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人を見てないでしょ?

最近、現場で思うのが「仕事」はできるんだけど「人を見てないよなぁ」と感じてしまう若手編集者が少なくないこと。

進めるべき作業はちゃんと把握してるし、そこに抜けや無駄はないので、たしかに仕事は進みます。だけど、仕事が進めば進むほど、何かこうさらさらと大事なものが零れ落ちていくような気がしてならない。

たとえば、打ち合わせの場で著者が「でも、それって本当にそうなのかな」と本質的な疑問を口にしたとき。

ここで編集者がピクッとするんですよね。何に対しての「ぴくっ(ひらがなにするとなんか小鳥っぽい)」なのか。鋭いところ突いてくるなぁの「ピクッ」ではなく、「え、流れ止めないで欲しいんですけど」が表れてのことなんだなぁと。本人、無意識だと思うんですが。

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まあ、これは本づくりの現場に限らずだけど(営業現場とかでも)、当事者の誰かが“違和感”を感じたことに対して、そこをちゃんと掘るっていうのがやれないというかやらないケースが多いんです。

最初から自分が想定している「正解」だとか、上司や関係者からOKをもらったものから外れることを極端に嫌がるというか恐れる。正解を書き換えたときに上司や関係者から「なんで?」って聞かれて説明するのが面倒くさいし、うまくできないからかもしれません。

A案で行こうってなってたのを、もしかしたら対案でもないC案がいいんじゃないかってなったときに「仕事を進めること」だけ考えてたら、それを生かすことができなくなってしまうわけです。

もちろん、いろんな事情で最終的には元からのA案に収束するかもしれない。予算だとかスケジュールだとかで。だけど、それでもまずは相手が「なぜ、それを言ったのか」をちゃんと聞いてみるのって大事。

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なんで大事かっていうと、最終的にその案が採用されるかどうかはともかく、相手は「自分が感じた違和感を拾ってもらった」ことによって先に進むことの抵抗が薄れるからです。

違和感を感じてるのに、それを無視して先に進められてしまうのは誰だって嫌じゃないですか。せめて違和感は受け取ってほしい。なので、その違和感がどこから来てるものなのかを確かめてみる。べつに難しいことでもなんでもなく「なんでそう思うんですか?」って聞くだけのこと。

あ、これマジックワード(いい意味での)っていってもいいぐらいです。

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人間には「心理的リアクタンス」というのがあります。リアクタンスは物理の世界ではエネルギー消費をしない疑似的な抵抗を指すことば。電気を流れにくくする電気抵抗みたいなあれですね。

で、人間も本来ならそのまま流せるのに、何かを言われたことによって流すことに抵抗を感じてしまうことがあるんです。

さっきの話でいえば、なんとなくA案でも仕方ないのかなぁ、でも違和感あるんだよなと思ってても、相手に先に「A案でいいですよね」と言われてしまうと、そのまま流せない。自発的にだったらそれでいいと思うことでも、相手に強制されたり指示されると「嫌だ」と思ってしまうのと同じです。

そういう心理的リアクタンスを回避するためにも「なんでそう思うんですか?」「なんか違和感ありそうですよね?」と相手に聞いてたしかめてみる。

もし、今の仕事を進めていく中で、なんかお互いに「違和感」を感じてるとしたら、それは仕事ばかり見てて「人をちゃんと見てない」ことから来てるのかも。