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首を痛めて思い出したこと。

おそらく寝違えてしまったのだろう。

数日前から、首が痛い。たかが首を痛めたくらいでこんなにも、とおどろいてしまうが、てきめんに調子を崩している。けれどもまあ、首をくくれば命を落とすのだし、脳からの命令はぜんぶ首を経由して全身に伝わっているわけだし、おおきな頭を支えているのだって首なのだし、社長にそう告げられて失職の憂き目に遭うことばも首なのだ。うん、首は大事だ。

にもかかわらず、人間も犬猫もほかの動物たちも、首はかなりぷよぷよだ。亀の甲羅みたいな、アルマジロの背中みたいな、あるいは指先の爪みたいな、なんらかの自衛策を講じた進化があってもいいような気がするものの、ぼくらの首は笑っちゃうほどガラ空きだ。


エヴァンゲリオンをはじめて見たとき、初号機とかなんとかのロボットに、妙なセクシーさを感じた。この感覚はなんだろう、と不思議だったのだけど、やがてその原因が「首」にあることに気がついた。鉄人28号やガンダムには、首がない。エヴァンゲリオンには、首がある。けっこう長い、ぐにゃぐにゃの首がある。


それから数年後、知り合ったマンガ家の方に、男女の描き分けについて話を伺ったことがある。マンガ家さんたちは男女の顔を、どう描き分けているのか。髪型、眉毛、まつげまでは素人目にもわかる。それでもきっと、ほかの部分でプロは描き分けているはずだ。ぜひ教えてほしい。


「首かな」


マンガ家さんはそう言った。首を細めに、そして少し長めに描けば、それだけで女性らしさが出るのだと。訊かれるまでそんなに意識していなかったけれど、無意識のうちに首を長めに細く、描いていますねと。

そういえばエヴァンゲリオンは、主人公の男の子も、首が長くて細い。彼の内面の不安定さは、そういうところを通じても、表現されているのかもしれない。


今後ますます、美男美女の条件に「首の長さ」が加わるような気がする。