アイデアとかイノヴェイションとか。

最近「エアコンはつけっぱなしのほうがお得」という話をよく聞く。

いろいろ調べてみると「そういう場面もあるけれど、だからって24時間つけっぱなしのほうがいいわけじゃない」あたりが正解のようだが、最初にハイブリッド車が出てきたときも同じ理屈を聞かされ、妙に納得したおぼえがある。つまり、自動車はその「初動」の段階にこそもっともエネルギーを擁するのであって、そこを電動にしてしまえばガソリン消費量は大幅に軽減するのだ、という理屈だ。エアコンつけっぱなし説に信憑性を与えているのも、きっと「初動がたいへん」の妙な納得感だと思われる。

クリエイティブ系でいうとこれは「0から1を生む」まわりの言説に近い。

頻繁に語られ、多くの人びとが納得するところによると、「0から1を生む」は天才たちの所業であり、それこそがイノヴェイションであり、価値である。他方、「1を100にする」のはこれといった才覚をもたない凡人たちによる商いであり、なんらほめられたことではない。


思わずうんうんそのとおりだ、と納得したくなるこの議論、ほんとうにほんとうなのだろうか?

仕事用の長い原稿を書いていていつも思うのは、「1を100にする」ことの困難さだ。「こうなればおもしろいな」「こっちからこんなふうに語れば、最高だぞ」みたいなアイデア、漠とした理想を思いつくのは、そんなにむずかしいことではない。いや、ほんとはむずかしいのだけど、少なくとも歯を食いしばったり、汗をかいたりするような話ではない。最初に思いつく「あっ」は、かなり瞬間的な気配であって、その気配を見逃すことなくキャッチできれば、自分なりの「0から1を生む」ことはできる。

ところが、そこで生まれた「1らしきもの」を「100」にしていこうとしたとき、つまりはメモ帳のアイデアを完成原稿に発展させていこうとしたとき、とてつもない困難に直面する。アニメのような「夢のロボット」を思いつくことと、それを実際に設計・製造するのは全然違う話なのだ。


つまりね。あんまり「0から1を」とか「1を100に」とかを分けないで、「0から1」に価値を置きすぎず、「1を100に」を蔑みすぎず、ほんとうにあたらしいものをつくるのはいつだって「0から100」なんだと思っていたほうがいいんじゃないでしょうか。それがあって、ようやく「アイデア」や「イノヴェイション」と呼べるんじゃないでしょうか。


どうやったって「100」に発展しえない、ダメな「0から1」っていっぱいありますからね。自説(0→1)にこだわりすぎた結果、50のアウトプットにしか至らなかった原稿もたくさんあるし。

最近「0から1」こそが大事なんだ的なことば、少し疑いながら接するようにしています。それも大事だけど、同じくらい大事なこともあるよ、とね。

出る釘は浮かれる。
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古賀史健

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