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あのころ見た近未来都市

上京して、はじめて住んだ土地は高田馬場、早稲田松竹の近くだった。

そして諸般の事情から、3か月ほどで転居することになった。土地勘もなにもないままに地下鉄の路線図から選んだ引越先は、豊島区の千川という住宅街だった。

不動産屋に案内されるまま「あ、じゃあここでいいっすー」と契約し、引越した町。駅も近いし、二階建てのスーパーもあるし、そば屋もあればリサイクルショップもある。悪くない町だと思ったのもつかの間、一週間もしないうちにぼくは、その異様なる光景に驚きの声をあげた。


「ここ、近未来都市じゃね?」

別にハイテクノロジーな施設があったわけではない。ただ、信じられないくらいにお年寄りばかりの町だったのだ。うわーっ。ぼくは思った。何十年後かにやってくるらしい超高齢化社会って、こんな感じなのか。こんなに色に乏しい世のなかなのか。これ、かなり嫌だぞ。……典型的な学生街から引越したこともあり、そのギャップはかなり衝撃的だったのだ。


そしていま、たぶん超高齢化社会といえる時代に突入し、ぼくはふつうに町を歩いてる。お年寄りだらけだと思うこともなく、若者がいないと思うこともなく、色が足りないと思うこともなく、ふつうに歩いている。あのころのぼくがいまの町を見たら、どんなリアクションをするのだろう。

ゆっくりした変化には、自分がそこの一員となった風景の変化には、なかなか気づきにくいものなんだろうなあ。