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「知ってる」は危ない。

「ああ、知ってるよ、それは」
「はいはい、あれですよね」
「それくらい、知ってるに決まってるじゃないですか」


ぼくもみんなも、かんたんにそう言う。

まあ、実際知っているのだろうし、知りすぎてるくらいだ。経営とはなにか。ヒット商品のつくり方。モテる男の条件。おいしいチャーハンの隠し味。小津安二郎の代表作。薩長同盟の真実。よのなかは「答え」にあふれているし、誰もがたくさんの答えを知っている。

けれどもぼくは、思うのだ。

「それ、知ってるよ」と「それ、考えたことあるよ」のあいだには天と地ほどの差がある。そして「知ってるだけ」ではなんの役にも立たないと。


おいしいカレーのつくり方でも黒澤明の代表作でも、「それ」についてちゃんと考えたことのある人は、つよい。

そこで導き出した答えの妥当性はともかく、「それ」についてもっとたくさんの情報を集め、あっちやこっちに転がし、ときに思わぬ方向へと発展させていくことができる。


なんだかねー、ぼくもみんなもいろんなことを「知ってる」と思いすぎじゃない? と考えるわけですよ。「知りません」って開きなおるんじゃなくって、どうにか「考えたことある」にもっていかないとなー、って。

少なくとも原稿は「考えたことある」ことしか書けませんからね。