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土地と音楽が結びつくとき

3年ほど前、英国はマンチェスターに旅行したときのこと。

市の中心部に、観光案内所みたいな、パブリックな施設があるんですね。地図とか路線図とかが置いてあって、インフォメーション・デスクでお姉さんたちが対応してて、ちょっとした売店が併設されていて。

すると売店に置いてある「マンチェスター土産」の数々が、まあすごいんですよ。オアシス、スミス、ジョイ・ディヴィジョン、ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズといった「おらが町のバンドたち」のグッズばかりが売ってるんです。

リバプール土産として、ビートルズ・グッズが売ってるのはわかるし、行く前から予想できたことでした。でも、マンチェスター土産まで、こうも地元バンドで彩られてるとは、予想もしなかったんですよねえ。

しかも街には、ふつうにハッピー・マンデーズとかストーン・ローゼズとかのTシャツを着たおじさんが歩いてて。

なんか、この「土地」と音楽が結びついた感覚、しかもそれが観光資源になる感覚って、日本にはなかなかないよなあ、と感心しました。もちろん、ぼくの地元である福岡の「めんたいロック」みたいに、土地と深く結びついた音楽シーンはあるんだけど、福岡市の観光案内所でサンハウスのマグカップが売ってるとか、ちょっとありえない話ですからね。


と、そこまで考えて唯一ともいえる例外を思い出しました。

湘南とサザンオールスターズの関係です。たとえば茅ヶ崎市の観光案内所にサザンのマグカップが売ってたら、けっこうな数の人たちが喜ぶでしょうし、買うでしょう。それを求めて訪れる人だって、たくさんいそうです。

厳密な意味でのリバプール・サウンドやマンチェスター・サウンドが存在しないように、湘南サウンドなるものは存在しないんだけど、土地と音楽が深く結びついている。国民的なバンドでありながら、リバプールの、マンチェスターの、そして湘南の、いわば田舎者のバンドでもある。

ロンドンやら東京へのあこがれと反発が、国民的人気の素地をつくっている。そんなふうにも考えられそうです。

最近、自分が地方出身者であることを歓迎する機会が増えてきたなあ。