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自分へのご褒美は遠い場所に。

ああ、それほどにも忙しくなったんだなあ、と感慨深く思う。

おととい、3泊4日の日程でホテルを予約した。こう書くと「ついにホテルで缶詰か!」と笑う人も多いだろうけど、犬がやってきてからのぼくは、たぶん一度もホテル缶詰をしていない。なにも仕事をせず、犬とあそぶばかりの旅行として、ホテルを予約したのだ。ちなみにホテルや旅館に泊まり込んで執筆する作業、「旅館に詰める」の略語として「館詰」が本来の表記だと言われている。

といって、旅行に出かけられるような余裕ができたはずもなく、むしろ現在レッドゾーンに突入しているところなので、今月の旅行ができないのはもちろん、来月や再来月というわけにもいかない。慎重を期してぼくは、5月の連休明けに予約をとった。さすがに大型連休が終わったころには仕事も落ち着いているだろう。気候としても行楽にはいちばんの時期で、懸念材料があるとすれば雨だけなのだけど、そこはもう運を天にまかせるしかない。

ぼくにはどうも、こうして「仕事が忙しくなると、数ヶ月後に旅行の予定を入れる」という悪癖がある。平凡なひと言でいえば「自分へのご褒美」だ。

かつて何度か、物品による「自分へのご褒美」を試した。

腕時計を買ってみたり、鞄を買ってみたり、コートを買ったことも、たしかあった。けれども不思議なもので、ほんとうに忙しいときの物欲は、さほどニンジン効果を発揮してくれない。むしろインターネットで最安値ショップを検索するなどの散漫力をかきたて、仕事の効率は低下する一方だ。

ということでぼくはいつも、旅行の予約を入れる。普段せつない締切に追われてばかりの自分に、うれしい締切を設定してあげるのだ。こころの予定表に「たのしみ」をひとつ、書き込んであげるのだ。


念のために言っておくと、「整体の予約を入れる」とか「散髪の予約を入れる」とか「飲み会の予約を入れる」とかいうのは、物品と同様ほとんどニンジン効果を発揮しない。

予約はやはり、日常からできるだけ遠い場所に入れたほうがいいのだ。