見出し画像

ヒーローはどこにいる?

ギターヒーロー、ということばはもう死語に近いのかしら。

きょうはエリック・クラプトンの武道館公演最終日に行ってきました。70歳になったらツアーを辞める、と宣言したうえで「最後の日本公演」と謳って来日したのが2年前。今回、前言を撤回するかたちで71歳のクラプトンが来日したわけです。

2年前のローリング・ストーンズ、去年のポール・マッカートニー、そして今年の4月になって一挙に来日したボブ・ディラン、ブライアン・ウィルソン、エリック・クラプトン。みんなぼくが生まれるずっと前から第一線で活躍してきたリビング・レジェンド。立っているだけ、座っているだけ、スポットライトが当たるだけで特別な輝きを放つ、正真正銘のヒーローです。


でも、なんて言えばいいのかなあ。

いまの時代のヒーローってどこにいるんだろう? と思うことがときどきあるんですよ。それってフジロックやサマーソニックのヘッドライナーをつとめるようなミュージシャンじゃなくって、ひょっとしたらザッカーバーグとかジェフ・ベゾスとか、そういうひとたちなのかもしれないなあ。そしてレジェンド枠にスティーブ・ジョブズが鎮座しているのかもなあ、と。

経営者がだんだんとロック・スターに近づいて、ロック・スターがだんだんと経営者に近づいていく。そういう時代なのかもしれないですね。

アップルもアマゾンもフェイスブックも、きわめてロック的な「アンチ・エスタブリッシュメント」を貫いていて、しかも若いひとたちのライフスタイルに直接的な変革をもたらしている。商業化された「ロック・コンサート」よりもずっとスリリングでエキサイティングな日常をもたらしている。


バンドを組むように起業して、対バンするように切磋琢磨して、ニューアルバムを発表するように新サービスをローンチする。それぞれにファンがついて、起業家というロッカーたちの一挙手一投足にファンが酔う。起業って、もしかしたらサブカルチャー化しているのかもしれないし、新興ビジネスメディアは音楽誌やプロレス雑誌のノウハウを持ち込むといいのかもしれないですね。


ぼくはやっぱり、ステージの上に立つ本物のミュージシャンを「ヒーロー」としてあこがれていたいのだけど。

クラプトン、まだまだまぶしすぎるほどに完璧なヒーローでしたよ。