ドラえもんの夢、おとこの子の夢
(昨日からの続き)
「四次元ポケット、つくります」
そんな大見得を切って現れた Sumally の山本憲資さん。ちなみに山本さんといえば、毎晩のようにどこかで極上にうまいメシを食い、夏フェスはじめライブにはガンガンと出かけ、つい最近もイギリスのディズマランドで遊んでおられた「いったい、いつ仕事してるんだ?」な、うらやま人(びと)である。
「ぼくもちゃんと仕事してるんすよ」
待ち合わせたカフェで、山本さんはそんなふうに笑うと、おもむろに iPhone を取り出す。あ、そうか。iPhone ひとつでプレゼンできちゃうんだ。どうでもいいところに感心しつつ聞いた新サービスのプレゼンは、正味10分もなかったと思う。それくらい、シンプルでわかりやすいサービスなのだ。
(1)アプリからボックスを取り寄せる。
(2)ボックスに預けたいモノを詰めて発送。
(3)倉庫に到着後、モノの写真が撮られ、アプリ上に一覧化。
(4)ワンクリックで必要なモノを取り出せ(取り寄せ)る。
俄然興味を持ったぼくは、本日の本題であるだろう話を切り出した。
「たしかに、おもしろい。協力しますよ。そうだなあ、ぼくが紹介できそうな媒体といえば、あそこと、あそこと……」
「あっ。それとも誰かと対談してもらって、その原稿をぼくがまとめましょうかね。だったら Web メディアのほうがいいだろうから……」
山本さんは、きょとんとしている。そして人懐っこい笑顔で、こう言った。
「いや、そんなんじゃないんです。きょうは古賀さんに会いたかったし、こうやってお話ししたかっただけなんで」
……えええええ? 心底おどろいた。ここ数年、あるいはここ10年、ぼくのところに会いにくる人といえばほとんどが「書いてくれ」か「紹介してくれ」の人たちばかりだったので、そして自分もそれを仕事にしてきたので、てっきりそっちの話かと思っていたのだ。
「じゃ、とりあえずローンチされたらブログに書きます」
わけもわからずそう言って、山本さんと別れた。こんどはうまいもん食いにいきましょうね、と。
さて。それでこの四次元ポケットサービス「Sumally Pocket」を、どう紹介しよう。迷っていたある日、本家本元の『ドラえもん』に、そのまんまの話を見つけた。
(『ドラえもん(20)』 藤子・F・不二雄(著)小学館)
ぼくがいろいろ考えていた説明のことばよりも、この数ページのほうがずっと端的に「Sumally Pocket」のおもしろさをあらわしている。
どうしても捨てられない荷物を「写真」にしてしまい、その写真に触れると、荷物を取り出すことができる。片づけがラクになるのはもちろん、モノの所有がそのまま「おれカタログ」の編集につながるような、男性的収集癖を刺激する画期的なサービスだ。そう、これは断捨離的な「片づけ」サービスとは対極の、「所有」のよろこびを満たしていくサービスなのだ。きっと使えば使うほどおもしろくなるだろう。
こんな未来をマンガにしていた藤子・F・不二雄さんも、それをやっちゃった山本さんもすごいし、この未来を成立させた最大のキーワードが「物流」だというところも、最高におもしろい。
未来をつくるヒント、教えてもらった気がします。山本さん、こんどはうまいもん食いにいきましょうね。