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好きと言えないわたしのこころ

「選手たちが相手をリスペクトしすぎた」

サッカーの試合終了後、しばしば敗軍の監督が口にするセリフだ。相手が強豪だということはわかっている。でも、強豪であるという先入観でもって、やる前から気持ちで負けていた。相手チームへのリスペクトは重要だが、それが行きすぎては試合にならない。たぶん、そんなニュアンスで語られる言葉だと思う。

じつはぼくも、人びとをリスペクトしすぎるきらいがある。そして自分を卑下しすぎるきらいがある。

もう20年以上も前。バイト先近くの福岡国際センターで、エリック・クラプトンの来日公演がおこなわれることを知った。クラプトンといえば、中学生のころからずっと愛聴してきた、自分にとっていちばんのギター・ヒーローだ。当然行きたい。けれども当時、ぼくはこんなふうに躊躇した。

「おれごときの若造が『ファンです』なんて言っちゃダメだよな」

クラプトンのコンサート会場ともなれば、ぼくなんかとは比べものにならないくらいの愛好家たちが集い、ぼくなんかと比べものにならないくらいの耳でもって、「おれのE.C.」を楽しむのだろう。ぼくなんかが行っても、場違いなクソガキにすぎないんだろう。

そう、ぼくはなにかを「好き」と宣言することに、ものすごい躊躇を感じるのだ。この程度の気持ちで「好き」なんて言葉を使っちゃいけない、と。

結局そのときは、コンサートの警備員として会場に潜り込んだ。そして「ティアーズ・イン・ヘブン」と「ワンダフル・トゥナイト」でいちばん盛り上がるお客さんたち、「ホワイト・ルーム」でお通夜のように盛り下がるお客さんたちを見て、知ったのだ。

「あ。コンサートって、好きじゃなくても来ていいんだ」と。

「あるいはみんな、これくらいで『好き』と言ってるんだ」と。

■ エリック・クラプトン、5夜限定の武道館公演が来春に決定(BARKS)

えー。

なんでも御大が来年の4月にまた来日されるらしく、さすがに今回がラストかもしれぬ、と3公演分のチケットを確保したのでした。