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一冊の本を書くということ。

スピーチ原稿を書くのは好きなほうなので、本を書くのもそんなものだろうと思い込んでいた。ひとつの章を書くのはスピーチ一本を書くのと同じことだろうと、無邪気に思っていたわけだ。それはまるで、よくあるソフト開発者の勘違いみたいなものだった。つまり、十倍長いプログラムを書くには、百倍込み入った作業が必要になるということだ。この本を書き上げるため、わたしは休暇をとり、パソコンといっしょに夏の家に閉じこもらなければならなかった。

『ビル・ゲイツ 未来を語る』より

いきなりの引用で申し訳ありません。ビル・ゲイツが1995年に執筆した、いまのところ最初で最後の自著『ビル・ゲイツ 未来を語る』の「はじめに」に書かれた言葉です。1955年生まれの彼は当時40歳(写真、若っ!)。

いやー、このひと言でビル・ゲイツって人が大好きになっちゃった。

ほんと、1万文字の原稿を書くことと10万文字の本を一冊書くのでは、単純に10倍や20倍の苦労や時間が必要なだけではなく、100倍のむずかしさがあるんですよね。もちろん、すいすい書けちゃう方も多いんでしょうけど、少なくともぼくは100倍の労力をかけている自負があるし、そうでなければ書き上げられません。

そしてこの本、はじめて読んだのですが、いま読んでもおもしろい「未来」の話がいっぱいで、ぼくらはいまだに20年前の彼が見た「未来」のなかに生きているんだと実感しました。さらには、これまでなんとなく「退屈なナードにして、狡猾なスーツ野郎」として彼を認識してしまっていたバカボンな自分を反省したし、そういう認識を植えつけたであろうスティーブ・ジョブズおよびアップル教団のおそろしさも痛感できたなあ。

もう絶版になっている本でもあるし、今日から何回かに分けて、この『ビル・ゲイツ 未来を語る』で気になったフレーズを紹介していきたいと思います。