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働くことと、貯金すること。

日本人の貯金好きは、否定的な文脈のなかで語られることが多い。

なんの目的もなく、ぼんやりとした「いざというとき」のため、日本人は貯金をする。そして「いざというとき」は訪れぬまま、その財産は子どもたちに相続される。90代の親が残した財産を、70代の子どもが相続する。70代の子どもはそれを消費に回さず、やはり「いざというとき」のために貯蓄し、やがて90代を迎え、70代の子どもたちに引き渡す。

何度も聞かされたし、ぼく自身何度も口にしてきた貯金にまつわる「いざってなんだよ問題」である。

けれど、こと仕事に関していうと、ぼくも「いざというとき」のため、貯金に勤しんでいる感覚がある。

先週末から NewsPicks で、糸井重里さんの「イノベーターズ・ライフ」という連載がはじまった。幼少時代から現在までを語る、日経新聞「私の履歴書」のようなコーナーだ。ぼくは構成役として、インタビューと執筆を担当させていただいた。

きっと日本中でたくさんのライターさんが「それ、おれがやりたかったよ!」と思っているのではないかと想像する。ぼくだって、ほかの方がこの企画を担当されていたら、読者としてたのしみつつも「おれにやらせろ」を感じていたに違いないと想像する。今回たまたま、いろんな偶然やめぐり合わせが重なって、ありがたいことにその役がぼくにまわってきた。

ただ、こうした「おれにやらせろ」の思いがかなう場所に立つため、ぼくはせっせと日々の仕事に取り組んでいるのだし、日々を生きているのだと思う。そしてその「いざというとき」にむけて汗水たらす姿は、貯金と似ていなくもない。


有料会員しか読めない記事なので勧誘的なおすすめはしたくありませんが、全23回、一冊の本に臨むくらいの真摯さで、糸井さんはたくさんのことを語ってくださいました(糸井さん、どうもありがとうございました)。

たくさんの方々に読んでほしい連載です。