あれはいつくらいのころからだろうか。

たぶんアラウンド三十歳あたりだったと記憶している。まわりから「最近、肉よりも魚がおいしくってさあ」という声が聞こえるようになってきた。あるいは焼肉屋さんで「この歳になるとロースがいちばんうまいよね。カルビはどうも胃がもたれちゃって」みたいなことを言うひとが増えてきた。「中トロとか大トロもいいけど、やっぱりコハダがうまいんだよね」みたいな。

そう言われれば、そんなような気がする。そんなふうに言っておいたほうが、大人っぽい気がする。つられてぼくも魚料理を選び、追加でロースを注文し、青魚や白身魚のうまさを理解しようとがんばった。

でもね、ぼくは思うんだ。

ばかにされてもいいからこの際、はっきり言っちゃうけどさ。

「お前ら、ちょっと老けすぎじゃね？」

おれ43歳になったけど、いまだにカルビがいちばんうめえっすよ。大トロ最高ですよ。ラーメンはとんこつ、当然替え玉しちゃいますよ。カツカレー、いつでも大歓迎ですよ。

なんていうんだろう、高校時代みたいにどんぶりめし３杯、みたいな食べ方はしなくなりました。合い言葉のように「ライスは？」「大盛りで」も言わなくなりました。でもさー、ほんとのほんとは40代、みんなカルビがいちばんうまいと思ってるんじゃないですか？

年齢を重ねて、健康的な自分であろうとカロリーを控える、って考え方はよくわかるし大事なことなんだろうけど、「もう最近はめっきりロースで」みたいな発想は、余計に心を老いさせてるんじゃないでしょうか。

今後ぼくと焼肉を食べる機会がございましたら、遠慮なくカルビやホルモン、いっちゃってください。ぼくもガンガンにいく予定です。