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ペンギンのお尻

ペンギンはかわいい。

でも、そのおしりから排泄されるものは、鼻が曲がるほどくさい。それはそうだろう、彼らの主食は生魚なのだ。咀嚼することもせず、ほとんど丸呑みのように飲み込んだ生魚が、消化のよろしくない状態で排泄される。くさいに決まっているのだ。

この事実をぼくは、とあるペンギン放し飼いスペースで彼らと遭遇するまで、想像すらしてこなかった。犬や猫、ウサギやインコを飼うとなれば、匂い問題については考える。けれどもペンギンについては「あいつら飼えたらかわいいだろうなあ」までしか想像が膨らまず、まさか未消化の腐った生魚を排泄するとは思いもしなかった。

匂いは、写真やテレビじゃ伝わらない。

匂いだけは、現場にいないとわからない。

匂いってすごいなあ、とあらためて感心する。

と同時に、匂いが届くような文章が書けたらすごいだろうなあ、とも思う。ペンギンのお尻のあの臭さを、あの空気を、その粒を、まるごとそっくり言葉にできたらすごいなあ、と。