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誰から頼まれたわけでもないもの。

毎日書くことはつらくないのか。

note の週日更新をはじめて3年と10か月。何度か訊かれたことがあり、何度も自分に問いかけたことのある話だ。つらいなあ、と思うこともあるはずだけど、へっちゃらだよ、と思っている時間のほうが多い気がする。

へっちゃらの理由を考えてみると、ひとつにこれは原稿料をいただくタイプの「仕事」ではない、という点が非常におおきい。いちおうは「もの書き」を職業としている人間なので、お仕事としての原稿についてぼくは、一定のハードルを求めているつもりだ。最低でもこの要素とこの要素とこの要素が揃っていなければ、それはお金を払って読んでいただく文章になりえていない、という基準が——うまく言語化できていないところも含めて——ぼくにはある。

その点、毎日ここに書いている文章は、なんにも達していない。クリアするつもりさえ希薄だ。だって、誰から頼まれたわけでもなく書いているものなのだから。


フリーになってからの数年間、若いころのぼくは「一度も営業したことがない自分」を、どこか誇りのように思っていた。放っておけば、依頼が舞い込む。ひとつの仕事が、みっつのオファーにつながる。そんな自分のモテっぷりを、自慢のように語っていた。

けれどもそれは「頼まれ仕事」ばかりに時間を取られているということでもあり、少しずつ磨耗する自分を実感するようになった。明石家さんまさんの名言「いい女ちゅうのは、『都合』のいい女なんや」を、職業人としてのおれじゃねえか、と身震いするようになった。頼まれ仕事が殺到するフリーランスは、早い話が「便利に使われている」だけなのだ。

いま、ぼくの取り組んでいる仕事のほとんどは「誰から頼まれたわけでもなく」やっているものだ。この note という場だって、そう。


誰から頼まれたわけでもなくやりたいことが、自分のなかにあるか。

誰から頼まれたわけでもなく続けていることが、自分の毎日にあるか。

そしてそれを「仕事」に変換できているか。


誰から頼まれたわけでもないもののなかに、ほんとうの「おもしろ」があるのだと、ぼくは思っている。

鬼にカネボウ。
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古賀史健

ライター。バトンズ代表。著書・共著「嫌われる勇気」「古賀史健がまとめた糸井重里のこと。」「20歳の自分に受けさせたい文章講義」など。週日更新しています。http://www.batons.jp

古賀史健(2018)

古賀史健の note、2018年分です。
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