豚の、不当なる低評価について考える。
きのう、久しぶりに焼肉を食べた。
一夜明け、夕方になったいまも胃もたれがする。ついに自分の胃袋も大人仕様になってきたか。と思ったらなんのことはない。きょうの昼ごはんにミックスフライ定食を食べていたのだった。しかも味噌汁にプラス100円してとん汁に変更して。
思えばぼくは、とん汁が好きだ。おいしいとん汁さえあれば、ほかにおかずはいらない。これは質素でも清貧でもなんでもなく、要するにとん汁は、鍋料理なのだ。少なくともぼくのなかでは。根菜のたっぷり入った、味噌仕立ての鍋料理。それをおおきめの茶碗によそって食べている。寄せ鍋やちゃんこ鍋と、なんら変わるところのないメイン料理だ。
それではなぜ、とん汁の地位は低いのだろうか。世間的な評価はよくわからないから保留するにしても、どうしてぼくは「好物は、とん汁です」と表明することに一定の躊躇を感じるのだろうか。
福岡に住んでいたとき、とん汁のことを「ぶた汁」と呼んでいた。
肉まんは「ぶたまん」と呼び、とん汁は「ぶた汁」と呼ぶ。たぶん、西日本全体はそうだろう。
この、「ぶた汁」ということばの響きが、ぼくのなかでのとん汁評価を低めているのではないだろうか。
いや、そもそもなぜ「ぶた」にはよくないイメージがつきまとうのか。
言うほど太ってるわけでもなく、言うほど醜いわけでもなく、あんなにおいしいぶたなのに、どうしてこうも蔑まれるのか。
ハゲ、だからだろうな。
書きながらいま、思った。お肉屋さんで横に並ぶ牛や鶏には、りっぱな毛があり羽がある。一方、遠目に眺める豚たちは、いかにもヌードっぽい身体で、しかも無駄毛のような毛がぴんぴん生えている。
あの、うっすらとつるつるした丸裸な感じが、ハダカデバネズミっぽい薄毛さが、そして鼻づまりの叫び声が、なんともいえない醜悪なイメージを形成するのだろうな。
……薄毛、小太り、鼻づまり。
豚のことを考えているうちに、だんだん自分のことを考えているような気分になってきました。