ここにいる君と
ワンちゃんと
猫ちゃんと
そしておじさんと
4人が見えている景色がまったく同じ景色って
どうすればわかる?

確かに。。。わからないかも

君が今見ているおじさんの絵と
おじさんが見えていると思って描いた絵と
まったく同じ絵って
どうすればわかる?

う〜ん。。。
どうすればわかるかな。。。

君はこの絵をどんな絵だと思ったんだい?

虹がかかっているジャングルの絵

ジャングルの絵は、今どんな天気かな?

雨だと思うよ。だって雨が描いてある
雨が光っているよ

おじさんはもともと
雨と思って描いていないんだ

おじさんにとっては光
光を描いたんだ
君がきっと虹だと思ったものも
おじさんにとっては糸
たくさんの糸が集まっているって思って描いたんだ
これは糸の橋なんだ

ぼくたちはつい
みんなが同じものを見ていると思っているけれど
違うかもしれないってこと
この絵の具は赤だね?

うん、ぼくも赤だと思う

君もおじさんも赤だと思った
だけど赤と言っても
いろいろな赤があるってわかるかい?

うん、わかるよ
濃い赤もあれば薄い赤もあるね

そうだね
赤と言っても朱色があって
紅色があって
桃色があって。。。
日本にはたくさんの色を表す言葉がある
それをみんなひとくくりで
赤と言うことができるけど
ちょっとずつ違うね
それくらいぼくたちが見ていると思っている景色は
色に溢れていて
みんながただひとつの同じものを見ている
わけではないんだ

おじさんもこの場所が好きだよ
ここに来て
今ここから見える景色を
こうして描くことがとっても楽しみなんだ

おじさんの言うとおりかもしれない

ぼくと
シロと
ミイが
いつも必ず同じものを見ているってわかる方法は
ないんだ

それくらいこの世界は
たくさんの景色がある

おじさん、
ということは
自分がこうだと思った景色が
景色に見えるってこと?

そう、そういうこと
君が見たいと思った景色が
君だけに見える景色さ

そうか
ぼくが見たいと思った景色が
ぼくだけの景色

ぼくが心に描いた景色が
ぼくの景色になるんだ

ぼくはとってもわくわくして
いつもの街を見てみた

あれ?
あんなところにすごくきらきらしているところがある
あれは何だろう?
今まであったっけ?

よし!今度はシロとミイと
あの場所へ行ってみよう!
新しいお散歩コースができるかもしれないぞ

その日ぼくが見たいつもの街は
いつもとちょっとだけ違っていた


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