きょうのぼくはいい香り。

あさ、熱いシャワーを浴びていた。

というのは少しウソで、思えばなんだか最初から、やたらぬるいシャワーだった。お湯の設定温度は48度。首元にじっとあてていると身体全体がぽかぽかあたたかくなる、ぼくがいちばん好きな温度だ。

けれども今朝は、そのお湯は、どういうわけだかぬるかった。さすがにぼくも不惑を超えたいい大人なので、いまさらお湯のぬるさくらいで動じるわけもない。こういう場合はちょっと待てば本格的なお湯に切り替わるものだし、いざとなったら設定温度を上げればよろしい。

ところが今朝のシャワーはぬるいだけにとどまらず、水圧・水量もちょろちょろだったのである。

ただならぬ水圧・水量に気づいたとき、ぼくの頭髪はシャンプーまみれだった。身体のほうにも粘液状のボディソープが塗布されまくっていた。これらの泡や石鹸を大量のお湯できれいに洗い流し、ようやくすっきりをゲットできる。それがシャワータイムというものである。なのにシャワーの水圧・水量はどんどん減じてゆく。侘び寂びの境地に達してゆく。

非常の事態を察知したぼくは洗面器を取り出し、いたずらに流れるシャワーのお湯をすべて貯蓄しはじめた。これは水圧の異常などではなく、おそらく断水レベルの非常事態なのだ。フローよりもストック。節約とサバイバルの基本である。

結果、洗面器半分くらいのところで水は止まり、泡まみれのぼくとわずかな水だけが残された。

この水で、どう全身の泡を洗い流すか。どんな順番で水を使っていくか。

まず、どうしても避けられないのは頭髪の洗浄だ。ただでさえ薄毛が気になる家系と年齢。シャンプーを洗い流さぬまま一日を過ごすなんてのは恐ろしすぎるし、身体の泡を洗い流した汚らしい残り湯で頭髪を洗うのもゾッとする。それにほら、西洋人は身体に付着した泡をちゃんと洗い流さないまま、むしろその香りをたのしむように風呂を終えるというではないか。ぼくもきょうは西洋人になろう。頭だけを洗い流して、その残り湯でざっと身体を流して、セボンなシャボンの香りがするハイカラな日本人として過ごそう。


ということで、もし本日ぼくを見かけて、ちょっとでもいい匂いがしたならば、それは落とされなかったボディソープの匂いであり、断水の匂いでございます。はー、つかれた。

椅子の上にも3円。
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古賀史健

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