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ボールペンをめぐる気づきと反省。

ジェットストリームの時代は長かった。

ボールペンといえば、三菱鉛筆ジェットストリーム。太いも細いも黒赤青も、みんなジェットストリーム。抜群の書き味に、豊富なラインナップ。打ち合わせに参加するみんながジェットストリームを取り出し、お互いに「やっぱ、これになるよねー」と言い合える安心感。

そんなウラジーミル・プーチンばりの長期政権に風穴を開けたのは、パイロットが満を持して送り出した、フリクション・シリーズだった。

こすれば消える、魔法のボールペン。もう、推敲・朱入れ用につくったとしか思えない、要するにおれのために企画し、おれのために試行錯誤を重ね、おれのために製品化してくれたとしか思えない、ライターの必需品だ。いまでも推敲や朱入れには、フリクションが大活躍している。

しかし、いかなフリクションとはいえ重大な欠点がある。こすれば消える、という商品特性上、熱に弱くて正式な書類に使えない。大事なメモに使えない。夏の車のなかに手帳を入れていたら、フリクションで書いた文字がぜんぶ消えた、という話も耳にした。やはりジェットストリームなのか。推敲や朱入れ以外には、あのペンを使うしかないのか。パイロットから三菱鉛筆に戻るのか。

いや、おれのために魔法のボールペン・フリクションを生み出してくれたパイロットを、もう一度信じてみよう。ぼくは同社がジェットストリームと対抗するように発売した低摩擦ボールペン、アクロボールを使ってみた。


すごかった。

つるつるの、すらすらだった。

ペンの使い心地は人それぞれに好悪が激しくわかれるものだけど、少なくともぼくにとって、世界でいちばん書きやすいボールペンはこれだと思った。


ただしよくないのは、こういうときぼくはすぐに興奮することだ。予備のペンと替え芯を大量にオーダーし、そればかりか会社のひとたちにまで「これは最高にすばらしいペンだから、ぜひ使うんだ!」と配ってしまうことだ。


……ボールペンくらい、自分で選びたいよね。

ぼくも、こうやって「おれに最高のペン」を探す道のり自体が、たのしかったんだもの。

糸井さんのこのツイートを読んで、うっすらそうなりつつあるかもしれぬ自分に、ぎくり反省したのでした。