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風邪薬とカレーライス。

もう1000回以上も書いているのだ、「またか」と言わず聞いてほしい。

風邪を引いた。熱が出た。一昨日の晩に鼻が止まらなくなり、昨日の朝から咳が止まらなくなった。総合感冒薬のパッケージに記載されている風邪の諸症状、すべてが発現した。今朝になって熱は引いたものの、まだ咳は出ているし、隙あらば復活してやろう、もうひと暴れしてやろう、という風邪の敗残兵が肺の奥で身構えているような感覚が確実にある。

以前、なにかのバラエティっぽいテレビ番組で、日本の薬局に訪れたイギリス人女性がインタビューに答えていた。彼女は日本の風邪薬を見て「ありえない。こんなの、わたしたちの国では誰も買わない」とおどろいていた。

配合された有効成分の話ではない。あるいは葛根湯に代表される漢方薬を指し示してのおどろきでもない。彼女が問題にしていたのは、風邪薬のパッケージである。

たとえば風邪薬のパッケージに、かわいらしい象さんのイラストが描かれている。カプセルを擬人化したキャラクターが描かれている。マスクをした男性、喉をおさえる女性、くしゃみをする子どもなどの絵が、描かれている。彼女によると、イギリスでこのようなパッケージを使ったならば、間違いなく「子ども用」との判定を受ける。それは医薬品としての信頼性、頼り強さを著しく損なうものであり、風邪でつらいときにこんなものを手に取るイギリス人はひとりもいないだろう。信頼第一の医薬品は、できるだけ硬質で、シンプルで、威厳たっぷりなルックスであることが望ましい。彼女は、そんなことを言っていた。


言われてみればたしかに、「カレーの王子さま」のパッケージに描かれたメルヘンチックな王子さまのイラストを見たとき、ぼくらは「カレーの王子さま」のカレー性を舐めてかかる。

一方で「ゴーゴーカレー」のパッケージに描かれたやたらとリアルなゴリラは、なぜゴリラがそこにいるのかはともかくとして、いかにも乱暴な力強さを感じさせ、パンチの効いた味を想起させる。


いや、ぼくはそのイギリス人女性が自説を語るテレビ番組を見ながら「イラストやキャラクターをふんだんに使ったこっちのほうが豊かなんだよ」と毒づく気持ちもあったのだけど、カレーだとか、コーヒーだとか、あるいは高級なお酒だとか、かわいいイラストが入ることで台なしになってしまう商品は確実にあるよなあ、と書きながら理解できたのでした。

さて。葛根湯を飲もう。