あたらしいスニーカーを買った話。

いやらしいヘンタイさんのお話だと思わずに聞いてほしい。

むかしからぼくは、女の子はいいなあと思いながら生きてきた。美術品を鑑賞するように「いいなあ」と思っていたわけではない。いや、その「いいなあ」もあるんだけど、それ以上に思うのは「いろんな恰好ができて、いいなあ」である。スカートを穿くだとか、ストッキングを穿くだとか、ヒールの高い靴を履くだとか、成人男子が真似をしたらヘンタイさん扱いされることの多くを、女の子たちはたのしんでいる。それはぼくにとって、とっても「いいなあ」なことなのだ。スカートを穿くってどんな感じなんだろう。ストッキングってどんな感じなんだろう。ヒールの高い靴で歩く面倒くささと誇らしさって、どんな感じなんだろう。いいなあ、知りたいなあ、と思う。


似たようなあこがれとして、テニスシューズとバスケットシューズがあった。高校生のころ、テニス部の連中は通学にもテニスシューズを履き、バスケ部の連中はバッシュを履いていた。サッカー部である自分がそれを履くのは、なんとなく憚られるというか、ニセモノ感・バッタ感のある行為に思え、遠くから「いいなあ」と思っていた。靴底にイボイボのついたサッカーシューズは、とても通学靴として使えないのだ。

そして先週だったか先々週だったか、生まれてはじめてスケートシューズなるものを買ってみた。光GENJIが履いていたアレではなく、スケボーをする兄ちゃんたちが履く、それ用のシューズだ。そんなものがあるなんて、この歳になるまで知らなかった。別にスケボーをはじめようとしているのではない。むしろぼくは、スケボー的ストリートカルチャーからもっとも縁遠いおっさんだ。ただ通勤靴として、日用の靴として、主にファッション的な好感から購入したのである。「スケボー用の靴? そんなのただのスニーカーだろ」などとメーカーの商魂を若干あざわらいながら。

ところがこれ、ものすっごく履き心地がいいのだ。

吸いつくようなフィット感、と言えばいいのだろうか。踵のあたりをがっちりホールドしながら決して窮屈にならないこの感じ、歩いててまるで疲れないこの感じ。普段からスニーカーばかり履いてるぼくにとっても、あきらかに初体験な密着感がある。見た目は思いっきりふつうのスニーカーであるにも関わらず、だ。

いったいどういうカラクリが隠されているのか。調べたところ、足の甲に接するベロ部分にクッション素材を仕込み、ソールとインソールにそれぞれしっかりした素材を用いているのだという。つまり、上と下から足をやさしく包み込み、平々凡々たるぼくの歩み、その衝撃を吸収しているのだ。


もしもファッション的に好みでなければ、ぼくはスケボー靴など見向きもしなかっただろう。そしてこのフィット感を知ることのないまま、スニーカーを語っていただろう。

世のなかは広い。おれの認知はせまい。

スケボー靴、おすすめです。

郷に入ってはひろみに従え。
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古賀史健

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