銀行に行きたくないの、ぼくだけですか。

なぜだろう、なぜかしら。

きょうはやることがいっぱいある。いや、そりゃあ毎日やることだらけの身ではあるのだけれど、仕事とは別に、やることがいっぱいある。いやいや、たぶんこれを「仕事とは別」のことと思っている時点でぼくはいろいろ社会人失格なのだろうけど、本日7月10日は税やら保険やらの納付期限が重なっている日なのだ。銀行に出向いて、あれやこれやの納付手続を完遂せねばならぬ、最終期限なのだ。

さて、ここにひとつ問題点がある。別にこれらのお金は「7月10日に納めなさい」と決められているわけではない。なるべく正確なことを言うならば「7月10日までに納めなさい」のお金でしかない。先週納めてもよかったし、先々週納めてもよかったわけだ。納付書は、もうできていたのだから。

けれどもきょう、朝からこうやってドタバタしているのは、「いまは原稿に忙しいから、まずは原稿を終わらせて、いろんなことを片づけてから7月10日に納めよう」と考えたバカな男が先週や先々週にいた、しかもそれがおれだった、というだけの話だ。そしてここで、冒頭のふた言に戻る。すなわち「なぜだろう、なぜかしら」と。


どうやらぼくは、銀行に行くのが歯医者に行くのと同じくらいに苦手なのだ。嫌いなのだ。

あの順番待ちカードを受け取り、いろんな色の納付書みたいなやつから正しい種類を選んだのち、納める金額を書き込み、たいてい一度は書き損ね、またあらたな用紙に書き込み、ぼんやり椅子に座って順番を待ちつつも、「これでいいんだよな。なにか記入漏れとかミスとかないよな」などと不安に駆られ、呼び出し番号のカウントダウンを合格発表の受験生ばりの真剣さで眺め、窓口に用紙と通帳を提出し、ここでもたいてい一度は記入漏れを指摘され、修正後の納付手続きをぼんやり待つあの時間が、あの間違いを許さない空気が、ほんとうに苦手なのだ。


歯医者が苦手な理由については、もう何年も前に答えが出ている。

痛みが怖いわけじゃない。そこは白髪染め愛好家。もうそんな歳じゃないし、そもそも最近の歯医者さんはみんなが考えているほどには痛くない。ただ、歯医者さんは「なんか怒られる気がする」のだ。無精や不摂生を怒られ、遅きに失した来院タイミングを怒られ、磨きかたを怒られ、段々とおれという人間そのものを怒られているような気がしてくるのだ。

銀行や役所も怒られそうな気がしてるのかなあ。だとすればそれは、ぜったいに違うはずなんだけどなあ。

これから銀行、行ってきます。

出る釘は浮かれる。
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古賀史健